【STEAM-JAPAN 巻頭インタビュー】 アーティスト・スプツニ子!氏 『未来を切り拓くための、クリエイティビティ』

さらなる答えのない時代に突入する、次世代。我々は、どう生きて、どんな力を備えればいいのか。現役大学生たちが、次世代を代表するアーティスト・スプツニ子!氏に直球インタビューを行なった。

(インタビュアー:首都大学東京4年 町田翔 ・ 東京大学3年 根本崚佑)

− スプツニ子!氏 Profile –

スプツニ子! 東京都生まれ。アーティスト。東京藝術大学デザイン科准教授。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で修士課程を修了。2013年からマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・フィクション研究室を率いた。東京大学大学院特任准教授を経て、現職。
RCA在学中より、テクノロジーによって変化する社会を考察・議論するデザイン作品を制作。最近の主な展覧会に2021年「deTour 2021 Design Festival」(香港)、2019年「未来と芸術展」(森美術館)、「CooperHewitt デザイントリエンナーレ」(クーパーヒューイット、アメリカ)、「BROKEN NATURE」(第22回ミラノトリエンナーレ,伊)
VOGUE JAPAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013受賞。2016年 第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」受賞。2017年 世界経済フォーラムの選ぶ若手リーダー代表「ヤング・グローバル・リーダーズ」、2019年TEDフェローに選出。著書に『はみだす力』。共著に『ネットで進化する人類』(伊藤穣一監修)など。

夢中でモノを作っていた幼少期

町田

「スプツニ子!さんは、数学や科学やプログラミングを幼少期から学ばれていたとのことですが、何歳くらいからそれらに触れていましたか?」

スプさん

「親が数学者ということもあって、ラッキーなことにもともとにコンピューターがあったんですよ。それで親がパソコンを使ってない時に、パソコンで絵を描いていいよって言われて触り始めたのが6歳の時でした。あと、テレビに接続してアニメを作るおもちゃをやっていました。コードじゃなくてインターフェース上でつくるプログラミングみたいな。いろんな幾何学を組み合わせて汽車とか作っていました。」

町田

「小さい頃からある程度整った環境で育っていたんですね。今振り返ってみて、幼少期からパソコンや数学に触れていて良かったことはありますか?」

スプさん

「パソコンがあるとモノを作る環境が整っているから、昔から自分でモノを作る意識があって、夢中で何かを作れたっていう感じです。」

町田

「昔から何かを作ろうというクリエイティブな気持ちがあったんですね。」

スプさん

「そうですね。あと女の子用のおもちゃってだいたいがピンク色だったし、プリンセスものとか、同じようなものばっかりで貰っても全然嬉しくないし、つまんないじゃないですか。だから私はバービー人形とか貰った時は全部分解して付け替えたりして、つくり変えちゃうタイプの子でした。」

今後求められる、適正な問題提起×クリエイティブなアイデア力

町田

「スプツニ子!さんは様々なアート作品を作られていますが、アート×サイエンスやアート×テクノロジー等、STEAMの掛け算が持つ力はどのように実感しましたか?」

スプさん

「テクノロジーのことを勉強すればもちろんエンジニアリングが出来ますが、そこでアートやデザインのことが分かっていると、もっとクリエイティブなアイデアが生まれやすくなると思います。学校の勉強って、過去に起きたことを学んでそれをテストで答えるっていう流れが多いじゃないですか。でも世の中を動かすには過去を参考にしつつも、まったく分からない未来に向けてどうやって物事を積み重ねて、新しいプロダクトや仕組みを生み出していくことが大事になってきます。」

町田

「今後、AIが発達していくと、様々な仕事がAIに取って代わられると思うのですが、そのような未来を見据えて、今後どのようなことを学ぶことが望まれると思いますか?」

スプさん

「その解決策は明確で、AIっていうのは与えられたゴールに向かって最速で解決していくものなんですけど、AIってゴールを設定できなくて、誰かが課題やゴールを与えてあげなくちゃいけないんですよ。だから、どんな課題や問題があるのかということを考えられる人にならなきゃいけないんです。何が良いのか・悪いのかは、時代によって基準が違いますが、AIって過去の基準でしか決めることできないんですよ。今後は、AIが出来ない、何が良くて何が悪いかの判断・そして問題提起ができるようにならなくてはいけないと思っています。」

STEAMで育まれる、何かをつくりたいという気持ち

町田

「ありがとうございます。一つ疑問に思ったのですが、僕はデザインや数学が好きな一方、プログラミングがどうしても好きになれませんでした。僕のように、STEAMの中でどうしても苦手なものがある人って少なからずいると思うんですが、苦手意識を持たないようにするにはどのような手段を取ればいいと思いますか?」

スプさん

「私はみんながみんな、全て得意である必要はないと思っていて、作ることが楽しいっていう気持ちを持ち続けていることが大事だと思うんですよね。もしプログラミングが出来なかったら誰か出来る人に任せればいいと思うんですよ。例えば、自分はプログラミングが出来ないからプログラミングが出来る人を引っ張ってこれるコミュニケーション能力をつけるようになろう、とか。STEAM教育でまんべんなく学ぶのはもちろん大事なんですけど、根幹に大事なのは、新しく何かを生み出したいという気持ちを育てることなんじゃないですかね。」

町田

「何かを生み出したいという熱い気持ちとコミュニケーション能力があれば何とかなるということですね。」

スプさん

「そうですね。あとはアイデアとポジティブなマインドセット。情熱や好奇心も必要ですね。」

STEAM教育の在るべき姿とは

町田

「これからの時代を担う子供たちが受けるSTAM教育はどう在るべきか、スプツニ子!さんの考えを教えて頂いてもよろしいでしょうか。」

スプさん

「STEAM“教育“っていうと、まるで教えているみたいですけど、アイデアを形にするということとSTEAMは直結しているので、勉強していると思っていたらSTEAM教育は上手くいかないと思います。社会の一員としてモノを作っているんだっていう気持ちを10代から持つことがSTEAM教育の最短距離なんじゃないかなとおもいます。」

町田

「ありがとうございます。スプツニ子!さんがクリエイティビティを養うために心掛けていることを教えていただけますか?」

スプさん

「とにかく色んな経験をして沢山の情報に触れてインプットすることですね。ある分野ばっかりに集中していたら視野が狭まっちゃうし。いろんなデータに触れるからこそ理解が深まっていくと思います。」

STEAMと共感

町田

「スプツニ子!さんが活動していく中で、軸としてあるものって何ですか?」

スプさん

「デザインとかテクノロジーで人の価値観を変革して前に進めることですね。何を成し遂げたいか、を常に考えていますね。」

町田

「僕の場合、自分の小さい頃の記憶をたどると、絵本を自分で描いたり、フィギュアを与えられたときに自分でストーリーを立てるのが好きだったんですよね。そうしていると世の中の物事を文脈として捉えるようになりました。」

スプさん

「たしかに、自分で経験して、“共感”出来るようになる。これが大事だなって思います。­­­共感して初めて、課題を見つけて、解決に向かって進むことが出来ますよね。STEAMと共感、これがこの先必要になってくると思います。」

(学生ライター:町田翔 /写真:山田憲史)

カテゴリ:世界のSTEAM教育