【日本】日本と欧米の教員環境の国際比較〜世界最長の勤務時間?〜

近年日本では教員の長時間労働、多忙化の深刻さが全国各地で問題となっており、労働環境の改善が急務です。世界各国と比較してもその多忙さは歴然。日本の教員の労働環境の課題を国際教員指導環境調査(TALIS)から紐解いていきます。

TALISとはOECD(経済協力開発機構)が5年ごとに実施している、初等・中等教育における学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた国際調査です。職能開発などの教員の環境、学校での指導状況、教員への評価やフィードバックなどについて、国際比較可能なデータを収集し、教育に関する分析や教育政策の検討につなげることを目指しています。2008年から始まり、最新の2018年度の調査では世界48ヵ国が参加しています。

日本の教員の労働環境の特長を見ていきましょう。顕著なのは労働時間です。1週間当たりの勤務時間は小学校で54.4h、中学校で56.0hと参加国内最長で、参加国平均の38.3h(中学校)の約1.5倍。併せて課外活動、事務業務、授業計画準備に充てる時間も最長となっています。ここでの課外活動とは部活動のことを指しているといっていいでしょう。

日本の中学校ではほとんどの生徒が部活動に所属し、多くの教員が早朝や放課後、あるいは休日にスポーツや文化活動の指導に当たっています。こうした学校主導の課外活動は世界的にみると珍しいと言えます。多くの国では民間や地域コミュニティがこうした活動を支援しており、また学校に部活動があったとしても、シーズン制であったり、一部の選ばれた生徒のみが参加できるなど、日本のように「文武両道」を目指し通年で所属するもの、という考えはありません。さらに、質の高い指導を行う上で職員の不足を指摘する小中学校校長が多く、人材不足感も強いといえます。

文部科学省「我が国の教員の現状と課題 -TALIS2018結果より- 」より引用し一部改変

また、日本の教員は「担当教科等の分野の指導法に関する能力」や「指導用のICT技能」などといった職能開発に関するニーズが高い傾向にありますが、参加の障壁として「日程が自分の仕事のスケジュールと合わない」とする回答が特に多くなっています。多忙が職能開発の機会を妨げている、といえるのではないでしょうか。
さらに、近年文科省が積極的に推進しているICT教育に関して、「児童生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる」の項目は小学校で24.4%、中学校で17.9%と、参加国平均の51.3%を大きく下回っており、ICT活用の取り組みが十分でないといえます。

文部科学省「我が国の教員の現状と課題 -TALIS2018結果より- 」より引用し一部改変

こうした中、文科省は2019年に、1カ月の時間外勤務が45時間を超えないよう求めるガイドラインを全国の学校に通知し残業の抑制を求めるほか、部活動日の削減や指導員が導入するなど教員の負担軽減に取り組んでます。また、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」を策定し、積極的なICTの利用を促進しています。次回の調査は2023年。こうした取り組みの成果が、どのように調査結果に反映されるか注目です。

参考文献

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/post-12554.php

https://www.nier.go.jp/kokusai/talis/index.html

https://www.nippon.com/ja/currents/d00227/

talis2018_points.pdf (nier.go.jp)

早大・中澤篤史さん「日本のような部活動は世界的に珍しい」|部活と勉強 両立するのか|朝日新聞EduA (asahi.com)

カテゴリ:世界のSTEAM教育
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