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STEAM JAPAN AWARD 2026の審査結果が発表されました。今回は、受賞プロジェクトの中からGOLD賞を受賞した取り組みをご紹介します。
「STEAM JAPAN AWARD 2026」において【GOLD賞】を受賞したのは、豊田工業高等専門学校の3年生3名で結成されたチーム「KSK」です。
彼らが開発したのは、スマート電源タップ「MICHIBIKI GUARDIAN TAP」。地震の後に起こる二次災害「通電火災」を、準天頂衛星みちびきの災害・危機管理通報(災危通報)を直接受信して防ぐという、防災の新しいかたちです。
地上の基地局が壊滅しても衛星から警報を受け取れること、そして家全体を停電させず「危険な機器だけ」を止めるという発想――身近な防災への鋭い課題意識と、それを実際に動くプロトタイプにまで仕上げた完成度が高く評価されました。

今回は、プレゼンターの川上彰斗さん、メインプログラマーで代表の貝淵蒼馬さん、ハードウェア担当の徳満有哉さん、そしてSTEAM JAPAN AWARDを協賛する公益財団法人日産財団の坂元さん・中村さんが参加しオンラインでインタビューを実施。開発の背景や試行錯誤、今後の展望についてお話を伺いました。

チームKSK:
GOLD賞という大きな賞をいただけて、本当に嬉しく思っています。ありがとうございます。1月のハッカソンからチームで試行錯誤を重ねてきたので、そのアイデアと実装力が最高の結果につながり、これまでの努力が評価されたという喜びでいっぱいです。
「MICHIBIKI GUARDIAN TAP」は、災害時に発生する二次災害である「通電火災」を防ぐためのスマート電源タップです。準天頂衛星みちびきの災危通報を活用して緊急地震速報などを受信し、地震が発生したときに、接続された機器の電源を自動かつ選択的に制御します。これによって、火災のリスクを最小限に抑えることを目指しました。

チームは3名で構成されています。川上がプレゼンター、代表でメインプログラマーの貝淵がソフトウェアの実装とハードウェア設計を、徳満がハードウェアやCADの設計を担当しました。それぞれが高専で磨いた専門を持ち寄っています。
チームKSK:
開発のきっかけは、1月に東京で開催された「みちびき災害・危機管理通報サービスを活用したハッカソン」に参加したことです。そこで災害時の課題を徹底的にリサーチする中で、私たちが着目したのは、大地震そのものではなく、その後に起こる火災でした。

調べてみると、阪神・淡路大震災では原因が特定された地震火災の約61%*が、東日本大震災では約66%が電気に起因する火災でした。停電中は鎮まっていた電気ストーブなどが、電力の復旧した瞬間に、避難後の無人の部屋で発火してしまう。通電火災が過半数を超えているという事実を見つけ、みちびきの強みを生かして、この電気火災を減らせないかと考えたのが、最初の課題設定になりました。
*出典:内閣府 大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会「大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について」
https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/guideline_houkoku.pdf#page=9

