世界のSTEAM教育の歴史

日本では、近年さまざまな場所で聞かれるようになってきたSTEAM教育ですが、海外ではもっと早い段階で取り入れられています。ここでは、STEAM先進国である国のSTEAM教育の歴史について見てみましょう。

アメリカ

2009年、オバマ大統領は、米国科学アカデミーの演説で、STEM教育の重要性を強調しました。(The White House,2016)さらに、教育改革の中でも、教育の評価にあたっては「問題解決、批判的思考、企業家精神、創造性など の 21 世紀スキルを測定するものでなければならない。」としており、21世紀型スキルの重要性を理解していました。続いて、2013年には、STEM教育5カ年計画というものが発表されました。これは、2012年に実施されたOECD生徒の学習到達度調査(PISA)で、アメリカの数学・科学リテラシーの低さが問題になったことに対応したと考えられます。また、2020年までを目安として、初等・中等教育の優れたSTEM分野の教師を10万人養成、STEM分野の大学卒業生を100万人増加させるなどの目標を立てました。そして、2015年、STEM教育法というものができます。ここでは、STEM教育の定義を拡張し、コンピュータサイエンスを含めたり、問題を社会と結び付けたりして、STEM教育としての捉え方から人文系への広がりを見せています。そして、2017年にSTEM教育法は、STEM教育にアートやデザインを統合するSTEAM教育法になりました。さらに、STEAM教育の範囲を広げることで、もっとSTEAMの可能性を広げていこうという意図が感じられます。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、EU全体でSTEAM教育に取り組む姿勢が見受けられます。例えば、2015年には、EU STEM Coalitionというものが発足され、産官学連携でEU加盟国のSTEM戦略構築の支援を行うプラットフォームが構築されました。また、中でもイギリスは、2004年というとても早い時期に科学とイノベーションの関する投資フレームワークを作成しており、STEMでは先進国と言えそうです。

オーストラリア

オーストラリアでは、2015年、National STEM School Education Strategy 2016–2026という政策をローンチし、基礎スキル、数学、科学、デジタルリテラシーの開発、問題解決、批判的分析、創造的思考スキルの促進を目標としています。また、最近はジェンダーの問題に力を入れています。最近では、オーストラリア政府は、STEM分野で活躍する女性のエンパワーメント活動(the Australian Government’s Advancing Women in STEM strategy)と10年間かけてジェンダーの平等を実現する活動(the Women in STEM Decadal Plan)を発表しました。

このように、STEAM先進国では、2010年~2015年までの間に国家戦略としてのSTEM法が確立されていました。また、最近ではアメリカのように、STEM教育から、アートをプラスした、STEAM教育へと定義を拡張する動きも見受けられます。

参照サイト

・STEM education US Department of Education

https://www.ed.gov/sites/default/files/stem-overview.pdf

・松尾知明著『アメリカの現代教育改革』(東信堂,2010,p197)

・EU STEM Coalition

https://www.stemcoalition.eu/

・Science & Innovation investment framework 2004-2014

http://news.bbc.co.uk/nol/shared/bsp/hi/pdfs/science_innovation_120704.pdf

・Australian government

https://www.industry.gov.au/data-and-publications/advancing-women-in-stem-strategy/2020-action-plan

・Education council

http://www.educationcouncil.edu.au/site/DefaultSite/filesystem/documents/National%20STEM%20School%20Education%20Strategy.pdf