【ドイツ】フランクフルトに赴任中の現役小学校教員インタビュー!〜先生の海外派遣事情について〜

2023年からドイツのフランクフルトにある日本人学校(在外教育施設)で小学校教員を務める宮澤大陸先生にオンラインインタビューを行いました!今回は、日本人学校でのご経験や、海外での生活経験をされている中でのご自身の考えの変化についてなどお話を伺いしました。

STEAM JAPAN 編集部: 宮澤先生、本日はお時間をいただきありがとうございます!まず、宮澤先生について教えていただけますか?

宮澤教諭: はい、これまで島や国立の小学校を経験し、その後地元の学校でICTを活用した教育を実践してきました。子供たちと一緒にワクワクを仕掛けながら学級を作り上げることを大切にしています。2023年からはドイツの日本人学校に派遣され、勤務しています。ドイツに来て2年目を迎え、やっと街なかの標識の意味もほぼ理解したところです。(笑)

日本の学校で勤めていたときの授業写真

STEAM JAPAN 編集部: 海外赴任はチャレンジングな印象があります。赴任を希望されたきっかけはありますか?

宮澤教諭: 直接のきっかけは、同僚や友人の中に日本人学校経験者がいて、話を聞くうちに面白そうだなと思ったことが大きいですね。もともと私は、新しい環境や見ていない場所を知りたいという気持ちが強かったです。環境を変えることで自分の世界を広げたいと思っていたので、海外に行くという選択肢も自然に考えるようになりましたね。今回の海外赴任も、そんな気持ちから始まりました。

何とかなるだろう、楽しそうだな、という気持ちで挑戦してみました。そういう行き当たりばったりな性格なので。(笑)

STEAM JAPAN 編集部: 日本の先生が海外で挑戦するには、どのような方法があるんでしょうか?

宮澤教諭: 在外教育施設(日本人学校)に勤めるには、文部科学省派遣(プレ・シニア世代も含む)や財団(公財 海外子女教育振興財団)による派遣、現地採用などがあります。私は文科省派遣なので、流れとしては、まず自分の所属する自治体で面接試験を受け、合格すると次は都道府県レベルでの試験を受けます。それに合格すると、最後に文部科学省の面接を受けます。面接では、これまでの実績なども評価されます。文部科学省の面接に合格すると、正式に採用される流れです。

STEAM JAPAN 編集部:ドイツへの派遣を希望されていたのですか?

宮澤教諭: いいえ。実は、派遣される国については希望を出すことはできず、どこに配属されるかは分からないんです。このことを仲良くなった現地の駐在員さんたちに話したら、本当に驚かれました。私のような性格ならまだしも、行く場所を選べないのは、教員の海外赴任を踏みとどまらせる原因の一つになっているかもしれませんね。(笑)

世界にある100校近くの日本人学校のどこになるか分かりませんでしたが、私自身は、旅行ではなかなか行けないような南米や中東などに行ってみたいという思いがありました。でも、ちょうど子供が生まれたばかりだったということもあり、結果的には、治安の面でもドイツは良いので、家族にとっても安心でした。

長期休みには近隣国に出掛けられるときも

STEAM JAPAN 編集部: 結果的に希望とは違う国となりましたが、1年間生活や仕事をしてみてどうですか?

宮澤教諭:はい、希望とは異なりましたが、どの国に赴任しても特別な経験になると思います。日本では味わえないことが日々あり、自分の視野がいかに狭かったかを実感することが多いです。元々、私はあまり海外旅行をするタイプではなく、今回の赴任が初めてのヨーロッパでしたが、こちらに来て価値観が大きく変わりました。例えば、日本の学校では当たり前の上履きや昇降口が無かったり、公共機関が簡単にストップしたりと、毎日驚くことが多いですし、現地の人々と交わり、その考え方や心の広さ、日本には無い良さを感じ、世界が広がったなと感じています。

ただ、金銭面では、こちらはかなり大変ですね。円安加速で「ついに1€=170円だよ」とか、給与明細とにらめっこしながら「安い旅行先を教えて」とかが、職員室の専らの話題です。それらも含めて、得難い経験と言ってしまえばそれまでですが(笑)。

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STEAM JAPAN 編集部: ドイツは環境先進国としても知られていますね。実際に生活や仕事を始めて感じた日本との違いなどはありますか?

宮澤教諭: 日本ではSDGsという言葉が、暮らしや教育の中に浸透してきていますよね。実践も増えていると思います。ドイツは世界の中でも環境先進国として知られていますが、SDGsの言葉やロゴを街中で見かけることはほとんどありません。ですが、環境に優しく暮らせるような仕掛けが溢れており、自然と環境に配慮することが当たり前というマインドセットも根付いていると感じます。

また、日本では道徳の授業がありますが、ドイツにはありません。ドイツでは子どもたちの教育は親が主体となって行っているんです。思いやりや環境への配慮などはすべて親が家庭でしっかりと教えます。もちろん学校でも教える部分はありますが。親が環境に配慮した行動を取る姿を、子どもたちは幼い頃から見て育ち、それが自然に身についているように感じています。

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暮らしの中で見つけた環境に配慮した行動が取れるような仕掛け。
自分の知らない世界が広がり、新しい発見がたくさんありました。(宮澤教諭)

STEAM JAPAN 編集部: 今回のドイツでのご経験をどのように活かしていきたいと思いますか?

宮澤教諭: ドイツでの経験を通じて、様々な環境の変化や多くの出会いがありました。今もいろいろな方と出会う中で、教員として目の前の子どもたちに向き合うことの大切さを改めて感じています。一方で、最近では自分が経験したことや学んだことを発信する立場にも興味を持つようになりました。教員としての立場にとどまらず、他の役割や職務にも挑戦してみたいと思っています。これまで学校現場にて教員一筋でやってきましたが、今後は教員としてだけでなく、さまざまな角度から教育に関わり、世界を見ていきたいと考えています。

STEAM JAPAN 編集部: 最後に、海外で挑戦してみたいと考えている先生方に何かメッセージをお願いします!

宮澤教諭: 海外に来ても、日本国内にいても、子どもたちとの向き合い方は変わりません!日々の中で自分がワクワクすることを探し、一緒に作り上げていく楽しさを見つけることが大事だと思います。授業を教えるだけでなく、毎日を子供たちと一緒に作り上げていくという楽しさは、どこにいても変わらないと思います。あとは、新しい環境を楽しみながら、自分の世界を広げていくことが大切だと思います。私自身はこれからも、人間としての幅をもっと広げられるような毎日を過ごしていきたいと思います。

オンラインインタビューの様子

カテゴリ:世界のSTEAM教育
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