【STEAMアンバサダー】世界的F1チームのスーパーメカニカルデザイナー 松下智紀さん

世界的F1チームのスーパーメカニカルデザイナー
東京大学工学部機械工学科卒業、Motorsport のOxford Brookes大学にてMotorsport Engineering修了。 現在はルノーのF1車開発部隊「Renault Sport Racing」にてSenior Mechanical Design Engineer。Formula One Car (F1の車)のデザイナーとして、10年以上の経験を持つ。小さい頃から車好き。ルノーの2019年のF1カー、「RS19」では、outboard suspensionのデザインを担当

(インタビュアー・ライティング 町田 翔)

車に熱中していた幼少期

町田「まず、世界でご活躍されている松下さんの経歴を教えていただけますか?」

松下さん「僕は幼稚園の頃から、父親の影響で車が大好きで、車の一部を見ただけで車種が分かるくらい車が好きでした。三輪車によく乗っていた記憶がありますね。」

町田「幼稚園の頃からそれほど熱中することがあったのはなかなか珍しいですね。小学生以降はどのように過ごしていましたか?」

松下さん「小学校は、教育の実験校だったこともあり、当時にしては先端教育を受けていました。特に記憶に残っているのが『調べ学習』でした。自分が好きなトピックを選んで、リサーチして発表するんですよ。ネットも発達していない時代でしたので、自分で足を運んで調査してましたね。高校の時は、フライトシュミレーターのゲームに没頭してました笑」

町田「高校生になったら今度は空の乗り物にもハマったんですね!では大学では航空系の学部に進んだのですか?」

松下さん「いえ、機械工学学科に進みました。大学のサークル活動で、自分たちの力で設計したり、パイプを切ったり、車を一から作っていたんですよ。自分たちの作った車は大会で設計などを審査してもらったりしているうちに、車作るのって面白いなって思うようになってきたんですよね。そしたら、なんか飛行機はいいやって思うようになって来ちゃったんですよね。」

町田「色々やって来て結局車に落ち着いたんですね。現在はルノーでデザイナーとして活躍されていますが、何故海外で働こうと思ったのですか?」

松下さん「それは、モータースポーツの歴史があるイギリスで、モータースポーツ界の最高峰と言われているF1の中で働きたかったからですね。F1のチームのほとんどはイギリスに拠点を持っています。」

町田「自分の好きなことで本場で働こうとする行動力、流石ですね、、。現在はどのようなお仕事をされているのですか?」

松下さん「今はスポーツカーの部品を設計する部門で、リアサスペンションの設計・まとめ役をしています。車って実は妥協の塊で、〇〇にしたかったら△△は変更しないといけない と言ったように、全ての要求をのんで設計することは難しいんですよ。他の設計者と連携して、何が大事で何が妥協していいかをコミュニケーションをとりながら設計をしています。関わる人が増えれば増えるほど調整が難しくなってくるのですが、だからこそやりがいがある仕事です。」

主体的に行動することの重要性

町田「いかに他の設計者とコミュニケーションが取れるかが大事になってくる重要なポジションでお仕事をされているんですね。ところで、小学生の頃や中学生の頃に自分でテーマを決めて、自分の足で調査する流れを小さい頃からやっていたと仰っていましたが、そのようなことは後々役に立ったと感じましたか?」

松下さん「そうですね。自分が気になってるテーマに自分で労力をかけて調べた経験は、役に立ったと思います。自分が好きな事を主体的にやるということは人生においてとても大事なことだと思いますね。」

町田「確かに、現在の一律的な教育が主流な中、主体的に行動することってとても意味のあることですね。続けて、これからの子供たちが受けるSTEAM教育はどうあるべきだとお考えになりますか?」

松下さん「そうですね、まだSTEAMがこうであるべきというきちんと分かっていない人もいるし、人によってSTEAMの解釈はそれぞれ違うので、見解が一致しないと思うんですよね。でも、僕が生きてきて思ったことは、『自分はどうしたいのか、何をしなきゃなのかを自分の力で見つけて勉強する』ということだと思います。目的をちゃんと明確にして、なんでこれをやるのか・何をしなきゃなのかという事を幼い頃から考える力は今後必ず役に立つと思います。」

町田「STEAMは人によって捉え方がそれぞれだからこそ、そのような主体性を軸にしていくことで自分のやりたいことが明確になるんですね。」

松下さん「現在の教育は過去の知識を暗記させているだけですよね。でも、そうじゃなくて知識を組み合わせて自分で社会に作り出していくことができるのは意識してほしいことですね。そのように自分で考えて行動することは、大人になっても必ず役立つことだと思います」

カテゴリ:世界のSTEAM教育