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渋谷区教育委員会は、区立小・中学校で展開している探究「シブヤ未来科」で生まれた子どもたちの探究のプロセスと成果を集約し、共有するWebポータル「My探究」サイト( https://my.tankyu-shibuya.com/ )を公開しました。
「My探究」サイトは、区内の児童生徒一人ひとりのMy探究を学校や学年を横断して閲覧できる共通プラットフォームです。子どもたちの主体的な学びを可視化すると同時に、先生方の実践共有や、保護者・地域・企業との新たな対話・連携のきっかけになることを目指してつくられました。(サイト企画・設計: 株式会社Barbara Pool / 一般社団法人STEAM JAPAN)
ここからは、サイトの企画・設計等にも携わるSTEAM JAPANの視点から、探究「シブヤ未来科」を推進する渋谷区教育委員会の柳田さんに、数字と現場の実感の両面から、これまでの手応えについて特別に話を伺いました!

井上:探究「シブヤ未来科」が2年目を迎えましたね。まず、子どもたちの反応から教えてください。
柳田氏:昨年度の児童生徒アンケートでは、だいたい97%くらいが『探究「シブヤ未来科」は楽しい』と答えてくれました。ほぼ全員が楽しいと言っている感覚です。例えば、不登校ぎみだった子が『午後の探究の時間なら行ってもいいかな』と言って、そこから教室に戻ってくるきっかけになったケースもあります。単純に“楽しい特別授業”というより、『自分で決めていい』『自分のペースで深めていい』時間として、子どもたちが受けとめてくれている感じがありますね。
井上:素晴らしいですね。子どもたちだけでなく、先生方もかなり前向きに取り組んでいるとお聞きしました。先生側ではどんな変化が見えてきていますか。
柳田氏:先生にも、アンケートを取りました。約200人に答えてもらって、78%が『楽しい』と答えています。『正解のない問いに子どもと一緒に向き合うのが新鮮』『別の学校の先生とアイデアを共有できるのがおもしろい』という声が多くて。もちろん、評価や記録、外部連携のコーディネートなど、先生に負担が集中しやすいところも見えてきています。ただ、そこは教育委員会としてどう支えていくかを整理していくフェーズに入ってきたと思っています。
井上:「教科の時間を探究に振り替えると、学力が下がってしまうのでは」という不安も、全国的によく聞く声だと思います。渋谷区では国語や算数(数学)の授業をおよそ1割シフトしていると伺いましたが、その上で教科学力への影響はどう見ていらっしゃいますか。
柳田氏:渋谷区では国語と算数(中学校では数学)等の各教科の授業時数をおよそ1割、探究に振り替えているので、『学力が落ちるのでは?』という不安は当然あります。ただ、全国学力・学習状況調査の結果をクロスして見てみると、良くも悪くも、大きな変化は出ていないんです。つまり、“教科の点数は落とさずに、探究の時間を増やしている”状態に今はなっていると捉えています。
一方で、主体性や自己肯定感の指標は、令和6年度から明らかに上向いているんです。都や国の平均と比べたときに、渋谷の子どもたちの数値が少しずつ上に離れていっている。データで見ると、探究「シブヤ未来科」が子どもたちの内面の部分、自分を肯定して、前に進む力に効いているのではないか、という感触があります。

井上:進路の場面、特に推薦入試のようなところでは、変化は出ていますか。
柳田氏: 進路の場面でも、少しずつ変化が見えてきています。ある区立中学校では、都立高校の推薦入試の合格率が、以前は3割くらいだったのが、探究に力を入れた年度には5〜6割になったという報告がありました。推薦って、どうしても“自分の言葉で話す力”が問われるんですよね。探究を通じて、日ごろから自分のテーマについてプレゼンしたり、いろいろな大人と対話したりしている子どもたちは、面接でも物おじせずに話せるようになってきているのかなと感じています。
井上:データと現場の実感を踏まえて、「My探究」サイトにはどんな期待を込めているのでしょうか。立ち上げの背景から教えてください。
柳田氏:背景としては、大きく二つあります。ひとつは、先生方の立場から見たときのニーズです。探究「シブヤ未来科」が今年で2年目になって、現場の先生方と対話を重ねながら「どうすればもっと良くできるか」をずっと一緒に考えてきました。先生方の「より良いものにしたい」という思いが本当に強くて、評価規準の作り方だったり、単元の組み立て方だったり、いろいろな意見を吸い上げながら進めてきたんです。
その中で、「やっぱり探究の事例がたくさんあったほうが参考になる」「他校の事例も見てみたい」という声が、あちこちから上がってきました。そこで、より多くの探究の事例をアップしていける仕組みが必要だよね、ということで、「My探究ページ」のようなサイトを作ろう、という流れになっていきました。
もう一つは、子どもたちの目線です。これはもう昨年度からずっとで、「自分たちの探究の成果を、校内発表だけで終わらせたくない」「もっと広く世の中にアウトプットしたい」という希望が、子どもたち自身から出てきていました。もちろん各学校のホームページで紹介することもできますが、それだとどうしても学校ごとの動きで完結してしまいます。
せっかくなら、いろいろな学校の人が見られる共通のプラットフォームで、子どもたちが発信できる場所をつくりたい。そこで発信することで、子どもたちの意欲がさらに高まったり、「サイトを見ました」とどこかから声がかかって、探究が一段深まっていったり、そんなきっかけが生まれるといいなと考えて、「My探究」を立ち上げました。

井上:実際に、探究「シブヤ未来科」では子どもたちはどのような探究に取り組んでいるのでしょうか。
柳田氏:低学年の生活科では、先生が一から手順を教えるのではなく、子どもたちが自分で調べて朝顔を育てていく探究に取り組んでいます。支柱の立て方や水やりの仕方も子どもが自分で考えるため、うまく育たないこともありますが、そのような経験が翌年度以降の学びに活かされるなど、「つまづきを失敗と捉えない」というカルチャーが根づきつつあります。
中学生では、鉄道に関心を持つ生徒が、職場体験をきっかけに渋谷駅の構造に着目し、自らフィールドワークを重ね、駅の模型を制作する探究へと発展させるなど、子どもたちの「好き」を起点にした深い学びが広がっています。
企業との連携をしながら一緒にまちづくりや環境をテーマに取り組む学校もあります。既存のプログラムをそのまま提供してもらうのではなく、学校ごとに内容をアレンジしながら一緒にカリキュラムを作っていくケースが増えてきました。子どものプロジェクトを通して企業同士のコラボレーションにつながるなど、新しい形の産学連携も生まれています。
井上:最後に、本サイトに込めている想いとメッセージいただけますか。
柳田氏:今回立ち上げたサイトは、決して「渋谷区はこんなことをやっています」と宣伝するためのものではなく、子どもたちの学びをより豊かにし、先生方をサポートするためのツールだと考えています。ポータルでの発信が、新しい問いや対話、コラボレーションのきっかけとなり、渋谷で生まれているチャレンジが全国に波及していくことを願っています。渋谷を発信源に、日本の教育を少しずつでも良い方向に動かしていけたらと思います。
同時に、何よりもお伝えしたいのは、現場の先生方への感謝です。各校の先生方が、非常にお忙しい中でも工夫を重ねて、子どもたちのために新しいことに前向きにチャレンジしてくださっているからこそ、今の子どもたちの姿があります。
失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる環境づくりが、これからの教育には不可欠だと思います。「My探究」サイトもその一助になればうれしいですし、現場の先生方の挑戦を教育委員会としてしっかり後押ししながら、一緒に日本の教育をより良くしていければと考えています。
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