世界のSTEAM人材

2019.11.01

【STEAM-JAPAN 巻頭インタビュー】 アーティスト・スプツニ子!氏 『未来を切り拓くための、クリエイティビティ』

さらなる答えのない時代に突入する、次世代。我々は、どう生きて、どんな力を備えればいいのか。現役大学生たちが、次世代を代表するアーティスト・スプツニ子!氏に直球インタビューを行なった。

(インタビュアー:首都大学東京4年 町田翔 ・ 東京大学3年 根本崚佑)

− スプツニ子!氏 Profile –

スプツニ子!1985年東京都生まれ。東京大学生産技術研究所特任准教授。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で修士課程を修了。2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・フィクション研究室を主宰し、2017年より現職。RCA在学中より、テクノロジーによって変化する社会を考察・議論するデザイン作品を制作。最近の主な展覧会に,「Japanorama」(ポンポドゥー・メッツ,フランス)、「NEW SENSORIUM」(ZKMアートセンター,ドイツ)など。VOGUE JAPAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013受賞。2016年 第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」受賞。2017年 世界経済フォーラムの選ぶ若手リーダー代表「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。2016年4月よりスーパープレゼンテーション(NHK)のMCを務める。著書に「はみだす力」

夢中でモノを作っていた幼少期

町田
「スプツニ子!さんは、数学や科学やプログラミングを幼少期から学ばれていたとのことですが、何歳くらいからそれらに触れていましたか?

スプツニ子!さん (以下スプさん)
「親が数学者ということもあって、ラッキーなことにもともとにコンピューターがあったんですよ。それで親がパソコンを使ってない時に、パソコンで絵を描いていいよって言われて触り始めたのが6歳でしたね。あと、テレビに接続してアニメを作るおもちゃをやっていました。コードじゃなくてインターフェース上でつくるプログラミングみたいな。いろんな幾何学を組み合わせて汽車とか作っていました。」

町田
「小さい頃からある程度整った環境で育っていたんですね。今振り返ってみて、幼少期からパソコンや数学に触れていて良かったことはありますか?」

スプさん
「やっぱりパソコンがあるとモノを作る環境が整っているから、昔から自分でモノを作るっていう意識があって、夢中で何かを作れたっていう感じかな。」

町田
「昔から何かを作ろうというクリエイティブな気持ちがあったんですね。」

スプさん
「そうですね。あと女の子用のおもちゃってだいたいピンク色だし、プリンセスものとか同じようなものばっかりで貰っても全然嬉しくないし、つまんないじゃないですか。だから私はバービー人形とか貰った時は全部分解して付け替えたりして、作る楽しさを小さい頃から育んでいましたね。」

今後求められる、適正な問題提起×クリエイティブなアイデア力

町田
「スプツニ子!さんは様々なアート作品を作られていますが、アート×サイエンスやアート×テクノロジー等、STEAMの掛け算が持つ力はどのように実感しましたか?」

スプさん
「テクノロジーのことを勉強すればもちろんエンジニアリングが出来るんだけど、そこでアートやデザインのことが分かっていると、もっとクリエイティブなアイデアが生まれやすくなるんですよね。学校の勉強って、過去に起きたことを学んでそれをテストで答えるっていう流れじゃないですか。でも世の中を動かすには過去をどれくらい暗記したのかよりも、全く分からない未来に向けてどうやって物事を積み重ねて、新しいプロダクトや仕組みを生み出していくかっていうのが大事になってくるんですよ。」

町田
「今後、AIが発達していくと、様々な仕事がAIに取って代わられると思うのですが、そのような未来を見据えて、今後どのようなことを学ぶことが望まれると思いますか?」

スプさん
「その解決策は明確で、AIっていうのは与えられたゴールに向かって最速で解決していくものなんですけど、AIってゴールを設定できなくて、誰かが課題やゴールを与えてあげなくちゃいけないんですよ。だから、どんな課題や問題があるのかということを考えられる人にならなきゃいけないんです。何が良いのか・悪いのかって時代によって基準が違うんですけど、AIって過去の基準でしか決めつけることできないんですよ。今後は、AIが出来ない、何が良くて何が悪いかの判断・そして問題提起ができるようにならなきゃいけないと思います。」

