ニュース

2020.01.14

STEAM教育ってなに?ワクワクを軸にした次世代の“学び”を解説   【保存版】

*STEAM教育について、今一度STEAM JAPANとしての解説記事を掲載する。

 今、教育業界において「ワクワク」というキーワードが各所でさけばれている。

「子ども達一人ひとりのワクワクを醸成し高めていく」

「ワクワクドキドキする好奇心を起点にした学び」etc…

 昭和・平成における定量的で競争的だった戦後教育システムに対して、令和時代では「ワクワク」や「ドキドキ」といった定性的で共創的な姿勢・仕組みを学びのあり方として求める声が、各所で同時多発的に勃興しているのだ。

 具体的に、学校の先生方や塾講師、文科省や経産省といったガバメントサイド、そのほか様々なステークホルダーの皆様の声を拾い上げていくと、大きく2つのキーワードが浮かび上がってくる。

 一つは「EdTech」(※)、そしてもう一つが「STEAM教育」だ。前者については、AIや動画、オンライン会話といったICT技術を活用した教育技法のことで、主に「学びの効率化」の観点で力を発揮するものである。また後者については、知識やスキルの習得そのものではなく、子ども達一人ひとりの「知の創造性」を育むという観点で非常に重要なアプローチとなるものだ。

※EdTech(エドテック):Education(教育)× Technology(テクノロジー)の造語。

 そう、つまるところの最重要テーマは「創造性」なのだ。

 当メディアでは、このSTEAMがもたらす「創造性」の大切さを多くの皆様に知ってもらうべく、本記事においてその背景や重要性、現状における取り組み事例やその先に描かれている未来への展望について、それぞれお伝えしたいと思う。

いま、STEAM教育が注目される理由

 そもそもSTEAMとは何かというと、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語。2000年代に米国で始まった教育モデルであり、STEMという理数教育に、Aの創造性教育を加えた教育概念だ。

 「STEM教育なら知っている!」という声も多いかと思うが、STEAMにおける「A」の追加は、非常に重要なポイントとなる。

 各論に入って行く前に、まずは各国におけるSTEMおよびSTEAM施策、および国をまたいで実施された調査を通じて、今このタイミングでSTEAMの必要性がさけばれている背景についてお伝えする。

世界は「STEM」の、日本は「A」の基盤整備が喫緊の課題

 STEAMの流れを考えるにあたり、先にSTEM教育の世界的潮流を把握する必要があるだろう。日本のみならず世界中でSTEM教育の認知が大きく広がったきっかけは、2013年米オバマ政権下における、STEM教育の国家戦略発表にあるだろう。

 流れとしてはこうだ。もともと米国では、以下の3点に代表される「教育と時代の乖離」が課題となっていた。

1、国の未来の競争⼒低下への懸念(中国の経済発展への危機感等)

2、⾼等技術を⽤いる職種の適任者不⾜ ※移⺠問題も含む

3、STEM分野の総合的カリキュラムや教師が少ないことへの危惧

 これを背景に2006年、ブッシュ政権下で「STEM教育強化 10の指針」が発表される。その後、STEM教育⽀援を選挙公約に掲げたオバマ氏が大統領に就任。2011年には⼀般教書演説において、STEM 教育を優先課題に位置付けるとし、10年間で10万⼈STEM分野教員雇⽤等の具体施策を発表。その2年後に、国家戦略に位置付けたというわけだ。ちなみに、2018年トランプ政権においてもこの「米国STEM教育戦略 5カ年計画」を発表しており、政策を継続している状況だ。

出典:2013年オバマ政権下で制定された「米国STEM教育戦略」表紙

「初めからSTEAMの“A”があったわけじゃないんですね。」

 そんな声が聞こえてきそうなものだが、日本と米国では課題が逆なのである。米国では、⺠間主導でのデザイン振興が盛んであり、2010年からは高等教育機関でのエンジニアリングやビジネスと融合したデザイン教育が進んでいる(「第5回産業競争力とデザインを考える研究会資料」より)。

