「学びの個別最適化」を考える1日をテーマのもと、教育DX推進に向けてオンラインイベントが開催されました。(共催:一般社団法人 教育イノベーション協議会、一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI))
第一部では、”教育の個別最適化の今”に関して。続く、第二部では、デジタルテクノロジーの可能性と限界について議論されました。第三部で、”どうしたらさらに具体的に進むのか”をテーマに教育会を今、牽引されている多方面の方々によるパネルディスカッションが行われました。第三部のパネルディスカションの視聴レポートを、お伝えします。
板倉寛氏: 文部科学省 初等中等教育局企画官
高谷浩樹氏: 内閣官房IT総合戦略室 デジタル改革関連法案 準備委員
福本徹氏: 国立教育政策研究所 総括研究官
橋田浩一氏: 東京大学 大学院 情報理工学系研究科・教授
浅野大介氏: 経済産業省 サービス政策課長
ファシリテーター: 一般社団法人教育イノベーション協議会 代表理事 佐藤昌宏氏
モデレーター : 次世代基盤政策研究所 代表理事 森田朗氏
文部科学省で新学習指導要領作成にも関わられた板倉寛氏は、1人1台に端末は配られましたが、必要性をそこまで感じていないという現場の声も聞くと指摘。「ある一定のレベルまで広がり普及すると、もっと深い技術習得や学びにつながると思う。今回、多面的な意見で話し合えたのは、とても意義深いこと」と語られました。
国立教育政策研究所の福本徹氏は、「計6000億円の国費で、全国の子ども一人ひとりに端末を配布している。このことを多くの人が認識して関与することが重要。その一方で、学校間での温度差が出てきているのが懸念」と訴えられました。
内閣官房IT総合戦略室の髙谷浩樹氏は、「学校現場の先生方にどう対応してもらうか?。そして出来るだけ早く、学習の方法、教育の仕方を見せるべき。具体的に先生は何ができるのか?子どもは何ができるのかを、明確にする必要がある」と、早急な必要だと強調されました。
今までは理念などが先行していたが、これからは立場を超えて産学官民が協力していくことが欠かせないと指摘されました。
東京大学大学院の教授 橋田浩一氏は、「日常的に使えて、効果の見える楽しいサービスを作り上げていくことが重要。大人から子どもにという一方通行ではなく、子ども同士がやりとりして取り組む。そんなDX推進の方法を考えたい」と、さまざまな意見が飛び交う今回のイベントに期待感をのぞかせました。
経済産業省の浅野大介氏は、「学習スタイルが急速に変化している子どもたちは、どのように学習しているのか?そこにまた先生はどのようにサポートしているのか?この部分の詳細を明らかにしたい」と語られました。
その一方で、配布された端末が子どもたちの手元に配られていないという今までと変わらない現場もあると指摘し、「この差が開いていくのは何故か、を明らかにすべきである。また子どもや先生の変化を情報として発信していきたい」と、強調されました。
橋田氏より・・・デンマークのデジタル庁の方の話では、デジタル庁の職員300人が全国の現場にいき、地方の方とその現場でコミュニケーションをとることがあるようです。日本で計算すると、日本の6000人の職員が地方に行く計算になります。
何か日本独自の方法でここからヒントをもらって、現場とのコミュニケーションを取ることができればと感じました。
この話を聞き、パネリストの方々からも、同調する意見が飛び交いました。
板倉寛氏は、「教育現場にどのように入っていくかがポイントです。STEAM教育の手法の一つとして、先生役として子どもたちと授業づくりをしたり、双方向で学びあうという形が、今は必要で重要」と説きました。
浅野大介氏は、就職問題が絡んでくると指摘。「労働市場の改革も必要になってきている。先生の労働負担が大きく、職場と生徒の就職マッチングも難題である。企業の本気の教育参画は、労働市場の改革からやる必要がある」と強調されました。
現在、人口減少も叫ばれている中、人生の生き方、就職の仕方が時代とともに変化しています。それを踏まえて森田氏は、「日本では、労働とは、どれぐらいの時間働いたか?という時間軸で評価されることが多いですが、そうではなくて、どういう仕事をしたのか?という内容で評価するべき。学習も同じで何時間勉強したか?どういう風に勉強したか?ではなくて、何をどれだけ学んだか?と評価するべきではないか」という評価の仕方について指摘されました。
一人ひとり、学習方法は違い、得意な分野も苦手な分野も違いますから、学習者中心に個別最適化を考えていかなければいけないと強調されました。
今やるべきことは、教育現場ではGIGAや汎用技術等施策をフルで活用していくこと。一方国としては、成功事例の抽出と先生同士が横につながるネットワーク形成を早急に構築することが望まれていることです。
中長期的には、現場では人材育成が重要で、時間は掛かるが対話しながら、先生を育てること。そして国としては、データの標準化を含めた仕組みを作り上げていくことが求められています。
教育DXは、全ては、学習者の習熟に合わせた個別最適化を図るための手段です。新しく大きなことにチャレンジしていることを念頭に置きながら、”知る→考える→やってみる”このアプローチをどれぐらい展開していけるのかが重要だと、今回のイベントを締めくくりました。
GIGA構想により端末の1人1台整備は浸透していますが、これからはどのようにそれを使って授業を展開していくのか、各自治体では学習方法に変化が出てきています。自治体間の差をどのように減らし無くしていくのかが問われています。
まだまだ課題はありますが、学習者である子どもを中心にこれからも様々な課題を整理し、解決していくことを忘れてはいけないと改めて考えさせられました。
私たちは、多くの方に教育DXを浸透していくきっかけ作りができるように、STEAM教育の普及に取り組んでいきたいです。