2021.07.21│STEAMレポート

【SJA2021特別企画】Makeblock Japan菊池氏に聞く、STEAM教育への想いと中高生へのメッセージ

各省庁等の提言にも盛り込まれ、国内でも徐々に注目を浴びている「STEAM教育」。具体的な教材や場所なども、知りたい!という声が多くなってきています。変わりゆく時代に合った、最先端STEAM教材を提供しているMakeblock Japan 菊池裕史氏にお話を伺いました。

菊池裕史氏 プロフィール

Makeblock Japan株式会社 アジア太平洋地域 統括責任者
GoogleにてGoogle for Education 日本統括責任者として勤務した後、ソニー・グローバル エデュケーションにて、ロボット・プログラミング教材 KOOV の事業責任者として勤務。 NPO法人 Collable 理事および札幌新陽高等高校 CIO を兼任。

Makeblock Co.,Ltd
Makeblock社 プロフィール

​2013年に設立され、「中国のシリコンバレー」と呼ばれている深センに本社を構える。 現在、世界140を超える国・地域において事業展開をしている。25000を超える学校に対し てSTEAM分野で利用できるハードウェア、ソフトウェア、学習コンテンツを導入している。これまで、ドイツのIFデザイン賞、CESイノベーションアワード、レッドドット・デザイン賞、米国のIDEA Gold Award、日本のグッドデザイン賞など国際的な賞を多数獲得して いる。Makeblockは中国の中でも比較的早くSTEAM教育事業に着手、特に海外市場で業績 を上げている。​Makeblock Japan株式会社は、2016年にMakeblockの子会社として設立さ れ、日本市場の開拓と日本の企業とのビジネス協力を主要な目標として展開している。

ご自身のご経歴とSTEAM教育との出会いを教えてください

私は大学ではコンピュータサイエンス(CS)を専攻していて、プログラミングやモノづくりをしていました。研究の過程で、より高速なコンピュータを作るかというような開発の部分より「それがどんな風に世の中に役立つか」ということに関心が移行していきました。さらに、自分の原体験としてもデジタルテクノロジーが学習環境に大きな影響を与えると確信していたので、教育分野に携わりたいと思うようになりました。

卒業後は研究者への憧れもありましたが、自分の知見を社会に還元する、社会と密接に関わるという観点から、民間企業への道を選び、Googleへ入社しました。

Googleでは教育部門で採用され、私はアジアのチーム配属でした。ここでは同社のテクノロジーをアジア中の教育機関へ広めることがミッションでした。アジア担当はオーストラリアにいる上司と私の2人だけだったので最初は驚きましたが、世界トップのテクノロジーをデジタル化がまだ進んでいない教育分野へ広めていくのは非常にやりがいがありました。

STEAMとの出会いは、アルゴリズムが人間の能力を越えていく事を目の当たりにしたことがきっかけです。2014年、AlphaGoのDeepMind (人口知能) がトップ棋士を倒した事は当時のニュースでも取り上げられていましたが、自分の中で非常にインパクトのある出来事でした。

人間の仕事がAIや人口知能に置き換えられていくこれからの時代に、子ども達は一体何を学ぶべきなのか。Googleではデジタルでどう学ぶかのHowの部分を担ってきましたが、それ以上に何を学ぶか、何で学ぶかのWhatの部分に問題意識が移行しました。

その後、自分のビジョンとマッチしていて、自分でモノづくりから流通まで携わることのできる、ソニー・グローバル エデュケーションにキャリアを変えました。エンジニアも含めたチームマネジメントや海外支社との連携、企画から流通までと幅広く携わらせてもらいました。

そしてここで働いている時に、Makeblock に出会い、今に至ります。 Google も SONY での仕事も好きでしたが、自分のビジョンに基づいて価値を発揮して世界に貢献することを軸に考えた時に、Makeblock でチャレンジしてみようと思いました。

現在の仕事内容や働く中で感じていることを教えてください。

Makeblock では、アジアだけでなく中国とヨーロッパ以外の全てのエリアを統括しています。毎月、管轄の国が増えていくのですごい勢いです。

ここでは深センのエコシステムで高品質なモノを低価格で生産することが可能です。それを若手の社員を中心とするチームで世界中に展開しています。

本社の中国・深センの若手社員を見た時はあまりの優秀さに驚きました。みんな常に自己成長を第一に考え、向上心を持っていて、エネルギッシュです。一見難しいと思うような壁を簡単に突破してくる彼らがいるからこそ、世界で広いシェアを獲得できているんだと思います。

また、日本での取り組みの一つとして、東京大学の山内研究室のSTEAM教育の研究を支援していて、これから学校での実証が本格的に始まるところです。先生方に好きな指導案を選んでもらい、それに応じた商材で実証を行ってもらいます。現場からどんな声が届くのかすごく楽しみです。

教育現場のデジタル活用には何が必要だと思われますか?

学校でのデジタル活用のキーマンになるのはやはり先生方だと思います。

日本は世界的に見ても先生のレベルが非常に高いです。自分で教材研究をしたり、研究発表を見に行ったりとリテラシーが高いですよね。

その先生たちがデジタル環境を駆使して新しい授業を始めたら、すごくポテンシャルがあると思っています。海外では先生同士のコミュニティでのナレッジシェアが活発ですが、日本でもそういう場が増えると先生たちの手助けになるんじゃないかと思います。

STEAM JAPAN AWARD 2021のスポンサードにあたり、学生の皆さんにメッセージなどありましたらお願いします。

これからの不確実な未来に対して子どもたちは何を学ぶべきなのか、どういうマインドセットを持っているべきなのかと考え、私がたどり着いた一つの答えがSTEAMです。

受け身的な学びではなく、自分たちで社会の課題や生活の中で変えたいと思うことを見つけること。それをどうしたら変えられるのか真剣に考え、実際に「変える」ところまでやり切る体験を、是非アワードで学生の皆さんにしてほしいです。

そして、自分のアイデアカタチにしようと取り組む学生の後押しを我々もしていきたいと思っています。

また、自分で未来を切り拓くマインドセットも勿論大切ですが、自分自身を常にアップデートする感覚も持っていてほしいです。学校の外に出て未知の物事に取り組む中で、数学や物理など学校での勉強の重要性に気づいて、学校に戻ってくるような循環が生まれると良いですよね。

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