インタビュー

2020.01.20

【インタビュー】未踏ジュニア代表 鵜飼 佑さん

独創的なアイデア・卓越した技術を持つ小中高生及び高専生を発掘・育成する、未踏ジュニアを立ち上げた鵜飼氏にインタビューをした。

鵜飼 佑 未踏ジュニア代表

東京大学大学院にて水中ロボットを用いた水泳支援システムの研究開発を行い、2011年度スーパークリエータに認定される。 MicrosoftのOfficeやMinecraft開発チームにてOffice LensやMinecraft Hour of Code Designerといった教育関連の製品のProgram Managerを務める。King’s College LondonのComputing in Education専攻に留学後、文部科学省にてプログラミング教育プロジェクトオフィサーとして主に小学校におけるプログラミング教育を推進。2016年より、一般社団法人未踏にて未踏ジュニアを立ち上げている。

- 未踏ジュニアとは -

独創的なアイデア、卓越した技術を持つ17歳以下の小中高生及び高専生を対象とした、ミニ未踏です。ITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイディアと技術を有するとともに、これらを活用する優れた能力を持つ、突出した人材を発掘・育成することを目的としています。

未踏ジュニアWEBサイト https://jr.mitou.org

新しいことに挑戦する、野心に燃えた学生たち

町田「未踏ジュニアに参加する学生は、どんなバックグラウンドを持っているのでしょうか?また、どのような能力を持ち合わせている学生が多いのでしょうか?」

鵜飼さん「みんなどこかでプログラミングは勉強してきている前提で、その上でどんなもの作ったら面白いのかということをみんなで考えて作っていくものになっているんですよ。そのため、そもそも未踏ジュニアに応募するためにアイデアをまとめて書類を書く必要があったりしてハードル高めなので、新しいことやものを作っていきたいという気持ちの子が多いです。しかも単位にもならないし、学校の授業でもないので、普段の自分のやるべきことに加えて何かをやっていきたいという気持ちの強い子が多いですね。」

町田「熱い思いの学生が多いんですね。未踏ジュニアに応募する際にはアイデアも一緒に提案するんですか?それとも未踏ジュニアの期間中でみんなで考えていくんですか?」

鵜飼さん「基本的にはアイデアと自分のスキルや経験をまとめてもらって、書類審査があります。ですので、基本アイデアや何かやりたいことを持っているケースがほとんどです。しかし、未踏ジュニアの期間中にアイデアが変わっていくこともありますよ。書類審査を通過した後にオンラインでインタビューをやっています。今年は130人ほど応募があって、そのうち30人程インタビューまで進みました。」

町田「ありがとうございます。未踏ジュニアに参加する学生はやりたいことやアイデアを持ってきていると仰っていましたが、未踏ジュニアに参加する学生には、技術とアイデア、どちらの能力を期待していますか?」

鵜飼さん「それはどっちもですね。しかし少なくともある程度のプログラミング能力を持っていることを、期待しています。未踏ジュニアの期間は短いので、プログラミングも学びながら開発をすすめるとなかなか期間内に面白いところまで行き着かないことも多いんですよ。」

町田「では基本的に技術は習得している学生が多いんですね。未踏ジュニアでの今までの成果物を拝見させていただいて、まだ学習範囲外のことでも自発的に学んでやっているという子がいたのですが、向上心が高いだったりとか、自分から学ぼうとしている学生が多いですか?」

鵜飼さん「そうですね、自分から学ぶマインドがある子の方が多いですね。やる気がある子を対象に、サポートするというプログラムなので、1から10まで教えていくというよりは、こういうの使ってみたら、というようなアドバイスをすることが多いですね。普通プログラミング教育をやろうとすると、教育系の人たちが教えることが多いんですけど、未踏ジュニアでは普段エンジニアとして最前線で働いている人がPMとしてサポートするので、こういうものがあるよという風に選択肢を提供することができます。そこから先どこまでできるのかということはその子次第になりますね。」

町田「ではアイデアのサポートというよりかは、技術面でのサポートということになるんですか?」

鵜飼さん「いえ、技術的なサポートはもちろんしますし、アイデアのサポートもします!」

描きかけの線画を自動で完成させることができる、GANをベースとしたシステム”Edge-guided Anime Characters Generation”を開発した行方 光一 さん

町田「そうなんですね!若いうちから未踏のようなものづくりに挑戦することによって、今後そういう子たちはどのような人材になっていくと思いますか?」

鵜飼さん「いつも僕が言っているのは、普通に『○○大学とか○○高校の○○です』っていう人は、日本には無限にいるじゃないですか。でも、みんな何か社会で解きたい問題があったりとか、こんなもの作りたいという想いがあって、自分で一個モノを作ると、『こういう課題意識を持って、こんなモノを作った○○です』って言えるようになるんですよ。そういうことが大事だと僕は思ってます。課外で、こういう想いがあってこういうことしましたって言える人って日本では少ないと思うんですよ。僕は海外に行って欲しいと思うタイプなので、そういう人に海外に進学したり、海外でインターンして欲しいなって思ってます。」

