生成AIの活用は、教育現場において徐々に注目を集めていますが、どのように取り入れるべきか模索している学校も多いのが現状です。今回は、生成AIを試験的に授業に取り入れている学校の事例や、世界各地での取り組みを通じて、その可能性や実際の活用方法をご紹介します!
– 実践女子学園高等学校
実践女子学園高等学校では、未来の宇宙生活をテーマにしたミッション型協働探究学習「Space Life Explorer」で生成AIを活用しています。このプログラムでは、生徒たちが地球および宇宙での生活課題に取り組む中で、プロトタイプ作成の前段階で生成AIを使用。アイデアを膨らませたり、パッケージデザインやラベルの考案に生成AIを用いたりすることで、効率的かつ創造的な探究につなげています。生徒たちは、生成AIを試行的に取り入れることで、自分たちの発想を視覚化するプロセスを学び、制作過程でのアイデア検証に役立てています。
–バルダー高校(スウェーデン)
スウェーデンのシュレフテオにあるバルダー高校(Baldergymnasiet)では、子どもの権利をテーマにした授業で実験的に生成AIを活用しました。この授業では、AIを使って子どもの権利を表現し、学校内で展示を行うという取り組みを実施。授業内では、生徒たちが子どもの権利条約の各条項について深く考察し、そのメモを基に生成AIで画像を作成。プロンプト作成の段階では、教師が生成AIを活用するにあたりガイドラインを提供し、生徒たちがAIを体験する機会を設けています。
教育現場では、生成AIの活用方法について試行錯誤が続いていますが、一部の国では政府がその導入を後押ししています。たとえば、シンガポール政府は「国家AI戦略(NAIS2.0)」を発表し、先端製造、金融サービス、ヘルスケア、教育、公共サービスといった分野でのAI活用拡大を目指す方針を示しました。この取り組みにより、教育現場への生成AIの導入が促進されています。
一方、アメリカでは非営利団体カーンアカデミーがマイクロソフトと提携し、生成AIを活用した教育ツール「Khanmigo for Teachers」を開発しました。このツールは英語圏49か国で無料提供されており、生徒への個別指導や教師の授業計画支援に利用されています。これらの事例は、教育現場における生成AIの可能性を探るための一助となっています。
生成AIの活用が進み、その著作権問題は教育現場において重要なテーマとなりつつあります。そんな中で提供が始まった「10代のデジタルエチケット」は、AI生成コンテンツも学ぶ新しい著作権とデジタルリテラシーに関わる中高生向けのPBL型教育プログラム。日本語および英語で無料提供されており、日本国内だけでなく海外でも実践が始まっています。このプログラムでは、生徒たちがAIコンテンツの事例について触れ、「創作の独自性」や「クリエイターの権利」の重要性を学びます。AIがもたらす新たな創作の可能性と、それに伴う課題について理解する機会を提供し、AI時代に対応した著作権教育の普及を目指しています。
プログラム詳細はこちら:https://digital-etiquette-japan.go.jp/
生成AIは、教育現場での新たな可能性を示しているツールです。しかし、その活用方法については、まだ多くの模索が続いています。日本やスウェーデンの事例が示すように、創造性を引き出し、生徒の主体的な学びを促進する一方で、生成AIの導入はそのメリットと課題を評価しながら進める必要がありそうです。生成AIをどのように教育現場に取り入れるかを考えることは、未来の学びを形作る重要なステップとるかもしれません。
参考
Khanmigo for Teachers: Your free AI-powered teaching tool
Singapore National AI Strategy 2.0 (NAIS2.0):https://file.go.gov.sg/nais2023.pdf