2025.12.09│STEAMレポート

魚津高校 STEAM×データサイエンス特別プログラム レポート

― モヤモヤから始まる「STEAM×データサイエンス」の地域探究のはじまり ―

プログラム実施背景

富山県立魚津高等学校では、総合的な探究の時間を活用して、これまでも地域探究をテーマにした活動を進めてこられました。今回、その地域探究に、「学びのSTEAM化」や「データサイエンス活用」といった新しい視点を取り入れたいというご相談をいただき、10月22日と11月5日の2日間、合計4コマの授業時間にわたり、1年生を対象に「STEAM×データサイエンス特別プログラム」を実施しました。

この2日間の目標は、「自分たちの住む街・魚津へのモヤモヤを出発点に、ありたい未来を描く」。としました。

2日間・全4コマの中で、生徒たちは自らの違和感(モヤモヤ)を言語化し、データをもとに課題を見つけ、スッキリ(ありたい姿)を描く探究型ワークに、取り組みました。

Day 1:モヤモヤから問いを立てる

初回は、STEAM教育の必要性や探究活動とデータサイエンスの関わりなどを説明した後、事前に1年生全員に回答いただいた、魚津市の総合計画をもとに作成されたアンケート結果を共有しました。

魚津市のこれからをまとめた総合計画から「公共交通」「まちのにぎわい」「健康・福祉」「情報発信」など13テーマに分け、アンケートの回答情報から近い意識を持った生徒同士でグループを編成し、自分たちが日頃感じている“モヤモヤ”を共有し、その背景を深掘りしていきました。

グループごとに「モヤモヤはなぜ生まれるのか」「それが起こる理由はなぜなのか」など、深掘りし、「どうなればスッキリするのか?」という、モヤモヤ状態とスッキリ状態を考え、グループ毎に、整理しまとめました。

生徒からのモヤモヤ→スッキリ例:

  • 「魚津駅前で若者が遊べる場所がない」
    →「高校生が気軽に集まれる活気ある駅前にしたい」
  • 「高校生の移動手段が限られて不便」
    →「レンタサイクルをもっと手軽に使えるようにしたい」

Day 2:データで深め、ありたい姿を描く

2日目は、データサイエンス基礎の体験からスタートしました。但し、すでに表や数字の読み取りについては、事前プログラムにて学習していた点もあったので、今回は、公開等されているデータや自身らでとったアンケートからどのように情報を整理分析するのかを体験してもらうプログラムを実施しました。

Excel/CSVデータから、Google colaboratoryなどを使い、平均・相関・分散などの関数を通してデータから価値を見つけ、「根拠に基づく探究」の重要性を学んでもらいました。
※データサイエンス基礎のプログラムに関しては、東京学芸大学こども未来研究所が作成したプログラムを実施しました。

また、生徒の皆さんには、今後の探究の中で、特に、「データから考える探究(Data-Driven)」と「問いからデータを探す探究(Question-Driven)」の2つの思考を意識してほしい点を伝えました。そして、自身の感覚だけではなく、データに基づいて論理的に考える力について考えてもらいました。


データサイエンスの視点は、今後の探究活動の中で、「データサイエンスが探究を深めるツールになりうる」という実感を得られたかと考えています。

プログラム最後の時間では、Day1で自分たちの考えた”スッキリ”をありたい姿として描き直し、そのありたい姿を考えていくために必要な問いを考えました。また、時間の許すグループに関しては、現時点での自分たちの描いたありたい姿をイラストに表現する活動にも挑戦してもらいました。

魚津高校からのコメント

富山県立魚津高等学校
探究活動推進コーディネーター・DXハイスクール担当
関野早紀 先生

<富山県立魚津高等学校 関野早紀 先生>

探究活動のプロセスの中でも、特に難しいと感じていたのが「課題設定」や「問い出し」のフェーズでした。これまでは、問いが深まらないまま走り出してしまったり、課題の曖昧さを抱えたまま活動を終えるケースもあり、

①テーマ設定の具体化
②探究が“自分ごと”になりきらない
という2つの課題を抱えていました。


今回の学習プログラムは、その2点に対してとても有効に機能していたように感じます。

当初は、担当者としてどうやって問いを深めさせるかばかりに意識が向いていました。しかし「ありたい姿」や理想の状態を丁寧に描いていくほどに、現状とのギャップの輪郭が自然とはっきりし、課題が浮き彫りになり、次々と新しい問いが生まれていく──そのプロセスを、生徒の変容を通して初めて実感を伴って理解することができました。
課題を“設定する”のではなく、課題が“立ち上がってくる”感覚に近く、新しいアプローチを学ばせてもらった思いです。

また、クラスによってはイラスト化まで到達しなかったものの、「具体化する」という目的に向けて、グループ内でキーワードの定義や前提を問い直し、捉え直す作業を繰り返す中で、曖昧だったテーマが徐々に輪郭をもち、問題の構造が見えてくる手応えがありました。メンバー間の認識のずれも解消され、探究の方向性がぶれにくくなる効果を強く感じました。

生徒たちは日々の学習や部活動で忙しく、日常のまちや社会に思考を巡らせる余裕がありません。気づかないうちに固定化された見方・考え方に縛られてしまうことも少なくありません。そんな中で、曖昧さやモヤモヤから出発し、概念をほぐして再構築する今回のプロセスは、探究活動に限らず、あらゆる教科に通じる大きな価値があると感じました。

さらに今回はGoogle Colaboratoryに触れ、最先端の情報活用技術にも触れられました。これからの探究には、情報を読み取り、処理し、分析し、適切に発信していく力が欠かせません。データを味方につけ、自分の主張を裏づけていく経験を早い段階で積むことの重要性を改めて感じました。

「ありたい姿からの探究」というアプローチは、生徒にとっても教師にとっても、大きな意味のあるプログラムだったと感じています。

プログラム担当 STEAM教育コーディネーター 廣部コメント

2日間4コマの授業実施でありましたが、魚津高校の皆さんと一緒に「これからの魚津」を考える、探究の入り口には立てたのではないかと感じています。生徒自身がモヤモヤすることを出発点とすることで、自分事となったテーマが導きやすくなっているかと思います。

今後、生徒の皆さんが年度内の活動を進めるにあたり、今回描いた「ありたい姿」を各グループにおける方向性として、主体的に探究活動に挑戦してもらえたらと思います。

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