 米国だけではない。例えば英国でも1997年ブレア政権下より「クリエイティブ産業」政策がスタートしており、むしろ科学への態度低下に伴う科学履修者数の減少の方が課題となっている。

 一方日本では、後述するがSTEMに代表される数理教育への取り組みは目覚ましいものがあるのだが、こと「A」の領域についてはめっぽう弱い。

 つまり、日本的には「A」の官民連携基盤整備が必要な状況なのに対し、世界的には「STEM」の公的基盤整備の方が、喫緊の課題となっていたわけだ。

 なお、各国のSTEM教育の潮流については、以下に簡潔にまとめられているので、併せてご確認いただきたい。

出典:steAm, Inc.「21世紀の教育・学習」より

我が国の将来に“ポジティブ”になれない若者たち

 次に以下のデータをご覧いただきたい。日本財団が令和元年11月30日に発表した「18歳意識調査 – 国や社会に対する意識」の結果である。

出典:日本財団「18歳意識調査」第20回テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)より

 インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツと日本の17~19歳各1,000人を対象に、国や社会に対する意識を聞いた結果なのだが、我が国はいずれの項目においても9カ国の中で最下位となっていることがわかる。

 また、上記が「あなた自身について、お答えください。」という設問への回答結果であるのに対して、「自分の国の将来についてどう思っていますか?」に対する回答集計が以下となる。

出典:日本財団「18歳意識調査」第20回テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)より

 つまり、日本の将来が良くなると考える人が9.6%(約10人に1人)しかおらず、社会を自分で変えられると思ってる人が18.3%(約5人に1人)にとどまり、結果として国の将来に対する展望を持てない人が32.0%(約3人に1人)にものぼっていることが分かる。全て、この国の将来を担う若者たちが、だ。

クリエイティブ力の育成が不可欠

 もう一つ、別の側面からも見てみたい。経済産業省が実施した日本のオープンイノベーション(※)に関する調査のなかに、「競争力を維持するために、自社の経営モデルの抜本的な変革を率いていく準備はできているか」という設問があり、その回答の集計結果が以下となる。ここでも日本が最下位となっているわけだ。

出典:経済産業省「Society 5.0時代の オープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性」より

※オープンイノベーション:自社や自団体だけでなく、他社・大学・地方自治体・そのほかソーシャルセクターなど多種多様な異業種・異分野とコラボレーションし、各々が持つ技術・アイデア・サービス・データ・知識・ナレッジ等を組み合わせ、革新的なビジネスモデルや研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革、地域活性化、ソーシャルイノベーション等につなげるという、イノベーションの方法論のこと

 さらに別調査で、同じく経済産業省によるベンチャー企業支援策に関する調査結果があり、その中で「起業意識の国際比較」という統計調査結果によると、こちらでも日本のレーダーチャートの全体面積が著しく低いことがお分りいただけるだろう。

出典:中小企業庁作成資料「起業意識の国際比較」チャプターより

 起業や経営者になることが全てというつもりは毛頭ないが、このように、我が国にはイノベーションを起こす基礎となる「ビジョンを描く力」、すなわち「クリエイティブ力」の育成が不可欠な状況となっていることが、産業界のデータからも推測できる。

自己受容感を高めるためのSTEAM教育

 じゃあ日本ってもうダメなの?と聞こえてきそうなものだが、そんなことはない!

