STEAMの本質を「体感」して欲しい|U-NEXTでアニメ「STEAMO!」配信スタート!

どこを向いてもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波が押し寄せている昨今。私たちはあらゆる側面において、日々変わりゆく社会へと“対応”し、中長期的なスパンで“適応”することが求められています。この「大変革時代」を存分に楽しめるか、それとも今までのやり方に固執してどんどんと苦しくなっていくか。その違いは、担い手である私たち一人ひとりのマインドの在り方によって決まってくるでしょう。

そんな「ポジティブな未来」の担い手を一人でも多く増やすべく、日々情報を発信しているSTEAM JAPANでは、この度新たな取り組みとして「アニメ」へと参入します。その名は「STEAMO!」(2022年2月25日よりU-NEXTにて配信スタート)。6体のユニークなキャラクターと共に、世の中の様々なものに対する素朴な疑問を探究して技術や仕組みを発見し学んでいくという、STEAM教育(※)を身近に感じられる映像教材です。

©︎STEAMO製作委員会

どのような思いと背景をもって、この「STEAMO!」は作られていったのか。今回は、その企画者であるSTEAM JAPAN編集長の井上祐巳梨(いのうえ ゆみり)さんと、 STEAM事業部統括責任者兼海外事業部の松下紗由美(まつした さゆみ)さんにお話を伺いました。

※「STEAM教育」の概要については、以下の記事をご覧ください。

STEAM教育ってなに?ワクワクを軸にした次世代の“学び”を解説【保存版】

産官学、様々なプレイヤーと連携してSTEAMを推進した2年間

STEAM JAPAN編集長 / 株式会社Barbara Pool 代表取締役 井上祐巳梨


--私(インタビュアー)が最後にお二人にお話を伺ったのが2020年1月に配信した「STEAM JAPAN編集長就任インタビュー」なので、丸2年ほど間が空いたことになります。この間もWEBサイト「STEAM JAPAN」を日々拝見していて、本当に様々な取り組みをされているなと感じています。

井上:ありがとうございます。おかげさまで産官学、様々なプレイヤーの皆さまと連携させていただき、STEAM教育を起点とする取り組みを広げていくことができています!

--色々な自治体さんと連携されている様子は、Facebookページの投稿で拝見しました。

井上:この2年間で、大分県や三重県、兵庫県加西市、群馬県、東京都港区、佐賀県有田町、徳島県徳島市など、複数の自治体でSTEAM教員研修やSTEAMプログラム、STEAM探究講座などを実施させていただいています。全国に取り組みが広がってきている実感がありますね。他にも行政領域だと、例えば「令和2年度 経済産業省『「未来の教室」STEAMライブラリ事業』」において、SDGs 6番「水」をテーマにしたオリジナルコンテンツ『STEAMシリーズ:「水(Water)』の開発をするなど、その他プロジェクトでも各省庁から民間事業者まで、幅広く取り組みをご一緒しています。

--それこそ、「STEAM教育」はEdTech(Education × Technologyの造語、読み方:エドテック)の次くらいにバズワードとして急速に広がっていますよね。

井上:おっしゃる通り、多くの業界関係者の中で「STEAM教育」の有効性が認識されてきている実感があります。このようなフェーズだからこそ、「手段が目的化」しないように改めて意識することが重要だとも強く考えています。

ここで改めて問いたい「STEAMの本質」

--「手段が目的化」ということで、具体的にはどういうことでしょうか?

井上:あらゆる産業に言えることなのですが、何か分かりやすい言葉がバズワード的に広がると、それが表層的に捉えられてしまい、本質的な意義が置いていかれた状態で活用されるということが往々にして発生します。

--あぁ、例えば「DX」なんてまさにそんな感じですよね。デジタル技術を活用したトランスフォーメーション(変革)レベルでの取り組みこそがDXの真髄だけど、そこまでの中長期的なビジョンや計画へと落とし込まれていない単なるデジタイゼーションゼーションも「弊社はDXをやっています」みたいな。

井上:極端な話だとそういうことですね。STEAM教育は「実践」にこそ、その本質があります。でも世の中を見渡してみると、実践なき「見てくれだけのSTEAM」の取り組みが多くなってきていることも事実です。メソッドとして捉えられることが多いので、どうしても提供者である事業者のサービスにフォーカスされることが多いのですが、本質的には受け手である子ども達が「実際に何をしたのか」という部分が重要です。だからこそ、私たちは「STEAM人材」にフォーカスを当て、2020年から「STEAM JAPAN AWARD」(​​後援:文科省)という取り組みを継続しているわけです。


(画像上)STEAM JAPAN AWARD 2020(画像下)STEAM JAPAN AWARD 2021

--STEAM JAPANがこの「実践」を特に強く意識されているのは、率直になぜなのでしょうか?

