子どもたちが主役の学びを導入。今だからこそ知りたいPBL教育とは?

PBL教育の事例:デンマーク

P B L教育は、世界各国で実践されています。中でも、ユネスコチェア(世界各地の高等教育機関ネットワーク)に認定されているデンマークのオールボー大学は、P B L教育の実践において「世界のお手本」とされています。

オールボー大学は、問題解決型と課題解決型の学習(Problem and Project Based Learning)を融合させたP B L教育を実践しており、このモデルは時に「POL」と略されます。オールボー大学のPOLでは、学生に実用的かつ科学的根拠のある課題を提示します。学生はグループでプロジェクト活動を行うわけですが、このワークには課題を解決するための知識やスキルが必要になります。そこで、学生はグループワークに必要なスキルや知識を得るために、課題解決に関連した科目を自分で選んで履修します。講義や演習、ワークショップなど通じて、理論的な知識や方法論を学習するのです。

また、授業では課題解決に必要なステークホルダー(専門家や企業、教員など)と、コミュニケーションをとることも求められます。一連の活動を通じて、学生は深く幅広い知識を得るだけでなく、将来仕事に就いた時に自分が身につけたスキルを応用できるようになるそうです。

PBL教育の事例:日本

日本においては、三重大学がチュートリアル型のPBL授業を実施しています。三重大学のプログラムでは、まず4~8人のグループを作って学習に取り組み、問題が示されてから各グループで問題解決のために詳細な計画を練ります。また、授業外でも個々で学習を進め、必要な文献の収集やリサーチを行います。

授業では、教員が身近な問題、あるいは卒業後に仕事で直面するであろう課題を紹介し、学生たちが主体となって問題の本質を考え、問題解決のために何をするべきかを話し合います。教員はファシリテーターとしてサポートします。

自己学習した内容をグループ内で発表し、問題解決のアイデアを出し合います。必要があれば、さらにリサーチを重ねて、成果を報告します。もちろん、内容によっては課題の解決案を一から練り直すこともあります。最後に、グループとしての課題の成果発表を行います。それだけでなく、効果的なプレゼン方法について学生たち自身で考えるように促します。PBL教育を通じて、学生が専門分野で確かな基礎学力と応用力を持ち、社会人となっても自分で問題点を解決できるような人材の育成を目指しているのです。

PBL教育とSTEAM教育

STEAM教育は、科学・技術・工学・芸術・数学を総合的に学べる教育方法で、国際化・高度技術化する現代社会に適応する子どもたちを育てるために世界で導入されています。

自分で問題を発見し解決する能力を育てる点において、STEAM教育とPBL教育は非常に密接な関係にあります。例えば、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴには、生徒主体のカリキュラムで注目を集める「High Tech High」という学校があります。「High Tech High」では、食料生産や水再生問題に着目し、子どもたちが自ら課題を設定し、実際にアクションを起こすというプロジェクトを行っています。

社会に出た時に最も必要とされるのは、今まで培った知識をさまざまな場面で応用し、周りの人とコミュニケーションをとりながら、課題に取り込む力です。P B L学習は問題解決のために行動できる人材を育成するために有用な教育方法といえるでしょう。

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【アメリカ】都市農業の課題に高校生が挑む High Tech High

参考サイト

溝上慎一・成田秀夫編「アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習」東信堂、2016年。
田中智志・橋本美保「プロジェクト活動:知と生を結ぶ学び」 東京大学出版会、2012年。

http://library.criced.tsukuba.ac.jp/educate/pdf/erasmus/1_004.pdf

THE AALBORG MODEL FOR PROBLEM BASED LEARNING

三重大学高等教育創造開発センター

公益財団法人 国際文化フォーラム

経済産業省「AIQuest」

文部科学省「平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等」

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