 日本には誇るべき「ものづくり」や「おもてなし」の文化があり、それらを実現する技術力とクリエイティビティを掛け合わせた独自の国力構造に対し、諸外国は大いにプラスの評価を与えてくれている。かつて『WIRED』日本版では、この領域を総じて「ウォームテック」と表現し、クールジャパンの次なる日本の魅力戦略として特集をしていたくらいだ。

 要するに、実力がないのではなく、「マインド(気持ち)」面でのネガティブ要素が大きいと言えるだろう。つまり、総じて「自信がない」のだ。

 だからこそ、若者の貴重な“学び”の場である教育現場において、従来から行われてきた理数教育ではカバーできない「自己受容力」を高める必要があるとの危機感から、創造性教育をプラスしたSTEAM教育への需要が大きく高まっていると言える。

STEAM教育を進める上で大切なこと

 では、STEAM教育とは実際にどのようなものなのか。ジャズピアニストであり数学者である中島さち子氏による経産省提示資料より紐解いてみる。(資料原本はこちら

※中島氏への当メディアインタビューはこちら

アートとデザインは21世紀の世界経済を変える

 中島氏によると、STEAMが提示する“学び”とは、「<知を創り出す>ことを自ら喜び、実感し、アイデンティティ(個性・自信)をもって主体的に体感する学び」であり、「創造の喜びやワクワク、ドキドキ、共感性」といったものが絶対条件になるという。

 そう、STEAM業界全体が「ワクワク」という言葉を最重要キーワードとして説いているのだ。

 もともと日本ではSTEM領域の教育、すなわち理数教育に力を入れてきた。例えば3年前のデータとなるが、2016年11月に国際教育到達度評価学会より発表された、世界50の国と地域が参加する国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の結果によると、我が国は全教科において5位以内に入っている。成績は非常に良いのだ。

出典:国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)における成績

 ただし、これらはあくまで「解くべき問題が設定されたものに対する回答」においてである。AIをはじめとするデジタルテクノロジーが高度に発達し、あらゆるデータが相互的に接続されて処理されるこれからの時代においては、数理モデルや科学的枠組み等は目まぐるしく変化していくだろう。

 だからこそ「設定された問題を解く力」だけではなく、「未来を描き出し、問いを立て、創造的な課題解決をする力」、すなわちアートデザインおよびリベラルアーツ領域の力が非常に重要だ、と中島氏は強調している。

 ちなみに、米国で「STEAM教育」の重要性を広めた第一人者は、前ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン学長であり、前MITメディアラボ副所長でもあるテクノロジストのジョン・マエダ氏だ。

“Art and design are poised to transform world economies in the 21st century just as science and technology did in the 20th century.”

(サイエンスとテクノロジーが20世紀の世界経済を変えたように、アートとデザインは21世紀の世界経済を変える)”

実践的で横断的な、多様性あふれる学び

 では、どのようなものがSTEAM教育になるかというと、学び手自身による五感を用いた「発見・試行錯誤・創造・共有・振り返り」のワクワクしたエコサイクルにあるという。

 自ら新しい発見をしたり、間違いを気にせずに試行錯誤を繰り返したり、創ったり、誰かと共有して誰かの心を揺り動かしたり。そうしたポジティブな学びのサイクルを、喜びを持って身体や心や脳をフルに使いながら体験する中で、自分なりの“知”を構築していく。その過程にこそ、学び手の「真の生きた学び」が生まれ、先述の「未来を描く力」や学ぶことへの喜び、そして自己受容感の向上(自信)へとつながっていくのだ。

出典:経済産業省「STEAM LIBRARY構想について」より

 これがないと進まない、という特定の教材があるわけではない。むしろ大切なことは、学び方の「デザイン設計」にある。中島氏は「STEAMの学びデザインの鍵」として、以下3つの要素を挙げている。

  • 誰しもがストレスなくプレイフルに取り組める、楽しさに溢れた学びから始まること(low floor;遊びの中に学びがあふれている)
  • 情熱があれば、さらに深みへ深みへと探究でき、冒険の喜びが深まっていくことができる余白があること(high ceiling)
  • 多様で個性的な表現・作品ができ、自己表現や多様な存在がいることの喜びを共有できること(wide wall)