井上:これは編集長就任インタビューでもお伝えしたことなのですが、STEAM JAPANの母体である弊社・Barbara Poolがこれまで取り組んできた「地方」でのプロジェクトを通じて、強くその必要性を感じたからです。

弊社では、地域課題をクリエイティブや横断したスキルで解決していくという観点で自治体主催の『クリエイティブ実践カレッジ』や『クリエイティブラボ』を企画運営しており、「どうしたら一つひとつの地域が、地域独自の色を出せるようにするか」を考えながらカスタマイズ提供しています。

でも、全ての自治体で私たちが伴走してこれを実践するのは不可能です。より自律的に地域が走って取り組んでいくためには、中長期的な目線で「地域の将来を担う子ども達への教育」が必要であり、その手段としてSTEAM教育に着目したわけです。


草加市との協働で開催されている「SOKA CREATIVE LAB」。
地元クリエーターさんと地元企業さんとの新しい共創の場をつくり、クリエイターのスキルアップを目指していく「実践型」のプロジェクト。

--まさに、手段としてのSTEAMというわけですね。

井上:はい。地域の人材育成で使えるフレームワークの一つがSTEAM、という考え方です。地域の課題をしっかりと抽出し、自分たちでその内容を判断し、アウトプットまで自分たちでやるという練習をしていただく。そのプロセスを積み重ねることで、自分たち自身の課題を解決できる人材に育ってほしいのです。STEAM教育自体は欧米で始まった流れではあるのですが、こと日本においては地域の未来を担うという観点でとても重要な手段だという仮説のもとで、私たちの発信メディアも「STEAM JAPAN」という名前にしています。子ども達へとしっかり落とし込んでいく。そんな形でSTEAM教育を推進していきたいと考えています。

保護者には、新たな教育のあり方を丁寧に啓発していく必要がある

--教育業界の中では「STEAM教育」という言葉は広く認知されてきていると思うのですが、私たち一般消費者の中では実際どうなのでしょうか?

井上:これについては弊社の方で今月、実際に調査を行ってみました。1都3県で5〜15才のお子さまがいる人500名に対して行ったものなのですが、「STEAM教育を知っているか?」という質問に対しては、聞いたことがある人が全体の30%弱で、その中で実際に教育に取り入れている人は3.4%でした。

(STEAM JAPAN独自 WEB調査・子どもと同居している首都圏25〜69歳男女500名・2022年2月調査より)

--まだ一般認知はこんなものなんですね。

井上:そうなんです。一方で、「現在の日本の教育に対する不安」を聞いてみると、こちらに示したように依然として高いままなんです。

(STEAM JAPAN独自 WEB調査・子どもと同居している首都圏25〜69歳男女500名・2022年2月調査より)

井上:そして、STEAM教育についての説明をお見せした方々に対しては、半分近くの人が興味を持ち、また7割近くの人が子どもの将来にとって必要な教育だとも感じたことが明らかになりました。
(*別途、2020年には約7000サンプルに調査したデータがあります。詳細はこちら

(STEAM JAPAN独自 WEB調査・子どもと同居している首都圏25〜69歳男女500名・2022年2月調査より)


--認知がなされていないだけで、その存在を知ると教育に取り入れたい人がたくさんいるということですね。

井上:そういうことです。親御さんは当然ながら、STEAMを軸に教育を考えているわけではなく、お子さまにとって最適な教育を日々模索されていると思います。だからこそ、STEAMというワードの有無にかかわらず、新たな教育のあり方を丁寧に啓発していく必要があると考えています。

世の中の「素朴な疑問」を探究して、その裏にある技術や仕組みを学べるアニメ

STEAM事業部統括責任者兼海外事業部 松下紗由美

井上:このように、保護者に対して「新しい教育のあり方」の認知を広げる必要があると感じたことから、今回、新たに一般の方々向けにアニメを制作・配信することとなりました。それが「STEAMO!」です。こちらについては、事業責任者である松下の方からご説明します。

