「AIを使いこなす力」と学力の関係は今後どうなる?——EDIX東京2026 堀田龍也氏セミナーレポート

2026年5月、東京ビッグサイトで開催された「第17回 EDIX(教育総合展)東京」。約350社が出展し、30以上のセミナーが行われたこの場で、東京学芸大学 副学長/教職大学院 教授の堀田龍也氏のセミナーは生成AIと教育の関係について、理念論にとどまらず「では教室で何をするのか」という実践的な視点で話が展開された60分でした。本記事では、STEAM JAPAN編集部の視点からその内容をまとめます。

生成AIとの距離感を学ぶことを、教育に組み込む

セミナーの冒頭、堀田龍也氏は「最新の生成AIはすでに大学首席合格レベルの能力に達しており、使わない選択肢が難しくなっている」という現状認識を示しました。また、「宿題を生成AIに任せる生徒への対応が避けられない段階に来ている」という言葉は、多くの現場教員にとって実感を伴うものだったのではないでしょうか。

【出典:堀田龍也氏EDIX東京2026  講演スライド】

こうした状況に対して堀田龍也氏が提示したのは、AIを遠ざけるのでも無条件に取り入れるのでもなく、距離感と頼り方を学ぶこと自体を授業設計に組み込むという考え方です。具体例として挙げられたのが、プロンプトの工夫でAIが答えを直接言わないようにするという手法です。

AIに「答えではなくヒントだけを返す」よう指示することで、生徒が自分で考えるプロセスを損なわずに活用できる。

こうした設計の工夫は、AIを「学びの邪魔をするもの」から「学びを支えるもの」に変える視点として参考になります。「ツールをどう使うか」を学習デザインの一部として捉えるこの発想は、現場への即応性という意味でも実践的でした。

一斉授業から個別進行+教師による全体把握へ

GIGA端末の活用が進む中で、授業スタイルの変化についても具体的な姿が示されました。一斉授業から、生徒各自が自分のペースで進めながら教師がクラウドで全体を把握するスタイルへの移行が、先進的な学校では実際に起きています。

注目したいのは、この変化がもたらす心理的な効果です。全員が同じ進度で進む授業では、理解が追いつかない場面で発言や質問をためらいやすくなります。一方、個別に進められる環境では「わからないことへの不安を感じにくい」雰囲気が生まれやすく、自分のペースで立ち止まりながら学ぶ姿勢が育ちやすいという指摘がありました。

また、外国人生徒の増加に対応した翻訳ソフト活用の事例も紹介されました。母語が異なる子どもが同じ教室で学ぶ現実に対して、デジタルツールが実質的な橋渡し役を担っている——これは、多様性への対応がテクノロジーによって現実的な形になりつつあることを示す一例です。

情報活用能力と学力の相関

STEAM JAPAN編集部として特に関心を持ったのが、学力調査に関するデータです。「情報活用能力が高いと認識している子どもほど、学力調査の正答率も高い」という相関が示されており、情報活用能力が特定教科に閉じた話ではなく、学力全体の基盤になることがうかがえます。

「情報活用能力」というと、検索やタイピングのような操作スキルをイメージしやすいのですが、その本質は情報を目的に応じて集め、整理し、判断する力です。そう捉えると、この相関はむしろ自然なことかもしれません。必要な情報を選び取り、論理的に整理して活用する力は、どの教科でも問われる思考の土台だからです。

この前提に立つと、タイピングをカリキュラムに正式に位置づけることや、小学校段階からの情報・探究領域の充実は、「ICT教育の強化」という枠を超えて、学習全体の底上げとして捉え直せます。全国学力・学習状況調査のCBT移行による即時フィードバックの実現も、教師が個々の学習状況をより早く把握して指導に活かせるという意味で、この方向性を支える動きとして紹介されました。

【出典:堀田龍也氏EDIX東京2026  講演スライド】

AIが広がる中でも、人との対話の役割は変わらない

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