STEAMで育まれる、何かをつくりたいという気持ち

町田
「ありがとうございます。一つ疑問に思ったのですが、僕はデザインや数学が好きな一方、プログラミングがどうしても好きになれませんでした。僕のように、STEAMの中でどうしても苦手なものがある人って少なからずいると思うんですが、苦手意識を持たないようにするにはどのような手段を取ればいいと思いますか?」

スプさん
「私はみんながみんな、全て得意である必要はないと思っていて、作ることが楽しいっていう気持ちを持ち続けていることが大事だと思うんですよね。もしプログラミングが出来なかったら誰か出来る人に任せればいいと思うんですよ。例えば、自分はプログラミングが出来ないからプログラミングが出来る人を引っ張ってこれるコミュニケーション能力をつけるようになろう、とか。STEAM教育でまんべんなく学ぶのはもちろん大事なんですけど、根幹に大事なのは、新しく何かを生み出したいという気持ちを育てることなんじゃないですかね。」

町田
「何かを生み出したいという熱い気持ちとコミュニケーション能力があれば何とかなるということですね。」

スプさん
「そうですね。あとはアイデアとポジティブなマインドセット。情熱や好奇心も必要ですね。」

STEAM教育の在るべき姿とは

町田
「これからの時代を担う子供たちが受けるSTAM教育はどう在るべきか、スプツニ子!さんの考えを教えて頂いてもよろしいでしょうか。」

スプさん
「STEAM“教育“っていうと、まるで教えているみたいですけど、アイデアを形にするということとSTEAMって直結しているので、勉強しているって思っていたらSTEAM教育って上手くいかないと思います。社会の一員としてモノを作っているんだっていう気持ちを10代から持つことがSTEAM教育の最短距離なんじゃないかなとおもいます。」

町田
「ありがとうございます。スプツニ子!さんがクリエイティビティを養うために心掛けていることを教えていただけますか?」

スプさん
「とにかく色んな経験をして沢山の情報に触れてインプットすることですね。ある分野ばっかりに集中していたら視野が狭まっちゃうし。いろんなデータに触れるからこそ理解が深まっていくと思います。」

この世は解決すべき課題で溢れている

町田
「スプツニ子!さんが活動していく中で、軸としてあるものって何ですか?」

スプさん
「デザインとかテクノロジーで人の価値観を変革して前に進めることですね。何を成し遂げたいか、を常に考えていますね。」

町田
「自分の身近なことに課題意識を持ったり、自分事として捉えられるかということが、自分で未来を作っていくという視点を持つ分け目だと思うのですが、そういう視点は先天的なものなのか、後天的に身についていくものなのか、どっちだと思いますか?」

スプさん
「私はハーフだったから昔いじめも受けたし、イギリスに比べて日本は女性差別があるのを知っていたから、与えられた世界が必ずしも正しくないっていう直感はありましたね。そこから、直感的に、何かを見た時に何か問題があるんじゃないかって自然と考えていましたね。でもほとんどの人が社会には課題が満ち溢れていることに気づいてないですよね。逆境にいなくても自然とそういう考えが身につくかは、逆に私が気になりますね(笑)」

町田
「僕の場合、自分の小さい頃の記憶をたどると、絵本を自分で描いたり、フィギュアを与えられたときに自分でストーリーを立てるのが好きだったんですよね。そうしていると世の中の物事を文脈として捉えるようになりました。」

スプさん
「たしかに、自分で経験して、“共感”出来るようになる。これが大事だなって思います。­­­共感して初めて、課題を見つけて、解決に向かって進むことが出来ますよね。STEAMと共感、これがこの先必要になってくると思います。」

( 学生ライター:町田翔 / 写真:山田憲史 )