2018年にオープンし、国際図書館連盟(IFLA)主催の「2019年公共図書館アワード(2019 Public Library of the Year Award)」を受賞したヘルシンキ中央図書館「Oodi(オーディ)」。
フィンランドの独立100周年を祝う国家プロジェクトの一つとして、国から国民への贈り物として建設された『Oodi』は、ヘルシンキ市民だけでなく、世界中から観光客も訪れています。(筆者が訪問した日も、クルージング旅行の団体が図書館の中の見学ツアーを行っていました。ヘルシンキ港に着いた後に立ち寄るスポットとして人気とのこと!)
Oodi図書館は、三階建ての建物です。一階は、カフェスペースやヘルシンキ市内の情報。二階は、ものづくりや体験をするスペース、三階は、蔵書、児童書のコーナー。今回、我々は『Oodi』の施設の中で、2階のメーカースペースに所属をしている、デジタルメディア担当のサンポさんにお話を伺いました。
様々なエリアがあります。3Dプリンター、電子ワークステーション、ミシン、レーザーカッター、ポスター印刷、スティッカー印刷、動画制作/編集、レコーディングスタジオ、ゲーム(XBOX/VR/Play station/Nintendo)等、ミーティングルーム、ワークショップ、展示会等、様々な機材や空間を無料で使うことが出来ます。また、ギター等の楽器も『Oodi』の図書館カードを持っている人であれば無料で借りることが出来ます。
利用者の方がどのように使っているかというと、自分の新しいビジネスのプロトタイプをつくったり(販売用のものを制作することはできないですが)、自分の趣味の為に等でこれらの機材を使うことができます。また、市民の方のミーティングや、友人とゲームをする為に立ち寄ったりということも行われています。これらは、自分で学ぼうとしている人、全ての人に開かれています。
基本的にはスタッフがどうやって使うかを教えます。ただ、図書館のスタッフが作成したマニュアルがあるので、それを使って利用者の方たちが自分たちで使用し、必要があればサポートするようにしています。全ての機械は無料で使用することが出来ます。(図書館にある材料や生地等を使う場合は実費かかりますが、もちろん材料の持ち込みも可能です)新しい機材の導入はスタッフの中で話し合って決めていきます。ただ決めるときに、どれを買ったら良いかをしっかり事前にリサーチをしてから購入します。この新しいライブラリー『Oodi』の計画が出たのは約10年前ですが、2018年のオープンまでに、この図書館をどんな場所にするか、図書館のサービスを決める必要がありました。その中で、テストライブラリーである『LIBRARY10』では新しい図書館『Oodi』にどんなライブラリー機能を持たせるかを、トライアンドエラーで決めていました。
ヘルシンキでは、2013年に最初にヘルシンキの図書館に3Dプリンターが導入され、今ではこの『Oodi』だけでなく、フィンランドの中で図書館の在り方が議論され、新しい形を模索しています。インターネットで何でも情報を検索することが出来る現在、本を借りるだけの場所として存在するのは意味がないですよね。フィンランドの図書館法では、『図書館は、人々にスペースを与え、学びや仕事を与える場所』としています。その為、人々は、ここで新しい機材を学んだり、人々はここに集まり、また仲間と集まる際にミーティングルーム等が使えるようになっています。ここにくれば人々が出会える場所であり、仕事をしたり、勉強をしたり、他の人に出会ったり、人々は家に籠る必要がなくなる、図書館にはそのような社会的な意味があるかと思います。
お話しを伺った中からもあったフィンランドの図書館の在り方
(以下、フィンランド公共図書館WEBサイト参照・訳したもの)
公共図書館法の目的は、以下を促進すること。
・誰もが教育や文化にアクセスできる平等な機会。
・情報の入手と利用。
・読書文化と多彩な識字能力。
・生涯学習と能力開発のための機会。
・活発な市民活動、民主主義、表現の自由。
これらの目的の実現は、共同体意識、多元主義、文化的多様性に基づいています。
フィンランドの公共図書館の活動には、すべての年齢層における識字の積極的な推進も含まれています。市民のデジタルリテラシーは様々な形でサポートされており、図書館の施設は文化イベント、会議、仕事、学習の場として利用することができます。
フィンランドの識字率の高さ(世界1位)には、こうした図書館の活動も大きく寄与しているのではないでしょうか。
https://www.libraries.fi/?language_content_entity=en
過去のアメリカの図書館関連記事はこちら