学歴よりも大切なモノ

町田「これからの時代は、学歴とかよりも成果物の方が重要視されていくようになっていくと思いますか?」

鵜飼さん「作ったものというよりかは、どんな課題意識を持って、その課題に対して色んなアプローチをしたことがあるか無いかということだと思います。ただ学校の授業で学ぶだけでなく、社会と繋がりながらモノを作っていくのが大事だなと思っています。」

町田「なるほど。課題意識を持って何かを作っていくと仰っていましたが、未踏ジュニアで作るものは、アプリのようなサービス系が多いのでしょうか?メカやロボットのようなものを作る学生もいらっしゃるのでしょうか?」

鵜飼さん「特に制限していないので子供たちによりますね。」

町田「3Dプリンターでモノを作っている子も見受けられたのですが、そういう子達も自分で3Dのデータから作ってプリントしているんですか?」

鵜飼さん「はい。分からないものがあればサポートしますが基本的に学生が自分たちでやっていますよ。」

町田「このプロジェクトは、課題解決系のアイデアが多いと思うのですが、新しいインターフェースのアート作品など、アート寄りのアイデアとかって今までにありました?」

鵜飼さん「全体数から見ると少なめですが、課題解決系のものだけを採択しているわけではありません。例えば2018年度は、複数のスマートフォンを同時に制御してそれでアート作品を作っている子はいましたし、2019年度はゲームを開発している子もいました。僕の個人的な想いとしては課題解決系のコンテストはあまり好きじゃなくて、子供たちが本当にやりたい事をやってもらいたくて。大人が課題を設定して子供が解いていくのは本質的じゃないと思っています。子供たちがやりたい事を応援しているので、どんなジャンルでも本当にやりたい事ならいいと思います。」

町田「確かに、大人が課題を与えるのって、子供たちが課題を見つける力が養われないですよね。未踏ジュニアでできた成果物はリリースされたり、商品として世に出た事例はありますか?」

鵜飼さん「世に出たの定義次第ですが、未踏ジュニアが終わった後のアプリやサービスのリリースは結構しています。例えば、先程言及したゲームのabecobe (アプリ甲子園2018優勝・総務大臣賞、UNITYインターハイ2018ゴールドアワード) や、Toubans (2018年のLINE BOOT AWARDS最優秀賞受賞)などですね。」

シンプルな操作性で、正反対な主人公と相棒をゴールにぴったり導くパズルゲーム”abecobe”を開発した浅野 啓さん

町田「未踏ジュニアを経て、様々な功績が残されているんですね。受賞もされていて、その凄さがとても伝わってきました。未踏ジュニアを終えた後の学生たちはどんな道を歩んでいくんですか?」

鵜飼さん「未踏ジュニアを終えた子たちは、自分で作ることに時間を使いたいという子が多いので、N高のようなオンラインの高校に転校する子は非常に多いです。あとは未踏ジュニアに参加した結果、コンピューターサイエンスを勉強したくて海外の学校に行く子もいます。」

町田「未踏ジュニアに参加したいけど、受験が控えているから参加を止められた子とかっているんですか?」

鵜飼さん「結構いると思いますね。」

町田「そうですよね。受験とは別で何かにチャレンジするって簡単な事じゃないですもんね。」

鵜飼さん「そうですね。ただ未踏ジュニアのクリエータに限って言うと、一般受験で大学に行く子ってかなり少数派で、未踏ジュニアでの成果は海外の大学など、ユニークな成果を持っていると有利な入試に活きるので、海外の大学を目指している子にとってはいい機会だと思います。海外の大学に行くときに、自分は何者かと問われることが多いので、自分が何者かを証明する時に未踏ジュニアでの成果は価値のあるものになりますよ。」

イラスト手編みを支援するアプリ”編模様 (あもーよ)”を開発した武田 和樹さん

町田「海外の大学に行く子もいるようですが、海外の学校に行くメリットって何があるんでしょうか?」

鵜飼さん「東京で頑張るより少ない労力でいろんなチャンスに巡り会えたり、ネットワークが格段と広がる点ですかね。あと受験勉強すること自体に価値がないと思っていて、未踏ジュニアに参加する子たちは何かを作り出すスキルとパッションを持っているので、そういう子にはそれで評価される仕組みの方が合っていると思います。海外の大学だけでなく日本の大学のAO入試を受ける子も多いですね。」

町田「なるほど、確かにスキルって一般受験では評価しにくいですもんね。今回鵜飼さんにお話を伺って、どのような人材が世の中で求められていくのか、評価されていくのかが分かってきました。本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。」

鵜飼さん「こちらこそありがとうございました。」