アメリカ ハーバード大学の「学び」とは?〜ハーバード大学留学者・林氏から見る日米の教育〜

2020.08.07│STEAMレポート

 4つ目は、生徒が先生を評価することと授業中の生徒の姿勢です。一部の日本の大学でも生徒が教授を評価することがあると思いますが、アメリカの大学ではもっとシビアで、生徒の評価が先生方のテニュア審査にひびいたりします。そのため、必死になって授業をしていました。一方生徒側はというと、授業中に発言を求められることや学部の成績が大学院入学に反映されることもありますが、なにより学生がとりたい授業をとっているので授業中に寝ている人はいなかったと思います。余談ですが良い発言をした生徒には『Brain Prize』といって、脳みその人形を投げて渡すノーベル賞候補の先生もいました。

 5つ目は講義のビデオ撮影の普及率です。講義の将来展望に対する教授のご意見も興味深かったです。まず普及率ですが、ハーバード大学ではほとんどすべての授業でビデオ撮影が行われていました。やむを得ない理由で大学を休まざるをえなかった生徒が後で学習できるように、そしてもう一度授業を観て理解を深めたい生徒のためにしっかり配慮されていました。次に将来展望ですが、教授などの講義担当者の方々は実際の授業とビデオで学習に大きな差がでることの1つに議論を挙げられていました。近い将来には講義の前にビデオで予習させ、実際の講義ではひたすら議論だけを行うようにし、講義をより教育レベルの高いものにするべきだろうと意見を述べられていました。

(編集部) 「ハーバード大学での学びは日本の大学とは異なる学びのスタンスに感じます。そんなハーバード大学の授業はどのように成績が決まるのでしょうか?」

 授業は学部によっても異なりますが、1つの科目で週2~3コマあるものが多いです。1コマ目が教授による講義、2コマ目が事前にオンライン配布した論文を基にしたディスカッションなど生徒主体のもの、3コマ目が実習や実験などの内容です。授業中に発言や質問をした学生は加点されます。評価基準も授業や教授によって様々ですが、暗記を推奨しない先生が割りと多くいました。暗記型の筆記試験の廃止を進めている先生もいました。アメリカでは暗記よりもロジカルな考え方を学ばせる機会が多かったです。期末テストは筆記試験ではなくプレゼンテーションを採用している授業がそこそこあり、このことも日本とは異なっている点だと思います。

(編集部) 「それでは最後に、林さんの考えるこれからの時代に必要なチカラについてお伺いしたいです。」

 今はネットで多くの情報にアクセスすることができ、すぐ必要な情報が手に入る時代です。これからの時代では、「情報」で勝負したら良いと思っています。情報でのイノベーションが、これから大きな成果を生みやすいものの1つになると個人的に思っています。

 例を挙げて少し詳しく述べてみますと、イノベーションには、 (1) ヨーゼフ・シュンペーターが提唱しているように、これまでになかった新しい結びつきにより新しい価値をつくるものと、(2) 0から1を創り出すもの、の2つのタイプがあると言われています。例えば分野の成熟のために新しい発見による大きな結果を出すことが難しい分野の場合では、分野の融合等による、(1)のタイプのイノベーションが有効になると考えられます。次に情報で世界と勝負することができる人になるためには、文系・理系を超えて様々な分野で自分の意見を基に専門家と議論する習慣をもち、分野を超えてプロジェクトを生み出せる創造力を鍛えることが大事だと思っています。そして英語やプログラミングができることは有利に働くと思います。  

 最後に自分の中の固定概念や価値観の枠組みから飛び出す、そして世界進出に必要な国際感覚を身につけるという意味では、日本の学生はもっと海外に出て学ぶべきとも思います。難しいことかもしれませんが、義務教育や大学の過程で学年すべての人を1年以上留学させるプログラムがもっと増えても良いかなと感じています。世界中の教育機関の優秀な先生方から日本とは違った教育を受け、そして様々な考え方や文化に触れることで、日本人だけでなく世界の人たちのお役に立てる人が今後増えていってくれればと願っています。

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