 これを、昨今の日本教育における文脈で考えると、「実践的な学び」「横断的な学び」「多様性が溢れている」という3点へと言い換えることもできる。

 「実践的な学び」については、仕事現場や研究・開発現場など、リアルな現場とのリンクがあることが大切になる。本質的な本物の学び・創造・研究につながることこそ、真の創造の力、学びの喜び、アイデンティティ(自信・個性・自負心)、心の震え・感動(他の存在のために尽力するマインドセット)などが生まれてくるという。

 「横断的な学び」については、科目分断や文理分断の溝を超えて、一つの世界のみに閉じないことが大切になる。世の中の様々な事象を見てみると、例えば物理という一分野のみで解決できるものは、非常に限られている。本来的には様々な分野が分散ネットワーク的に相互関連するはずであり、学びにおいてもそうあることが望まれる。

 最後、「多様性が溢れている」については、こちらも昨今多くの領域でさけばれているダイバーシティの文脈に鑑みると、当然の要素と言えるだろう。世界には様々なものの見方があることを知り、自ら恐れずに新しい世界のものの見方を生み出し、その固有の喜び、アイデンティティ(自信・個性・自負心)や他者へのリスペクト(異なる多様な考え方があることへの尊敬や喜び)等を育む。それこそが、個性の発揮・や自由な創造の喜び、他者への尊敬へと自然とつながっていく。

STEAM教育を効果的に進めるためのPBLとIBL

 このようなSTEAM学習のスキームは、既存の教科学習の進め方でいきなり実現できるものではないだろう。中島氏は、STEAM教育を進める上での効果的な学習モデルとして、PBL(Project Based Learning:プロジェクト型学習・課題解決型学習)およびIBL(Inquiry Based Learning:問題探求型学習)の2つを挙げている。

 PBLとは、自ら問題を発見し解決する力を育む、プロジェクト型の学びのモデルのこと。学び手自身の自発性、興味・関心、能動性を引き出すことが先生・親の役割であり、助言者・ファシリテーター・共同研究者として学びのサポートをする。ここでは、正しい答えに早くたどり着き正しく解決することが重要なのではなく、「試行錯誤の過程の学び」が大切となる。こちらは20世紀初頭に、米国の教育学者であるジョン・デューイ(John Dewey)が初めて実践したとされる。

 またIBLとは、学び手の好奇心を掻き立てるところ、そして学び手自身が何かを不思議に思い、対象をより理解したいと思う主体的・能動的な探究の姿勢、好奇心から始まる学びのモデルのこと。自ら問いや仮説を立てて試行錯誤し、学びを深めるに連れてさらなる問いや仮説を立てながら、自らの考え方や自分なりの理解をその仮説を元に深めていき、試行錯誤の体験を通して新たな発見・研究を深めていく。故に、情報調査だけの学びとは性質的に異なるものとなる。

大人サイドのマインドセットも必要不可欠

 このPBLとIBLを駆使したSTEAM教育を推進するためには、その学びを提供する大人サイドの意識変容も重要な要素となる。

 これまで多くのSTEAM実践者にお話を伺ってきたが、彼ら彼女らが共通しておっしゃることは「大人自身がワクワクすること」とおっしゃっている。つまり、子ども達がワクワクしてSTEAMに向かうためには、先生方や親御さんが職業や知見としての専門家、研究者、科学者である必要はなく、各々の言葉の定義を大きく緩やかにし、誰しもが“気持ち”としてアーティスト、研究者、科学者、ひいては発明家であるとしてワクワクすることが大切なのである。

 またこちらはテクニックとなるが、STEAMのような知を創り出す学びの中においては、オープン・クエスチョン、すなわち二者択一の答えがない問いかけが、大変重要な役割を果たす。良いオープン・クエスチョンは子ども達によるSTEAMの学び(体験)を促し、時に新しい意味を与え、大いに広げてくれるものとなる。

