STEAM JAPAN AWARD 2026 受賞者インタビュー最終回 〜BRONZE賞・IDEA賞 受賞チームに聞く〜

STEAM JAPAN AWARD 2026の審査結果が発表されました。今回は、受賞プロジェクト紹介の最終回として、BRONZE賞・IDEA賞を受賞した3チームの取り組みをご紹介します。

介護現場をAR技術で支える「codell」、砂漠を食糧生産地へと変える挑戦に取り組む「環境研究班&Jr.」、そして「拍手」を科学的に探究した中川 航さんの3チームです。多くの応募作品の中から独創性や社会性、挑戦する姿勢等が高く評価され、見事受賞を果たしました。
テーマやアプローチはさまざまですが、どのチームにも共通していたのは、学校での学びや身近な出来事から生まれた疑問を自らの問いとして捉え、試行錯誤を重ねながら社会課題の解決に挑戦する姿勢です。

【BRONZE賞】
 チーム名:codell
 作品名:介護の“気づき”を共有するARグラス「KiDUKi」

【IDEA賞】
 チーム名:環境研究班&Jr.
 作品名:不毛の地を食糧生産地に

【IDEA賞】
 チーム名:中川航
 作品名:拍手を最強にしたい!

本アワードに応募したきっかけ、そして活動の前後で「問題意識」に変化はありましたか?

codell:
学校のスタッフの方から紹介していただいたことがきっかけです。
活動を始める前は、介護業界についてほとんど知識がなく、人手不足というイメージしか持っていませんでした。しかし、実際に30施設以上の方々へヒアリングを行う中で、情報共有や人材育成など、現場ならではの課題が数多く存在することを知りました。また、この活動を通じて、自分たちで行動し、多くの方を巻き込みながら進めていけば、高校生でも社会課題の解決に向けて本格的に取り組めるということを実感しました。

環境研究班&Jr.:
先輩が応募していたことを知り面白い企画だと思い挑戦しました。
活動を始める前は砂漠化に対しての知識は少ししかありませんでした。この活動を始めたことでより多くの砂漠化に対しての知識が増え、さらに砂漠化対策に取り組んで行きたいと思った。

中川航:
学校の探究活動の一環として取り組んでいたテーマが、「拍手を最強にしたい!」でした。当時は拍手の音を大きくすることのみを目的として取り組んでいましたが、拍手で社会課題を解決することができたら面白そう!と考え、本アワードに応募しました。
この活動を始める前は、社会課題は身近な問題ではなく、どこか遠い世界で起きていることのように感じていました。しかし活動を始めてからは社会課題が自分たちの生活に密接に関係していることに気付かされ、社会課題を自分ごと化して捉えるようになりました。

どんな社会課題・地域課題を設定したか教えてください。

codell
日本では高齢化が急速に進み、介護業界では深刻な人手不足が続いています。私たちはもともと健康管理に関する別のアイデアを検討しており、そのヒアリングのため介護施設を訪れました。そこで初めて介護現場の実態を目の当たりにし、少ない人数で多くの入居者を支える職員の方々が、大きな負担を抱えて働いていることを知りました。

その後、20以上の介護施設を訪問し、現場で働く職員の方々へのヒアリングを重ねる中で、大きな課題の一つが「新人教育」であることが見えてきました。介護では入居者一人ひとりに合わせたケアが求められますが、その多くはベテラン職員の経験や「気づき」に依存しており、新人が同じレベルのケアを行えるようになるまでには時間がかかります。その結果、教育に時間を割くことで、人手不足がさらに深刻になるという負の循環も生まれていました。
また、入居者の情報が紙で管理されている施設も多く、必要な情報をその場ですぐに確認しづらいという課題もありました。そこで私たちは、ベテランの気づきや入居者の情報を新人でもすぐに活用できる仕組みをつくることで、介護現場の負担を減らし、より質の高いケアにつながるのではないかと考えました。

環境研究班&Jr.
人口増加や気候変動を背景に、途上国では食料増産が急務となっています。しかし砂漠の砂は大量にあるが、あまりに微細であり通気性や排水性が悪いこと、腐植が少ないため肥料分がないことから水を与えただけでは栽培できない。そこで砂漠の砂を土壌改良できたら、栽培可能な地域に変わるのではないかと思いつきました。これは誰も挑んだことのないテーマであるが、SDGs達成に大いに貢献できる取り組みだと考えています。

中川航:
当初は、「ヒトの耳で聞いても大きい+音量が大きい拍手」の探究をメインで行っていましたが、探究を進めるうちに、拍手が持つ「大きな音を叩き鳴らすことができる」という性質そのものに、大きな可能性があることに気づきました。

現在、日本では東日本大震災や阪神・淡路大震災をはじめ、多くの地震が発生しています。もし建物の倒壊などで室内に閉じ込められた場合、どのようにして自分の存在を外部に知らせればよいのでしょうか。ホイッスルや大声で助けを呼ぶ方法もありますが、災害時に音を出せる道具が手元にあるとは限らず、大声を出し続けることも困難です。そのような状況で、誰もが確実に使える手段として、僕が探究している「拍手」に着目しました。拍手は繰り返し大きな音を出すことができるため、災害時には周囲に自分の位置を知らせる有効な救難信号になるのではないかと考えました。

制作・活動のなかで一番「壁」だと感じたことは?それをどのように乗り越えましたか?

