実践!STEAM

2019.08.30

【取材レポート】ウィーシュタインズ主催 奥多摩ツリーハウスプロジェクト

先日奥多摩で行われた子どものためのSTEAMキャンプ「奥多摩ツリーハウスプロジェクト」を取材してきました。

このキャンプを主催したウィーシュタインズ株式会社は、「あそびこそ、まなび」という考えをもとに建築にSTEAMを取り入れた様々なプログラムを提供していますが、今回のような屋外での大規模なイベントは初だそう。

キャンプは1泊2日ですが、そのうちの2日目ににおじゃましてきました。まずは、JR中央線沢井駅から歩いてすぐの、「福島家住宅」へ向かいます。ここは立派な茅葺き屋根の古民家で普段は一般公開されていませんが、このキャンプではここが宿泊場所です。

参加していたのは、小学3年生から中学1年生までの子ども10人。スタッフとしては大学生ボランティアが6人と、大工の棟梁や木工職人、地元の林業関係者など様々な分野のプロが参加しました。

朝8時半、いよいよ出発です。

ツリーハウス作りの場所は、福島家住宅から徒歩15分ほど、多摩川を渡った先にある林です。ここは日本酒「澤乃井」で知られる小澤酒造が所有する土地。使う木材もここにもともとある木で、1日目には25メートルもある木を目の前で伐採してみせたそうです。

到着すると、まず入り口に竹のゲートが。これは、大人が用意した木の柱をベースに子どもたちが装飾をつけたものだそうで、下を石で囲ったりと手がこんでいます。

中に入ると、すでに立派なツリーハウスが建っています。これらも、基盤だけは大人が作り、あとは子どもたちが工夫して作り上げていったそうです。

もうこれで完成では、と思ってしまいますが、これがさらに1日でどう進化するのでしょうか。

到着した子どもたちは、まずはツリーハウスに登って全体を見回します。スタッフの一人が「今日一日で何をやれば気持ちよく終われる?」と聞くと、「ブランコ!」「屋根!」などたくさんの声が。それぞれ何をやりたいか決まったら、いよいよ作業開始です。

ツリーハウスの脇では、ブランコを製作中。形を考え作り上げるのはあくまで子どもたち。それを実現するために、大人たちはロープの結び方を教えたり木材をチェーンソーで切ったりして、サポート役に徹します。しばらくして、ロープだけでできたブランコと、丸太を1本のロープでつり上げたブランコができました。

しかし、座ってみると痛かったり、バランスを取るのが至難の業だったり。これでどうやったら遊べるか子どもも大人も頭をひねり、盛り上がります。

しばらくすると別の場所で作っていた座面用の木材が到着。これを使うと、見慣れた形のブランコになりました。

乗り心地も良さそうです。

別の場所では、やぐらを製作中。

三角屋根はすでに完成していましたが、今日はさらに竹で足場をつけて上に登れるようにするようです。固定に使うのはロープだけ。縛り方を教わりながら、子どもたちが取り付けます。かなり力が要りそうですが、できるだけ大人は見守ります。

同じテントの反対側では、縛り付けてある木材の表面を磨いています。大人に混じって一人の男の子が作業中です。竹の切れ端一本で器用に磨いていくその様子は大人も舌を巻くほど。まるで職人のように、黙々と木の皮を削っていきます。

しばらくすると、竹の足場が完成しました。先ほど竹を縛り付けていた女の子が一番乗りに登ります。「眺めがいい」と満足そう。

こちらの子は、木の枝でできた弓矢に夢中。普段の生活ではなかなか作れませんが、ここでは人に向けたりしなければ自由です。丸太にマジックペンで点数を描き、立派な的もできました。

その後も、より強力な弓を求めて竹や太い枝を試します。他の子も加わって矢筒や剣を作り、充実の武器の品揃えを見せていました。

ツリーハウスでは、屋根作りが進行中。お酒を絞るのに使うシートと竹を組み合わせて、三角屋根ができました。

だんだん、大人が本気になり始めました。

本格的な金具付きのロープを木に取り付けています。何ができるのか子どもたちが興味津々で見ていると・・・

ジップラインの出来上がり!

しかし最初は低すぎてお尻から地面に激突。子どもたちは悲鳴をあげながらも楽しそうに遊んでいましたが、大人、これでは満足いかない様子。

昼休憩の時間も、食べ終わった子どもたちは「作業してきていい?」とうずうず。やっと許可が下りると、それぞれの場所に散らばって作業や遊びを始めました。

だんだん子どもたちが遊びモードになっていく中、大人の方が真剣になっていきます。

先ほどのジップラインは、どんどん改良を重ねていきます。ロープを高くし、縛り方を変え、出発地点に踏み台を取り付け、下の方にはクッション代わりにシートを巻きつけ、本格的なジップラインが完成しました。遊ぶ子どもも作った大人も大満足の出来栄えです。

一方、午前中から磨かれていたやぐらの柱も、どんどん白くツルツルになっていきます。私も試しにやらせてもらうと、磨けば磨くほど綺麗になるのがくせになり、気づけば30分ほど無心で作業をしていました。

そして2時、作業終了の時間です。まずは片付け。道具を回収したり、自然に帰らないプラスチックなどを集めたりします。途中、不法投棄なのかビニール袋が大量に出てきました。みんな、どんどん出てくるそのゴミをひたすら拾い集めます。

それから、保護者にお披露目の時間。子どもたち全員で、一つ一つ見せて回ります。自分たちで楽しく遊べる場所を作れたことに、みんな少し自慢げな様子でした。

ツリーハウスの横に、不思議な装置ができていました。

これは、水をろ過する装置だそう。日本酒を絞るシートの性質をうまく利用し、きれいな水が下に取り付けられた竹のコップにたまる仕組みです。一人の子が考案したこの装置を、大学生や他の子も協力して作り上げました。

最後に、子ども全員が2日間の感想を発表しました。印象に残ったことは自分で作った物から、虫、1日目のバーベキューや花火など様々。でも、自分の手で何かを作りいろんな体験をしたということに、それぞれが喜びを感じている様子が伝わりました。

このキャンプで作った物は、解体せずにそのまま置かれます。年齢を問わず多くの参加者から「また別の季節にやりたい」、「次きたらまずあそこを補修して・・・」と次回を心待ちにする声が聞こえました。どうやらまた秋と冬にも開催されそうです。

取材後記

今回のキャンプで印象的だったのは、子どもを信頼して任せるスタッフの姿です。何を作るかは子どもたちに一から考えさせ、のこぎりや釘などともすれば怪我にもつながる道具でも、やり方を教えたらあとは横で見守るだけ。子どもたちは、自分で体験してこそ安全なやり方を学び、自分で作ったという自信が得られるのだと実感しました。

これから、たくさんの夢や理想を詰め込んだ林がどう進化していくのか、楽しみになる素敵なキャンプでした。

(文:佐藤琴音)