【インタビュー】ウィーシュタインズ株式会社 代表取締役 赤司 展子氏

2019.12.15│STEAMレポート

建築をベースとしたSTEAMワークショップや、教員研修を手掛ける赤司展子氏にインタビューを行った。


ウィーシュタインズ株式会社 代表取締役
赤司展子氏プロフィール
 総合商社、インテリア企画販売会社、外資系証券会社勤務を経て2007年PwC Japan入社。企業や病院の事業再生プロジェクトを経験した後、2014年よりPwCの社会貢献活動の一環で東日本大震災の被災地へ出向。福島第一原発事故の避難区域となった双葉郡の教育復興ビジョン具現化を推進。2016年10月PwCへ戻り新規事業開発チームに参画。2018年にPwCを退職しウィーシュタインズ株式会社を設立。「多彩能」が輝く社会を目指し、STEAMプログラムの企画開発や学校向け経営アドバイザリーサービスなどを通して「学びの多様化」に取り組んでいる。 NPO法人インビジブル理事・社会彫刻家、NPO法人ヘリウム監事、横浜学校支援ネットワーク理事

教える教育よりも教えない教育

町田「まず初めに、We-steinsでの事業を教えて頂けますか?」

赤司さん「もともと”好奇心と想像力”を大切にしていて、場作りということが共通のテーマです。その中で、今の子供達の好奇心と想像力が抑え付けられずにそのまま伸びる場を作りたくて、STEAMのプログラムを作ってワークショップをやっています。We-steinsでは建築をベースとしたSTEAMのプログラムであることが特徴です。もう一つは、私立の学校で、PBLやSTEAMなどの生徒主体の授業作りができるようにどうしたらいいか先生たちと一緒に考えたり、それに伴って先生たちの働き方改革をしたりしています。」

町田「子供達の好奇心と想像力を伸ばせる場づくりをしていると仰っていましたが、具体的にどのようなことをしているのですか?」

赤司さん「建築家の友人と一緒にワークショップを作っています。例えば建築構造で”積む”という構造があるんですけど、海外のレンガ作りや日本だと城壁だったり、積んだ建築って沢山あるんですよ。子供って積み木で遊ぶじゃないですか、それも同じ建築構造なんです。自分たちが暮らしている中の積むという行動は、物理とか数学も関わってくるんですね。それらを説明するのではなくて、積み木を遊ぶ中で体感してもらって、どうやってバランスを取れば積めるのか、沢山積むにはどうしたらいいのかという事をやってもらうワークショップを作っています。」

町田「建築家がワークショップの中に入っていると仰っていましたが、なぜ建築の先生ではなく、現場で働くプロの建築家を呼んでいるんですか??」

赤司さん「一番は、子供たちにそれを専門にしているプロと触れ合ってもらいたいからです。私は教える教育よりも教えない教育の方が人は学ぶと思っているんです。建築を教えますという授業よりも、子供たちがその構造で遊んでいるという場所の中に建築家がいると、建築家目線でその場でアドバイスができるので授業がいらないんですよ。建築家の積む積み木は子供たちの積み木と明らかに違くて、そうすると子供たちが『どうしてこうなるの?』って聞くんですよ。でも建築家ってそれを体感的にやっているのでそれを学校の先生のようには説明しないんですけど、体感や感覚を通して伝えることが出来るんです。それによって現場の人の技術や考え方をリアルに体感出来るんですよね。もう一つは、長期的に付き合っていると、何かに夢中になっている人の仕事に対する向き合い方だったり、人生に対する考え方が何となく伝わる部分があるので、そういう事も子供たちに感じて欲しいと思っています。教えるプロより、何かのプロと一緒に学ぶ場を作るようにしています。」

町田「今の段階では建築のプロのみなんですか?」

赤司さん「そのワークショップは建築ワークショップなので建築家なんですけど、夏に開催したツリーハウスのプロジェクトでは大工さんや林業関係者、彫刻アーティストを招いて一緒にツリーハウスを作りました。本場の技を教えるのではなく、本場の技を学びながら一緒にツリーハウスという建築物を作ることによって、体験から学んで欲しいと思っています。」