codell
一番の壁は、自分たちの思い込みでプロダクトを作ろうとしていたことです。当初は「こういうものがあれば便利だろう」と考えて開発を進めていましたが、実際に現場の方々へ話を伺うと、自分たちが想像していた課題と現場が抱えている課題には大きなギャップがありました。 そこで、自分たちのアイデアに固執するのではなく、何度も施設へ足を運び、ヒアリングを重ねながら方向性を見直しました。現場の声を最優先にすることで、本当に必要とされるものに近づけることができたと思います。

作品の制作風景(codellさんより提供)

環境研究班&Jr.
砂漠の砂をどうすれば固まるかわからなかったことです。
私たちは先輩方が代々受け継いできた三和土の作り方が使えるのではと考え、砂に消石灰、苦土石灰を入れてみたところ固めることができました。

中川航:
本校の探究担当の先生のアドバイスや友人に恵まれたお陰で、これといった壁を感じたことがありません。

この活動は「授業・部活・有志・学校外」などさまざまな形で⾏われています。 活動形態の中で、時間・場所・環境⾯で⼯夫したことはありますか?

codell:
介護施設への訪問やオンラインでのヒアリングは、主に放課後や休日を利用して行いました。また、学校だけでは出会えない介護施設の方々や企業、自治体の方々とのつながりを活用しながら活動を進めました。特に、学校スタッフや施設関係者の方々から多くのサポートをいただいたことで、自分たちだけでは実現できなかった実証やヒアリングを進めることができました。

環境研究班&Jr.:
授業でしかやることが出来ず時間内に収めるためにできるだけ早く完成させるためにチームのみんなと意見を出し合い活動したこと。

中川航:
工夫したことは時間の捻出です。特に街頭アンケートの時には、幾つものステップを踏む必要があったため、スケジューリングを頑張りました。

チーム・仲間と活動するなかで、意見が分かれたり困った場面と、その時はどのように解決しましたか?

codell:
何度も意見が分かれました。特に、「技術的に面白いものを作るのか」「本当に現場で使われるものを作るのか」という点で議論になることがありました。 そのような時は、自分たちだけで結論を出すのではなく、実際に介護施設へ足を運び、現場の声を基準に判断しました。『現場が求めているかどうか』を共通の判断軸にしたことで、チームとして前に進むことができました。

環境研究班&Jr.:
砂漠砂に入れる石灰などの資材の量の調節で様々な意見が出た時です。
どの意見が正しいのか分からないので意見で出た量を全て試してみました。

中川航:
僕は探究活動の中で、友人と一緒につくば駅や研究学園駅、JICA筑波様でアンケート調査を実施しました。見知らぬ方々に声をかけることに最初は大きな緊張や不安を感じましたが、友人が一緒に取り組んでくれたおかげで、乗り越えることができました。

地域・企業・大学など外部の方と関わって得た気づきはありますか?

codell:
介護施設、介護ソフト企業、自治体職員の方々など、多くの外部の方々と関わらせていただきました。特に驚いたのは、自分たちが想像していた課題と、現場で実際に困っている課題が大きく異なっていたことです。 技術だけで課題は解決できず、まずは現場を理解することが重要だと学びました。また、高校生の年齢であっても本気で行動すれば、多くの方が協力してくださることも大きな気づきでした。

環境研究班&Jr.:
外部の方との連携はありませんでした。しかし乾燥地研究をされている方々やJICAさんから意見を伺えたらよかったです。

中川航:
大学の教授やJICA様などに協力していただきました。快く探究に協力してくださる方が多く、感謝の気持ちでいっぱいです。

研究活動のために制作した実験装置(中川航さんより提供)

プロジェクトを振り返って、「これがあればもっと前に進めた」と感じた支援や環境はありますか?

codell
交通費や試作品開発のための資金があれば、さらに活動を加速できたと思います。実際に介護施設へ足を運ぶ機会が多く、県外への訪問もあったため、移動費は大きな負担でした。
また、試作品の製作や改良には想像以上に費用がかかり、限られた予算の中で工夫しながら進めていました。学生でも挑戦しやすい資金面の支援があると、より多くの活動が実現できると思います。

環境研究班&Jr.:
砂漠砂に対しての解説の資料があればもっと上手く行けたと思う。また身近に砂漠に行った経験のある人があれば、もっと良かった。

今後どのように発展させたいですか?挑戦してみたいことはありますか?

codell
今回の活動を通じて、AR技術にはさまざまな社会課題を解決できる可能性があると感じました。今後は介護分野についても改めて見直しながら、自分たちのチーム「Codell」として法人化を進め、AR技術の社会実装に挑戦していきたいと考えています。
現場の課題を深く理解し、本当に使われるプロダクトを作ることを目標に活動を続けていきます。

環境研究班&Jr.:
これからも砂漠化対策に貢献できる活動をしていきたいと思います。
現在、野菜を栽培中ですが、この活動を後輩にも引き継いで実用化を目指してもらいたい。

実験で栽培している植物
栽培環境づくりに用いた資材(環境研究班&Jr.さんより提供)

中川航:
拍手の最大音量でギネス世界記録を更新したいです!

これからアワードに挑戦する同世代へのメッセージをお願いします。

codell
このようなアワードに挑戦することは、自分たちの活動を客観的に評価してもらえる貴重な機会だと思います。評価されることで自信にもなりますし、「もっと頑張ろう」という大きなモチベーションにもつながります。完成していなくてもまずは挑戦してみることが大切だと思うので、ぜひ一歩踏み出してみてください。

環境研究班&Jr.:
最先端でなくてもいいと思います。 誰にでも役立つ発明や研究が大切だと思うので、失敗を恐れず楽しんでください。

中川航:
一見、社会課題解決につながらないように見える取り組みでも突き詰めれば社会課題の解決につながることもあると思います。ぜひ、「好き」を突き詰める活動を!

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