【菅原天満幼稚園】体系的な学びへの挑戦

大阪府にある菅原天満幼稚園は、昭和32年に菅原天満宮の付属幼稚園として開園されました。神社参拝に行き、園長先生から子どもたちに話をする時間を設けるなど、その歴史と伝統を大切にしながら、新しい教育手法も積極的に取り組まれています。その中で新しい取り組みとして今回、菅原天満幼稚園では、STEAM JAPANが開発するSPARK!を課外活動として9月より取り入れることが決まりました。そこで、SPARK!を実施する背景や、幼稚園で大切にしていることについてお話を聞きました!

左から、SPARK!を担当される大山先生と菅原天満幼稚園の疇地(あぜち)園長先生

理論に基づいた体系的な教育を進めたい

疇地園長先生:

日本の保育士は世界最高水準の保育を行う非常に優秀で、さまざまな役割をこなすマルチプレイヤーです。一方で、保育の内容や質には、経験年数や先生ごとの得意不得意でバラつきが生じることもありますよね。そこで、菅原天満幼稚園では、体系的な新しい教育手法として昨年度から国際バカロレア(IB)、そして今回遊びを軸にした課外活動としてSPARK!を導入することを決めました。

現在はすでに導入が始まっているIBを通じて、理論に基づいた一貫性のある教育を展開することができるようになりました。子どもたちはもちろん、先生たちがより主体的になり、自分達で自信を持って自分の意見を発表したり、相手の意見を聞けるようになったと感じています。

今回、新たに導入するSPARK!については、STEAM教育を通じて分野横断的な学びができる点が特徴です。これまでの保育の中でも遊びの中でSTEAM的な要素があったと思いますが、それを体系化することで、先生たちの得意分野や遊び方、遊び場所に偏りが生じることなく、子どもたちに幅広い経験を提供できるようになります。「遊びの中から学ぶ」という観点を私たちはとても重要視しているので、将来的には、SPARK!をカリキュラムの中にしっかりと組み込み、全ての子どもたちに遊びの中から学ぶ機会を提供していきたいと考えています。

外部講師と連携してSPARK!を実践

SPARK!のプログラムは、外部講師2名が実践 写真は大山講師

大山講師:

菅原天満幼稚園には以前私の娘が通っていて、保護者として幼稚園と接点があったところ、今回SPARK!の講師として関わらせていただくことになりました。普段は、京都芸術大学で造形教育を教える仕事や、メーカーのためにフィギュアやプラモデルなどの原型を作成する仕事もしており、私の専門分野やものづくりのエッセンスをSPARK!でもうまく活かしていければと考えています。

STEAM教育につながる「ものづくり」

大山講師:

大学の授業では、キャラクターデザイン学科の学生たちに、古典美術に近い手法で作品を立体的に再現する課題を出しています。ここでは3次元的な物の見方や観察力を養うことが重要です。

例えば、キャラクターのデザインでは、髪の毛や服のしわ、顔のディテールを正面や横顔から見た時に一貫性を持たせることが求められので、制作の過程では、アートと工学的な思考の両方が必要です。物差しで長さを測りながら正確な寸法で作ることもありますが、寸法通りに作っても人間らしい表現にはならないこともあるため、デフォルメを加えてリアルさを出す工夫が必要です。こういった作業を繰り返していき、多角的に制作と向きあう過程は、STEAM教育のエッセンスと近しい部分があるかもしれません。

「ごちゃまぜ」で生まれる、新たな価値

疇地園長先生:

今回、SPARK!の実施にあたっては、大山さんを含め2名の方に講師をお願いしました。もう一方も本園の元保護者の方で建築関係の専門家です。このように、菅原天満幼稚園では多様なコラボレーションを積極的に取り入れています。職員も多様なバックグラウンドのメンバーがいますし、やりたいことがあったら、外部とのコラボレーションも積極的に行います。多様な知識やバックグラウンドを持つ人材をあえて「ごちゃまぜ」にすることで、新しい価値を生み出していくことを意識しています。必要なものがあれば、みんなで話し合い、外部からの知見を取り入れ、ワークショップのような形式で力を貸してもらうこともあります。今後も園内外の連携をうまく取り入れ、地域全体で子どもたちの成長を支える環境を整えていきたいですね。

園長からのメッセージ

菅原天満幼稚園では、特に「思考力」と「聞く力」を育む教育を大切にしています。これまでも普段の活動を通して取り組んできましたが、今後は大山さんに講師をしていただくSPARK!の活動を通じて、さらにこれらの力を養っていけると期待しています。

講師からのメッセージ

SPARK!は、成績をつけるものではありませんし、何かを押し付けて『これをやりなさい』とは言いません。子どもたちの発想ややりたいことを伸ばしてあげられるような活動にしていきたいです!