チームKSK:
普及が進んでいる感震ブレーカーは、揺れを検知すると家全体の電源を一括で遮断します。でもそれは、地震直後のいちばん危険な瞬間に照明を奪い、ガラス片や落下物が散らばる暗闇での避難を強いることにもなります。火災を防ぐはずの装置が、別の怪我を招いてしまう。この矛盾に、強い問題意識を持ちました。
そこで「MICHIBIKI GUARDIAN TAP」は、電気ストーブのような熱源だけをコンセント単位で遮断し、LED照明やテレビ、Wi-Fiルーターへの給電は維持するようにしました。通電火災を防ぎながら、避難に必要な「明かり」と「情報」を残す。そこにこだわりました。
チームKSK:
最も苦労したのは、ソフトウェアとハードウェアを融合させて、一つのプロダクトとして成立させることです。貝淵のプログラムと徳満のハードウェアを組み合わせる段階で、さまざまなエラーや、うまくいかないことがたくさんありました。
それでも、課題を一つひとつ着実に解決していくことをチーム全員で意識して進めました。プレゼンターの川上は2人に比べてロボットや開発の経験が少なかったのですが、二人からアドバイスをもらいながら、チーム一丸となってプロダクトを作り上げることができました。
チームKSK:
当初は一般家庭での使用を考えていました。でも導入を考えていく中で、みちびきが「Wi-Fiの届かない、屋外に強い」という点に改めて気づき、むしろ農地のほうが、みちびきをもっと活用できるのではないかと考えました。
農地は、災害が起こった際に真っ先に向かいづらい場所でもあります。ハッカソンで「農業のIoT」というテーマに触れたこともあって、自分たちのプロダクトを農業に生かせないかと、みんなでアイデアを出し合い、農業への応用という案にたどり着きました。
今後については、衛星からの信号を直接受信して社会に実装すること、農地へ展開することなど、アイデアはいろいろと出ています。ただ、農地向けのプロダクトはまだ製作できていないので、これから改良を続けて、形にしていきたいと考えています。
日産財団・坂元さん:
まず印象に残ったのは、課題設定の確かさです。技術開発には基本となるプロセスがあります。「そもそも課題は何か」をきちんと設定し、「どう解決するか」を考え、「本当に解決できるか」を実際に検証してみる。その結果、うまくいったこともそうでなかったこともある。そこを振り返って次につなげる――この基本動作を、まだ社会に出る前の高校生のうちから実際にやっている。そこが何より印象に残りましたし、ちゃんとしているなと思いました。
特に良かったのは、課題を数字で示している点です。「火事は危ない」と言われても誰でも分かることですが、件数や割合といった定量的なかたちで示されると、聞いた人が「これは解決しなければ」と課題として認識しやすくなります。途中で「3人で役割を分けて力を合わせた」という話もありましたが、それも、これは大変な課題だとそれぞれがきちんと認識できたからこそ、協力が生まれたのだと思います。説得力のある課題設定ができていたところが、いいところだったのではないでしょうか。

日産財団・中村さん:
新しいアイデアをものにしていくときには、「頭・手・足」の3つの力が必要だと思っています。頭は考える人、手はいち早くそれを形にして仕上げる人。では足は何かというと、お金を集めてくる人なんです。
このシステムはとても良いと思っていますが、いざ社会実装の段階になると、足りなくなるのがお金です。だから、足になる人――いわば広告宣伝の責任者のような存在を迎えることができれば、この製品を世の中に広めていけるのではないかと感じました。
技術的な点では、これはみちびきを使っているので、今は日本でしか使えないんですよね。GPSやGLONASSのような他の衛星システムとも一緒に使えるようになれば、いろんな地域で使えて、もっと良いものになるのではないかと思います。

日産財団・坂元さん:
技術を考えるうえで大切なのは、「縦」と「横」の視点だと思っています。課題と、それを解決する技術は、いわば縦横の関係にあります。皆さんはすでにいろいろな技術を持っていて、今回は火災という課題を設定しましたが、次は農地かもしれません。一つのことに集中するだけではなく、自分の技術が他のどんな社会課題の解決に役立つのか、「横を見る」視点を持ってほしいんです。
それからもう一つ。みなさんはまだ18歳で、これから50年くらい働くわけです。今持っている技術が、3年、5年、10年と経つうちに、もっと良い技術に置き換わっているかもしれない。今のものが50年後も最良とは限りません。だからこそ、自分の技術が他のどんな社会課題の解決に役立つのか、「横を見る」視点を持って学び続けてほしい。ただ、課題を立てて、検証して、振り返るという「基本動作」は、おそらく50年経っても変わらないと思いますよ。
地震の「揺れ」そのものではなく、その後に静かに迫る「通電火災」へ目を向け、通信の届きにくい農地にまで視野を広げていく――身近な気づきを、確かな課題設定と技術で社会の備えへとつなげていく姿は、STEAM JAPAN AWARDが大切にしてきた「社会課題に挑む学び」をまさに体現しています。
次の世代は、どんな視点で社会に新しい選択肢を示してくれるのか。受賞作品のこれからの歩みとともに、次回のSTEAM JAPAN AWARDにも、ぜひご期待ください。
関連リンク:
・STEAM JAPAN AWARD 2026 受賞作品はこちら
・公益財団法人 日産財団:https://www.nissan-zaidan.or.jp/