--いよいよ、アニメ制作も始められたんですね。

松下:こちら、2022年2月25日からU-NEXTで配信スタートするものです。子どもは探究心が本当に旺盛だし、チャレンジ精神もあって、色々なことを知りたいやってみたい・つくってみたい、知りたいと思う気持ちが強くあります。それにもかかわらず、いわゆる一般的な教育では、それらを押さえつけるようなことが行われているのが正直なところです。そして後になって、中学校・高校になってから「あなたは何をやりたいのか?」と問うているという。そんなことをグルグルとやっているのが今の教育の現状だと言えます。

©︎STEAMO製作委員会
©︎STEAMO製作委員会

6体のユニークなキャラクターと一緒に学んでいく形でストーリーは進んでいく

--そう考えると、なんだかものすごく無駄で悲しいことをやっている感じですね。

松下:もちろん、そうでないケースも沢山あるでしょうが、もっと子ども達の内から湧き出る“なぜなぜ”に丁寧に答えてあげることがとても大切だと思っています。だから、誰でも観ることができる動画プラットフォームで、世の中の色々な事象に対する「素朴な疑問」を探究して、その裏にある技術や仕組みを学んでいけるような内容で構成しています。

--具体的にはどんなストーリーがあるのでしょうか?

松下:例えば第1話では「タイヤがなくなったらどうなるの?」というテーマのもとで、タイヤが自動車を動かすために必要な「摩擦」の力を学習したり、車輪とタイヤのこれまでとこれからについて考えていけるような内容になっています。こちらは実際のF1レースのエンジニアの方と、トピックから一緒に考えています。

©︎STEAMO製作委員会
第1話「タイヤがなくなったらどうなるの?」より。

--そんな大物の方と一緒に連携して作っているんですね!

松下:物語は全部で8話あるのですが、どの回でも社会の第一線で活躍されている方に監修者として入ってもらっています。他にも、グローバルな目線で子ども達が楽しめるように事前に海外の子ども達に観てもらって反応を確認したり、テーマ的に伝えたいポイントを毎回挿入歌にメッセージとして入れ込んだりして、とにかく「考える」ためのフッキングになるポイントをちりばめるようにしています。

--それにしても、なぜ「アニメ」なのでしょうか?

井上:STEAM教育の本質を伝えるには様々なアプローチがあると思うのですが、その中でもアニメというのは、特に幼少期に影響があると感じているからです。

--確かに、僕の娘もずっと鬼滅の刃の音楽を聴きながら踊っていますね(笑)

井上:まさにそんな形で、アニメコンテンツは幼少期の人格形成にすら大きく関わってくるケースがあると思います。だからこそ、この時点で「探究心」を肯定するという習慣に触れさせてあげることが、結果として中長期的な自律したSTEAM人材への成長に大きく貢献できるだろうと考えて、今回のようなアニメの形でご提供しています。

実践をお手伝いする「STEAM Activityキット」も同時リリース


--これは僕の育児経験で感じていることなのですが、テレビとかで“何か創る系”のコンテンツを見た時に、「これ、やってみたい!」と言われることがとても多いです。実際に「STEAMO!」を見た後に、アクティブ・ラーニング的に学べるような仕組みはあるのでしょうか?

井上:「実践」の部分をお手伝いするものとして、「STEAM Activity Card(STEAM アクティビティ・カード)」というものをご用意しています。こちらは以前、STEAM JAPANでもご紹介したもの(注釈:当時は法人向けのみ)なのですが、今回の「STEAMO!」配信開始を記念して、「STEAMO!」の紙の絵本とセットにした「STEAM Activityキット」として、「創り出す」学びにつながるようにしています。

Activity Cardは全部で25枚あり、全てのアクティビティには身に着くスキルや難易度などが記載。
子どもに投げかける質問や応用ポイントなども記載されている

松下:こちらは、「STEAMO」のU-NEXT配信開始記念のクラウドファンディングでお申込いただけるようになっています。

クラウドファンディングのリターンとなっている「STEAM Activityキット」の内容例

--これは子ども達が喜びそうですね!まさに、「STEAMが大事だからSTEAMをやりましょう」ではなく、「自ら創り出す体験が超大事だからSTEAMを活用してみましょう」という考え方というわけですね。

井上:そういうことです。冒頭にお伝えしたとおり、STEAMはあくまで手段であって、目的にはなり得ません。誰よりもSTEAM教育のことを考えて発信をしている私たちだからこそ、ここは改めて強くお伝えしたいなと思っています。

今回のアニメやActivityキットなどをきっかけとして、ぜひ「創ることの実践環境」を子ども達の身の回りに整えていただけたらと思います。

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(聞き手:長岡武司)

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