 高度情報化社会の中、知識を持っていることは、創造的な知を育むための必要条件ではなくなった。先生や親御さん凝り固まったマインドセットを変え、創造の喜びを肯定し、期待し、自信・自負心などを持つ形(STEAM Mindset)に変化した時、子ども達の学んでいる姿を見る視点が変わり、彼ら彼女らが良きパートナー、ファシリテーター、共同研究者、共同創作者へと変わっていくこととなる。

我が国のSTEAM関連施策

 ここまで見てきたSTEAM教育実践に伴う「学びのルネッサンス」は我が国の行政府レベルでも強力に推進がなされている。中でも大きな動きを見せている文部科学省と経済産業省の取り組みについて、以下それぞれご紹介する。

Society5.0に向けた人材育成(文部科学省)

文部科学省は2018年6月に、これからの日本の学校現場における教育方針についての報告書「Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」を公開した。

出典:文部科学省ホームページ(概要版はこちら、詳細な本文はこちら

 Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを示す用語。これまで人類が経験してきた4つの社会、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において「我が国が目指すべき未来社会の姿」として、初めて提唱されたものである。

出典:内閣府「Society5.0」より

 報告書では、このSociety5.0時代という高度なデジタル社会の中で、人間がその強みを発揮しAI等を使いこなしていくためには、「文章や情報を正確に読み解き対話する力」や「科学的に思考・吟味し活用する力」、「価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力」が共通して求められるとしている。

 その上で、これらの力を育むためにも、学校がこれまで行ってきた「一斉一律の授業」のみならず個人の進度や能力等に応じた学びの場となること、そして同一学年集団の学習に加えて異年齢・異学年集団での協働学習が拡大していくことなど、「学びの在り方の変革」を打ち出している。

 より具体的な取り組む政策の方向性としては以下3点が列挙。

(1)公正に個別最適化された学びの実現

(2)基盤的な学力や情報活用能力の習得

(3)大学等における文理分断からの脱却

 特に一つ目の項目である「公正に個別最適化された学びの実現」に向けては、EdTech活用により取得可能となってくる「スタディ・ログ」を利用することで、子ども達一人ひとりに合った「学びのポートフォリオ」形成や、異年齢・異学年集団での協働学習における実践的な研究・開発の実施が記載されている。

 学校教育という、大きな変化が苦手な領域において、それを所管する省庁からこのような報告書が上がってきたことは、我が国におけるSTEAM教育浸透における大きな一歩であったと言えるだろう。

「未来の教室」(経済産業省)

 また、ほぼ時を同じくして、経済産業省の方でも教育改革に関する有識者会議「『未来の教室』とEdTech研究会」(以下、「未来の教室」)が、2018年1月より設置されており、毎年6月に提言としての発表がなされている。

 特に2019年6月に発表された第2次提言においては、初等中教育分野に焦点を絞っての内容となっており、具体的には「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」という3つの柱で構成され、その実現に向けて乗り越えるべき9つの課題とそれに対応するアクションについての提言になっている。

出典:経済産業省「未来の教室」ビジョン p4

 こちらの図にある通り、「知る」と「創る」をぐるぐると回していくことで、子ども達一人ひとりの“ワクワク”を醸成し高めていくという「学びのSTEAM化」を中心として、そこにEdTech等を活用しての「学びの自立化と個別最適化」を通じて誰も取り残さない学びの提供を実現し、そのためのICT環境や制度環境等といった「新しい学習基盤づくり」を進めていく、というビジョンである。

 提言内容としては多岐にわたるが、一つひとつに大きな意味と意義があるので、以下、各要点に応じた3つずつの課題とアクションについて、一表形式でまとめた。

※経済産業省「未来の教室」ビジョンの内容をもとに作成

2019年11月4日開催『Edvation x Summit 2019』内「未来の教室」中間報告セッションの様子

 こちら「未来の教室」は産官学連携した教育業界におけるニューウェーブとして、全国各地で大きなうねりとなっている印象だ。例えば2019年11月に開催された、デジタルテクノロジー活用による“教育”イノベーションをテーマにした国際カンファレンス『Edvation x Summit 2019』における「未来の教室」中間報告セッションには、会場目一杯の参加者が集まっており、その注目度の高さをうかがい知ることができる。

