海外での探究学習について

海外諸国の探究学習事情はどのようになっているのでしょうか?

この記事では、国際的学力調査PISAでも上位にランクインしている、シンガポール、中国、フィンランドについて解説します。

学力調査PISAとは何か?探究学習やSTEAM教育とはどんな関係があるの?

PISAはProgramme for International Student Assessmentの略で、生徒の学習到達度についての調査です。PISAは、2000年から始まり、3年ごとに、主要先進国・地域の15歳を対象に「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野について、国際的な学力比較調査を実施しています。

PISAでは、学校で習得する基本的な知識に加え、知識や技能を活用して、日常の課題を解決する能力も問われます。一般的なテストに比べ、思考力や応用力が問われる自由記述問題が多く出題されることが特徴です。思考力・問題解決能力などを自ら考え自分の知識を応用する点に置いて、探究学習やSTEAM教育と共通するといえるでしょう。

PISAトップの国々:探究学習の位置付けとは?

シンガポール

PISAのランキングで常に上位を誇るシンガポールでは、多くの学校で「Applied Learning Program(ALP)」と呼ばれている、複数教科の知識を結び付け、実践的な場で応用できる機会が設けられています。ALPは、2023年までに全ての小学校に拡大される予定です。

さらに、教育省は、今後求められる教育のアウトカムの達成に向け下記のようなフレームワークを作成しました。例えば、下図のように、「自身の管理(Self-Management)、社会への関心(Social Awareness)、関係性の管理(Relationship Management)、責任ある意思決定(Responsible Decision-Making)、自己認識(Self-Awareness)」といった、評価基準の中には、21世紀型スキルに対応するものも含まれています。

(出典: Ministry of Education Singapore 21st Century Competencies 21 世紀型コンピテンシーと生徒のアウトカムに関するフレームワーク)

中国

中国では、2001年に発令された「基礎教育課程改革」で、知識吸収型の授業から生徒主体の授業への転換が促されました。それに伴い、「総合実践活動」の時間が導入されています。とりわけ、上海では1990年代から、実験的に学習者主体の授業への転換がされており、ますます探究型の学習活動が増えています。そんな動きもあってか、2018年度に行われたPISAの中国の順位は、なんと1位。中国では、北京市、上海市、江蘇省、浙江省の豊かな4地域を対象として行われたので、都市部での探究学習への取り組みが成果に反映されたのかもしれません。

フィンランド

フィンランドは、PISAにおいて、ヨーロッパ諸国の中でも好成績を収めています。実は、フィンランドの人口は、約550万人とそれほど多くありません。そのため、国の持続的な発展のためには、質の高い人材を育てることが大事と、教育に対するサポートがとても手厚いのです。フィンランドの学校は、各教科の知識に加え、教科を結びつけた広い視野で物事を捉えて知識を活用していく力の育成を目指し、学習内容を実際の社会活動を結びつけ、社会に対する理解を深めることを促進するカリュキュラムとなっています。(STEAM JAPANのフィンランドの教育に関する過去の記事はこちら

PISAの求めている学力は、単に教科ごとの知識だけでなく、実社会に応用する力です。そして、その力を身につけるのに有効なのが、探究学習やSTEAM教育です。教育に力を入れている国々は、すでに探究学習の時間やSTEAM教育を学校教育の場で取り入れ、子どもたちの学びを深めようとしています。

なお、2018年のPISAの日本の結果は、79ヶ国中で「読解力」は15位、「数学的リテラシー」は6位・「科学的リテラシー」は5位でした。中でも、「読解力」が弱く、順位が8位から15位と顕著に下がっていることが判明しました。この結果を受けて、文科省・国立教育政策研究所は、今の子どもたちには自分の考えを他者に伝える能力(=表現力)に課題があると述べています。

探究学習・STEAM教育によって、子どもたちに多角的な力を身につけられるだけでなく、自分のアイデアを表現する力も育むことができます。今後、探究学習とSTEAM教育はより一層、注目されていくことでしょう。

<参考サイト>

Ministry of Education Singapore  21st Century Competencies

MRI 学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究業務報告書

THE STRAITS TIMES Parliament: All primary schools to have applied, hands-on learning programmes by 2023

・ 「基礎教育課程改革綱要(試行)」教育部 (2001)

中国の科学技術の今を伝える Science Portal China 中国の基礎教育課程改革の現状と課題-PISA調査結果を踏まえながら-

カテゴリ:世界のSTEAM教育
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