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〜VR・3Dプリンターが拓く、新しい学びの可能性〜
STEAM JAPAN AWARD 2026の審査結果が発表されました。今回は、受賞プロジェクトの中からSILVER賞を受賞した取り組みをご紹介します。
「STEAM JAPAN AWARD 2026」において【SILVER賞】を受賞したのは、鳥取県の高校2年生(研究当時)、水村阿礼さんです。

水村さんが取り組んだのは、VR技術と3Dプリンターを活用した地方博物館の展示改善プロジェクト。「
地方の博物館で見られる標本は、都市部で見られるものに比べ限られている」という素朴な問いからスタートし、地域間の教育格差という社会課題に正面から向き合いました。
地方博物館ならではのオリジナリティを活かしつつ、デジタル技術で都市部に劣らない体験を届けるという逆転の発想。1年間ほぼひとりで研究を進め、実際に博物館での展示を実現するまでの完成度が高く評価されました。
今回は、水村阿礼さんにオンラインでインタビューを実施。研究のきっかけや試行錯誤、そして将来の夢についてお話を伺いました。
水村さん: SILVER賞をいただけたこと、とても嬉しく思っています。担任の先生から受賞を知らされた瞬間は、本当に驚きました。先生のサポートはありましたが、基本的には1人で取り組んできた研究なので、その努力が評価されたことがとても嬉しかったです。
このプロジェクトは、VR技術と3Dプリンターを組み合わせて、地方の博物館でも質の高い展示ができるようにすることを目指したものです。化石として残っている古生物の骨格や生態を3Dモデルで再現し、VR空間の中で実際に動く姿として体験できるようにしました。また、手のひらサイズの3Dプリンター模型も制作し、来館者が実際に手に取れる展示も実現しました。

出典:水村さん公募企画書より抜粋
水村さん: 小さい頃から博物館が大好きで、いろんな場所の博物館を巡っていました。そのうちに気づいたのが、「ティラノサウルスは東京の博物館では見られるのに、地元の鳥取では見られない」という事実です。
もちろん、実物を各地に持っていくわけにはいきません。でも、それによって地域によって体験できる展示の内容に差が生まれているとしたら、それは一種の教育格差ではないか、と思うようになりました。地方の博物館には地方ならではの展示物があります。それをデジタル技術で補うことで、地方オリジナルのコンテンツを持ちながらも、都市部に引けを取らない体験を提供できるのではないか。そこがこの研究の出発点でした。

出典:水村さん公募企画書より抜粋
水村さん: 課題意識自体は中学3年生の頃からありました。その頃に初めて3D技術に触れ、学校に3Dプリンターがあるのに使っている人がほとんどいないことに気づき、「もったいないな」と興味を持ったことがきっかけです。趣味で3Dプリンターを使い始め、自分でモデルを出力したり、プログラミングを学んだりするようになりました。
高校2年生になると、授業の中に「課題研究」の時間が設けられていました。中学の頃に温めていたアイデアを、本格的にやってみようと決意。夏休みも課題研究に時間を費やしながら、VRと3Dを組み合わせた展示の制作を進めていきました。ハンドボール部の活動と並行しながら、授業外の時間も積極的に使って取り組みました。
水村さん: 最も大変だったのは、VR空間の中で生き物を「自然に動かす」ことです。3Dモデルにボーン(骨組み)を入れて、関節ひとつひとつにアニメーションをつける作業は、想像以上に複雑でした。骨の動きにモデルがきちんと追従するかを確認しながら、さらに生き物ごとに自然な動きを追求していく。初心者だったこともあり、本当に苦労しました。

出典:水村さん公募企画書より抜粋
四足歩行の動物の動きをどう表現するか、参考にしたのは自分の家の猫でした。実際に観察して、歩き方や重心の移動を研究に活かしました。最終的には「気合いでやり切った」という感じです(笑)。
わからないことは、学校の先生やAIにも相談しながら進めました。特に学校で定期開催されていた「CoderDojo鳥取」というプログラミングイベントに自ら参加し、VRの方向性を固める大きなきっかけになりました。
水村さん: 昔からお世話になっている学芸員さんにご連絡し、展示の機会をいただきました。昨年の11月から12月にかけて、期間限定で実際の博物館に展示させていただきました。
展示では、どこに何を置くか、来館者に何を伝えたいかを学芸員さんと相談しながら決めていきました。キャプション(解説文)の内容や難易度についても、学校展示での反省を活かしてブラッシュアップし、当日は学芸員さんに手伝っていただきながら、実際に自分が学芸員役となって展示の場に立ちました。

出典:水村さん公募企画書より抜粋
3Dプリンターで制作した模型は手のひらサイズで、来館者が直接手に取って触れるようにしました。フィラメントの色が灰色しかなかったという制約もありましたが、実物の骨格の細部を間近で観察できるという点は、来館者にとても好評でした。
水村さん: 展示に来てくれた子どもたちが、VRを何度も試してくれる姿を見られたことです。自分が作ったVR空間の中で恐竜が動く様子を見て、子どもたちがとても喜んでくれて。それが一番嬉しかったですし、頑張ってきてよかったと実感した瞬間でした。
自分が恐竜好きということも、モチベーションの大きな原動力になっていました。好きなものを自分の手で作り、それをVR空間の中で動かして見られる――その体験自体が、研究を続ける力になっていました。
水村さん: これから大学に進んで、古生物学者になりたいと思っています。恐竜をはじめとする古生物の研究を続けながら、研究で得た知識を広く一般の方々に届ける役割も果たしていきたいです。
今、気になっているのは、同じ時代・同じ地層の話をしているはずなのに、生態系や環境の描写が研究者によって一致していないことがある、という問題です。世界中の化石データを精査して、古生物の生態や分布を正確に示す「世界MAP」のようなものを、一般の人にもわかりやすく届けられたら――それが今の夢です。
古生物学者を目指す水村さんの研究と挑戦は、これからも続きます。次の世代は、どんな視点で社会に新しい選択肢を示してくれるのか。水村さんの今後の取り組みや、次回のSTEAM JAPAN AWARDにも、ぜひご期待ください。
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