※浅野氏への当メディアインタビューはこちら

期待高まるSTEAMライブラリーとSTEAM学習センター

 STEAM教育では実に様々なコンテンツが教材となり得るが、そのような個別のコンテンツ開発のみならず、同様のコンテンツを用いて学ぶ子ども達が、学校間の壁を超えて協働的に学習し、コンテンツの開発や改良等にも参画できるような、一種のプラットフォームが構想されている。

 それが「STEAM LIBRARY(STEAMライブラリー)」というものだ。該当のプラットフォーム(当面はWebサイト)を訪ねると、世界中のSTEAM具体事例に出会える場所として設置されるもので、「未来の教室」における「学びのSTEAM化」アクションでも提示されている概念である。

出典:経済産業省「未来の教室」ビジョン p7

 具体的には、生徒や先生以外も含めた様々なステークホルダーにより作成された「知のコンテンツ」が動画ベースで用意されており、学びやアイディア、人、機会がプールされたマッチングの場としての機能も併せ持つ仕組みを想定している。

出典:経済産業省「未来の教室」ビジョン p7

 例えばこちらの、アメリカの公共放送PBSが運営する『learning Media』というWebプラットフォーム。様々な業種の企業が提供するSTEAM学習コンテンツと、それを学校の授業で使用する際の指導案、さらに該当する単元の一覧や発展学習のヒントも一覧性を持って掲載されている。イメージとしては、YoutubeとWikipediaを組み合わせたオンライン学習型メディア、といったところだろう。

 また、これだけ説明するとMOOCs(Massive Open Online Courses)、すなわち大規模公開オンライン講座の延長線にしか思えない方もいるかもしれないが、重要なのはその先。オフラインでの創造を通じた学びを得る場としての「STEAM学習センター」の構築である。

 これは、学習者同士だけではなく、企業・産官学・社会全体・地域など、様々な人や知と出会えるプラットフォームになることが期待されているものだ。

出典:経済産業省「STEAM LIBRARY構想について」より

 コミュニティやファシリテーターによる各種オフラインアクティビティを通じて、知の循環が創出される仕組みであることがお分りいただけるだろう。

STEAMは教材を問わない、世界共通の教育メソッド

出典:little bins little handsより

 ここまで見ると、STEAM教育を進めるには大規模な基盤開発と政府レベルでのシステム整備が必須で、とにかく時間がかかると感じられるかもしれない。だが、思い出してほしい。STEAMとは、ワクワク・ドキドキする好奇心を起点に知を創り出す学びのことである。大それたプラットフォームが未整備であったとしても、STEAMはいつでもどこでも実践可能で、あなたの日常生活にあるものがそのまま教材になり得る。

 当メディアでも、ご家庭に置いてあるようなものを材料にしたSTEAM教育の実践例を、「実践!STEAM」という記事カテゴリーでご紹介している。ぜひこちらもご覧いただきたい。

 STEAMは教材を問わず、世界共通の教育メソッドであることがお分りいただけるだろう。

STEAM教育から始まる「学びのルネサンス」に向けて

 STEAM教育は学習者のみならず、その周りにいる全ての方にとっての大きな「学びの生み出しと循環」の潮流だ。これまでの我が国における教育や学びへの「常識」なるものに疑問を持ち、一つずつ共創と協働を経て、あるべき姿へと昇華させていく。

 その過程こそがSTEAMプロセスであり、単純な再定義やアップデートではない、かつてヨーロッパで勃興した文化運動としての“ルネサンス”を想起させてくれるだろう。

 この記事にピンと来られた方は、ぜひ一緒にワクワクしようではないか。