タイ・バンコクにある「ゆめてらす」は、バンコクという国際的な環境の中で、日本の教育理念を保ちながらも、次世代に必要なスキルを備えた子どもたちを育てる場として、その役割を果たしています。今回は次世代STEAM教材SPARK!の導入もしている、「ゆめてらす」の菅原園長に園での取り組みについて伺いました!
菅原園長:ゆめてらすは、単に学力を重視するのではなく、好奇心と自己肯定感を育むことに重点を置いています。日本式の教育、伝統的な価値観を基盤にしつつ、国際的な環境に適応した教育方針をとっており、子どもたちが小学校に入学する前に、好奇心や自己肯定感をしっかりと身に着けてほしいと考えています。
他のインターナショナルスクールや現地の幼稚園とは異なり、ゆめてらすでは体験型の学習を多く取り入れているのが特徴です。各学年に1クラスという小規模な体制をとり、子どもたち一人ひとりに目が行き届く環境を提供しています。また、STEAM教育の一環として、フィールドトリップやアクティビティなど、様々なプログラムを通して自己発見を促しています。SPARK!のプログラムもその一環で、子どもたちの科学的な好奇心を育む実験や創造的な活動を行うようにしています。
菅原園長:ゆめてらすは2019年に開園しました。他の園と比べるとまだ歴史が浅く、さらに開園してすぐに世界的なコロナ禍を迎え、2020年から2021年にかけては多くの日本人が一時帰国するなど、園児の人数も少ない状況でのスタートでした。それでも、開園当初から「どうすれば子どもたちの好奇心が育まれるか」「どのようにして思考力を鍛えられるか」を考え、子どもたちが楽しんで学べるようなプログラムを模索してきました。お勉強として教えるのではなく、子どもたちがワクワクするアイデアを共に育みたいと考えて、STEAM教育を取り入れることにしました。
このSTEAM教育に関心を持つきっかけとなったのは、ロボット教室の先生と知り合ったことでした。彼からロボット工学やSTEAM教育の話を聞く中で、多様な分野を織り交ぜた教育に魅力を感じましたのと同時に、実際、幼稚園の先生や小学校の先生たちは、これまで自然と子どもたちに実験や多様なプログラムを通して知識を伝えてきたものが、今では「STEAM教育」として体系化されたものだと気づきました。特にテクノロジー分野が追加されたことが新しい点であり、それを教育に取り入れることで、子どもたちが好奇心を持って「不思議だね」「どうしてだろう」と考える姿勢がより育まれると考えています。
子どもたちが自ら探究心を持って学び、不思議を感じるような場を提供できることが、STEAM教育の素晴らしさだと実感しています。
菅原園長:SPARK!を導入した初月は、子どもたちが自分でもできそうな実験をいくつか選びました。例えば、重曹を使った「シュワシュワアート」や、クレヨンとノリで「隠れた絵を見つけよう」というアクティビティです。この2つは、比較的やりやすく、子どもたちが楽しみながら取り組めるものだと感じました。
実際に、「隠れた絵を見つけよう」では、子どもたちは、自分でできたという達成感に大興奮でした。難しい内容ではありませんが、年長さんでも少し文字や絵を描くのが難しい子もいるので、こちらが描いた絵を使って試し、水につけて絵が本当に浮かび上がる様子に、みんな大盛り上がりでした。
また、重曹を使った「シュワシュワアート」では、重曹がブクブクと泡立ち、色が変わる様子をみんなで見つめ、驚きと楽しさを味わっていました。子どもたちは想像もしていなかった反応に、「うわー!」と声をあげながら、色を混ぜて集中して楽しんでいました。
菅原園長:タイのバンコクでは、日本人学校の小学校1年生からノート型パソコンが1人1台支給されています。連絡もすべてタブレットやパソコンで行われるようになっているので、かなり早いタイミングでこういったデジタル化が進んでいるような印象を受けます。インターナショナルスクールでは、さらにパソコンの活用が進んでいると思います。子どもの頃からテクノロジーに触れる機会が多く、自然とデジタルツールに慣れ親しむ環境が整っているのです。
例えば、「今日はクラゲを作ろう」となった時には、子どもたちと一緒にYahoo!キッズの検索エンジンでクラゲの生態を調べ、本物のクラゲの姿や動きについて学んでいます。検索して自分で調べることで、子どもたちは「自分でできた」という満足感を得ます。その経験が次の制作活動への自信にもつながり、「もっと調べてみたい」という意欲を引き出すきっかけになるのです。テクノロジーが発達しているからこそ、こうした保育の展開が可能であり、STEAM教育にはその魅力が詰まっていると感じます。テクノロジーや実験、遊び、そしてサイエンスです。これらの活動を通じて、子どもたちが自ら考え、探究し、発見する楽しさを日々感じ取っています。
菅原園長:最近、保護者の方々から「STEAM教育が話題になっていますね」や「日本でも一部の幼稚園で導入されていると聞きます」といった声をよくいただきます。中には、帰国の際にSTEAM教育を実践している幼稚園を見学したいという方もいらっしゃいます。多くの保護者が、子どもたちに多くの体験をさせ、アクティビティを通じて成長してほしいと願っているのを感じます。
特に、テクノロジー分野への関心が高い保護者が増えています。電子決済や情報検索が日常化している現代では、テクノロジーを使いこなす力は欠かせません。こうした背景から、子どもたちが自然にテクノロジーに触れ、興味を持つ機会を提供することが重要だと考えています。
ゆめてらすでは、テクノロジーと上手に向き合いながら、子どもたちが豊かな思考力を育むことを目指しています。単に道徳的な教育を重視するだけでなく、テクノロジーを避けずに積極的に活用する力を育てることが大切だと考えています。
STEAM教育を通じて、子どもたちが好奇心を持ちながらテクノロジーと触れ合い、将来の学びや楽しさにつながるきっかけをこれからも作っていければと思います。