2020.09.26│STEAMレポート

【未来のSTEAM人材】世界最大級のSTEAM教育コミュニティでの受賞者〜中嶋花音さん〜

アメリカのNPO法人FIRSTが主催する、高校生以下の世界最大級のSTEAM教育コミュニティ「FIRST ROBOTICS COMPETITION(FRC)」。そこで「Rookie All Star」「Highest Rookie Seed Award」「Rookie Inspiration Award」の3つの賞を受賞した、現役大学生の中嶋花音さんにお話を伺いました。

中嶋花音さんプロフィール

ロボコンチーム SAKURA Tempesta創設者

 FIRSTJapanFRC委員会委員。 2017シーズンにミネソタ州でFRCに参加した後、千葉県内にてSAKURA Tempestaを立ち上げ、2019シーズンまで生徒としてFRCに参加。 2018年よりFRC委員会委員としてFRC普及を含むSTEM/STEAM教育の普及を目的とした活動を開始。 2019年より孫正義育英財団3期生として、現在 Macalester Collegeにて神経科学と心理学を専攻。

FRCとは?

 FRC(FIRST Robotics Competition)は、アメリカのNPO法人であるFIRSTが主催する、中学3年生から高校3年生向け(米国における HighSchool)のロボット競技会です。FIRSTは若者の理系教育の参画を推進する団体で、6歳から18歳までの生徒を対象に、年齢別のロボティクスプログラムを4つ提供しており、FRCはそのひとつです。
 2019シーズンは、全世界34ヶ国から3,790チームが参加し、94 ,750人以上の生徒、29,325人以上のメンターが参加している大規模な国際ロボコンであり、毎年4月に開催される世界大会FIRST Championshipは世界最大のロボコンとして知られています。

 FRCはスポーツの興奮と、科学技術の難しさの両方を味わうことのできるプログラムとなっています。毎年大会のテーマが変わり、それに沿って約6週間という短い期間ゲームマニュアルの翻訳から大型ロボットの製作、プログラムの調整の全てを行います。このプログラムではチームの活動に必要なものの調達も自分達で行う必要があります。
 年間を通してメンバー自ら、スポンサーを見つけたり、クラウドファンディングなどを用いることで資金調達、作業場所の確保、製作に必要な道具の調達等を行います。

また、FIRSTの精神として「Gracious Professionalism(優雅なプロフェッショナリズム)」と「Coopertition」があります 。
「Gracious Professionalism」は、質の高い仕事をこなしながら他者を尊敬することに重点を置き、個人やコミュニティを尊重する、という取り組み姿勢を意味しています。これは人生を送る中で重要なことでもあります。Coopertitionは、Cooperation(協力)と、Competition(競争)とを組み合わせた造語です。これは、他者に対し無条件に親切にし、激しい競争の中でも尊敬を忘れない、という姿勢を表しています。これにより、互いに競い合いつつも、助け合いながら成長していきます。
 特にFRCにおいては、社会で活躍する人材を育成することに重点を置いており、資金を集め、チームブランドをデザインし、チームワークのスキルを磨き、地域へのアウトリーチを行わなければいけません。

日本のIT人材不足の現状

 日本では、2030年までに約59万人のIT人材が不足すると言われている中、 急いでプログラミング教育が学校のカリキュラムに入ったんですが、いきなり何かが変わるわけでもなく、他国のIT社会に追いついていない状況です。また、国内のロボティクス・AI人材の育成の現状は、公教育ではそのようなプログラムはほとんど事例がなく、ロボット競技会がその役割を担っています。
 ロボカップジュニアが全国から200程度のチームが出場し、次いでNHK高専ロボコンや全国高等学校ロボット競技大会は120程のチームが出場しているのですが、大規模のロボット競技会はこれくらいしかありません。高専に通っている生徒は全体の2%にも満たないため、ほとんどの人がエンジニアリングやロボティクスに触れる機会が少ない状態なんです。

 また、ロボコンの世界大会では日本の成績は下降中という現状です。アメリカや中国ではロボコンが盛んに行われており、その中でも最大規模なのがFRCになっています。2m近くの高さ、重さ50~65kgの大きなロボットを製作するだけでなく、企業とも生徒自ら連携を取ったりと普通のロボコンでは体験できないことができます。また、企業側からしても、その場で優秀な人材を見つけることができるので、企業にも大きなメリットがあります。更に、ロボットを作る中でチームの結束力や他のチームとの助け合いで課題解決能力を養い、アウトリーチ活動まで行うので、それら全て込みのPBL(Project-Based Learning)とも言えるのがこのFRCの特徴です。

1 2

カテゴリ:STEAMレポート
キーワード: