本物の研究現場が、子どもたちの”なぜ?”を育てる -「農研機構 食と農の科学館」が体験型施設へリニューアル-

「体験」と「没入感」をキーワードに、スマート農業やAI、バイオテクノロジーの最前線を体感で学べる場と進化しています 。
農業の現場はいま、大きく変わり始めています。担い手不足や高齢化といった課題が深刻化する一方で、AIやロボット、バイオテクノロジーなどの先端技術が農業の世界に次々と導入されています。
こうした背景の中、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)が運営する「農研機構 食と農の科学館」(つくば市)がリニューアルされました。

研究成果を一般の来館者だけでなく子どもたちに分かりやすく伝えるため、体験型展示や映像展示を中心とした施設へと生まれ変わりました。STEAM JAPAN編集部が新たな展示の一部を紹介します。

『農研機構 食と農の科学館』のリニューアルされた館内の様子

1.圧巻の没入感!3面大型シアターで研究の現場へ

今回のリニューアルでは、これまでのパネル中心の展示から、映像や体験を重視した展示へと大きく変化しました。

一番の目玉は最大40名が観覧できる「ミニシアター」の設置です。

このシアターには、「研究の面白さや農業の現状を、迫力ある映像で来場者に体感してほしい」という思いが込められています。
3面の大型スクリーンに映し出されるのは、臨場感あふれる研究現場の映像。トラクターが自動で動く様子や、バイオの研究世界に、自分自身が入り込んだような“没入感”を味わえます。視覚的に「農業ってかっこいい!」「こんな世界があるんだ!」という発見を届ける工夫が凝らされています。

臨場感のある3面大型スクリーン

2.「体験」がつなぐ。スマート農業とAIの最前線

リニューアルされたフロアは、大きく4つのエリアに分かれています。中でも注目したいのが、最新テクノロジーに直接触れながら学べる体験型のコーナーです。
こちらでは、単に知識を覚える場所ではなく、展示を通して「自分たちの未来の食をどう守るか」を考えるきっかけとなる空間です。展示パネルも専門用語を極力排し、思わず目を引くキャッチーな見出しやイラストへと工夫されています。

ぜひ実際に体験しながら、さまざまな角度から見てほしい展示です。それぞれが自分なりの気づきや「なぜ?」「なんだろう?」を見つけ、これからの学びへとつながっていくきっかけになればという思いが込められています。

人に付いてくる!?追従型搬送ロボット「メカロン」 :

100㎏程度の荷物を積み、センサーで人を認識して自動で後ろを付いてくる運搬サポートロボットが登場 。重労働だった農作業がテクノロジーによって劇的に変わる現実を実感できます 。

さらに会場では、こうしたロボットだけでなく、農作物の病気を診断するアプリや、過去の環境や将来予測される環境条件で作物を栽培し、自動で測定することが可能なロボティクス人工気象室など、農作業や研究を支えるさまざまな最新ツールも紹介されています。多様な技術を通して、農業の現場がどのように進化しているのかを、さまざまな視点から知ることができます。

人の後ろを自動追従する農業支援ロボット

AI×農業。害虫検知のスピードを体感 :

人間では1時間以上かかることもある害虫(イネウンカ)の判別も、AIを活用することで短時間で完了します。画像認識ゲームを通じて、計算機科学が食料問題の解決にどのように貢献しているのかを体験できます。
害虫の発生は農作物の収量に大きく影響するため、早期発見が非常に重要です。AIによる解析は農業現場を支える技術として期待されており、現在ではさまざまな場面で最先端技術の活用が進んでいます。

画像認識ゲームに挑戦!AIの解析で害虫の種類を判定するすごさを体感できます!

3.「探究の入り口」としての科学

―農業研究に興味をもつ“入り口に”ー

今回のリニューアルには、「未来の農業を知るきっかけをつくりたい」という思いが込められています。体験を通して興味関心を引き出し、学びへとつなげる“探究の入り口”となることが期待されています。

また、リニューアルの背景には、近年、農研機構内外での連携事業が活発化し、最新の研究成果をより多くの人に伝えたいという意図もありました。そのため展示は、専門性を保ちながらも、誰にでも分かりやすく、興味を引く構成へと大きく見直されています。

<<<担当者からのメッセージ>>>

【広報担当 高木英典氏】
農業はAIやバイオなどが融合する最先端分野であり、教科書で学ぶ内容とは大きく異なり、実際の現場ではさまざまな技術が活用されています。そのため今回の展示では、研究成果を紹介するだけでなく、「自分だったらどう解決するか」と考えるきっかけになることを大切にしました。さらに、映像や体験展示を通して、これまで以上に現実の農業や研究の面白さを感じてもらい、そこから一人ひとりの興味関心へとつながることを期待しています。

【広報担当 小林弘佳氏】
教科書やネットでは伝わりにくい研究現場の臨場感やスケール感を、ぜひ体感してほしいで す。農業や食は誰にとっても身近なテーマであるからこそ、この科学館が子どもたちや学生にとって「なぜ?」を持つきっかけとなり、探究の入り口となることを目指しています。
また、開館から約30年が経ち、農業を取り巻く技術も大きく進化してきました。こうした背景を踏まえ、今回のリニューアルでは農研機構の最新研究成果や技術を展示し、来館者が未来の農業を具体的にイメージできる場へと再構成しています。農業への関心を高める“学びの入り口となる施設”として、多くの人に開かれた場づくりを目指しています。

<<<施設情報>>>

施設名 :農研機構 食と農の科学館
開館時間 :平日 9:00〜16:00
対 象: どなたでも入館できます *展示は中学生以上向き
入館料 :無料
所在地: 茨城県つくば市観音台3-1-1
団体予約 :事前予約制
お問い合わせ先https://www.naro.go.jp/tarh/