2020.09.18│STEAMレポート

国際的な観点から見た日本の教育指針〜文部科学省 大杉住子氏〜

具体的な課題解決型の教育については、どういった事柄がありますか?

 ユネスコスクールという、国際交流や持続可能な社会づくりをカリキュラム化して取り組んでいる学校をユネスコが認定する仕組みがあり、先生方が自主的にカリキュラムを開発して展開しています。そこでは、子どもたち自身が、 SDGsから問いを見つけて探究活動に取り組んでいます。ユネスコスクールのメリットとしては、地域の課題と世界の課題が結びつくということですね。遠い海外の課題を抽象的に考えるということではなくて、自分の身近な地域活性化の問題ということに取り組みながら、海外の同じ世代の子ども達が何で悩んでいるんだろう、というアプローチを大事にしてもらっています 。

ユネスコが目指している人材育成について教えて下さい。

 生涯学習が広がったのはユネスコのレポートがきっかけです。ユネスコがどちらを向いてどういうことを提言していくかは、世界の教育に大きな影響を与えることになると思いますが、日本の学習指導要領が目指す方向性と完全に一 致しているなという風に感じています。指導要領の議論自体も経済協力開発機構(OECD)と政策対話をしながら、 国際的な情勢をかなり意識してきました。

 『教育の未来』の議論では、4つのテーマが重視されています。1つ目は共有財産である知識のガバナンス。スキルの育成も広い意味での知識に位置づけられており、社会の中で知識をどう共有し次世代に受け継いでいくか、という中で教育システムをどう位置づけるかを議論をしています。それが、各国の教育システムの今後の根幹を作るという意識で行っています。2つ目はSDGs。持続可能な社会づくりに向けて教育はどうあるべきか。3つ目は社会参画を促す教育のあり方。4つ目は職業や経済的保証と教育。この4つの観点から2年掛けて議論がなされますが、日本の教育の課題意識が一致しているんですよね。そういう意味では今の日本の教育の方針は自信を持って進めていいものです。

文部科学省でSTEAMに関わっていることはありますか?

 教育課程の面では、初等中等教育局、民間と連携した社会教育では、総合教育 制作局など、多くの部局が関わっています。国際協力では、国際協力機構(JICA)やユネスコのプロジェクトを通じて支援をしています 。

大杉さんにとってSTEAM教育はどうお考えですか?

 日本への期待が国際的に非常に高い分野だと思います。もともと日本の理数科教育は国際的に評価が高く、アフリカ支援で理数科の先生を派遣するなど、かなり長い間貢献してきています。評判が良いのは 、既製の教材に頼らずに、先生が身近にあるもので教材を作るなど環境に応じた教員の指導力の高さ。昨年のアフリカ開発会議(TICAD)でもアフリカの今後を支えるイノベーションのためにも、アフリカ支援でもSTEAMを重視していかなければいけないとされていますね 。

 STEAMを進める意味というのは、論理性と創造性が噛み合っているところだと私は思います。論理的に展開していって再現可能なものを求めるアプローチと、A(アート・ アーツ)が入っていることで再現できない個性の塊から発する創造を重視するアプローチ。そのふたつが融合しているのがSTEAMの魅力ですね。
 創造性と論理性を噛み合せながら課題解決をしていくことが、これから新しいものを生み出す。カリキュラムの在り方や学び方の工夫など、まだまだ可能性が残されていると思います。STEAMは学ぶことの楽しさを思い出させてくれますね 。

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