町田「これからの学校教育などの授業ではプロの方が入っていった方がいいと思いますか?」

赤司さん「是非そうになっていって欲しいと思っています。福島県富岡町にある学校の事業を、私が理事を務めているインビジブルというNPOでコーディネートしていて、まさに教えない教育というものをやっているんですね。アーティスト・イン・レジデンスというアーティストがある土地に住みながらそこで制作活動したり、その土地の人とコミュニケーションをとる取り組みがあるんですけど、私はその学校版を作りたくて、プロフェッショナル・イン・スクールという取り組みを提案しました。今回はアーティストに限らず、プロフェッショナルと呼ばれる人まで対象を広げました。去年は大工さん、今年は油絵の画家さんが来てくれて、1回くると3日~1週間くらい校内の1室をアトリエにして滞在して、それを何ヶ月か定期的にやるというプログラムです。プロフェッショナルの方が学校に来ている間何をしているのかというと、去年の大工さんだったらテーブルを作ってもらって、今年の油絵の画家さんは巨大な油絵を現在制作しているところです。転校生という名目なので、子供たちと同じ時間に登校して、休み時間は子供たちと一緒に遊ぶし、給食も食べて、放課後も子供たちと同じ時間に帰って、子供たちと同じ生活をしてもらっているんですよ。プロの方はアトリエで本気で仕事をしているので、子供たちが見に来て『何してるのー??』って話しかけたりしています。」

職人の背中を見ながら学ぶ子供たち

町田「一緒に何かを作るのではなく制作過程を見るという感じなんですか?」

赤司さん「基本的にはそうですね。手伝えることには手伝えるんですけど、プロの仕事ってワークショップとは違うので子供が手伝えることって実際なくて、せいぜい掃除とかしか手伝えないんですよね。でも子供たちは掃除をしている最中に、道具を大切にしなきゃいけないことや、仕事に向かう姿を職人の背中を見ながら学んでいるんです。まさにこれが本物の人がそこに居る意味ということなんですよね。そこから学ぶものは子供たちによるんです。そうなると先生の役割が変わってくると思うんですよ。今までは先生が知識を教えて子供たちが教わるというものだったのが、学ぶ題材が他にあるとそこに出会わせることだったりとか、そこで子供たちが気付いていることを自覚化させるための声がけだったりとか、そういう風に役割が変わってくると思います。」

町田「先生がコーディネーターみたいな役割になっていくんでしょうか?」

赤司さん「そうですね。誰と繋げるのかが大事になってきますね。あとはファシリテーション能力も必要になってくると思います。」

町田「人と人をつなげるスキルが求められていくんですね。今後、プロフェッショナル・イン・スクールに大工さんや画家さん意外にはどんな方を呼ぼうと考えていますか?」

赤司さん「来年もまたやろうと考えているのでそろそろ探さないといけなんですよね。逆に学生の町田くんからしたらどんな人に来て欲しいと思いますか?」

町田「でんじろう先生がテレビで実演してる実験みたいな目で見てわかる化学実験だったり、アート系のインタラクションの制作の過程やトライ&エラーが見れたら面白いかなと思いました。」

赤司さん「確かに、目で見てわかる実験や制作に試行錯誤しているところって面白いですもんね。子供たちも興味持ってくれそうですよね。」

先生は知識を教える人から知識を使う人へ

町田「赤司さんは教員研修もやっているとのことでしたが、今までの先生と、これからの先生で、どのようにマインドを変えていけばいいと思いますか?」

赤司さん「先ほども話したようにまさに先生の役割が変わっていって、情報としての知識は簡単に手に入る時代になったので、情報をどのように取っていくかとか、そもそもその情報は正しいのか、という様に情報を使える人にならないといけないと思います。そうすると先生は知識を教える人じゃなくなるので、どう考えるかとか、どうやって知識を使うのか、という事を考えていく必要があると思います。子供たちが体験できる場や考えられる場を用意できるようにマインドセットを変えていってほしいです。誤解を恐れずに言うと、何を何時間教えようとか、教える側主体で考えるのではなくて、学習者主体で考えなければいけないので、難易度はかなり上がると思います。子供たちが何を考えるかなんて十人十色ですからね…。」

町田「なるほど。ということは、先生の考え方と同様に授業の授業の在り方も変わらないといけないということですか?」

赤司さん「そうですね。先生主体ではなく子供主体の授業作りができている先生も見かけます。授業中の会話ってシナリオは無いじゃないですか。でも子供の声をどう拾って子供がどう考えているのか、そしてどのように授業を展開していこうか、ということまで考えられる先生もいらっしゃいます。」

自ら問いを立てられることが求められる時代へ

町田「先生の意識も自然と少しずつ変わっていっているんですかね。最後に、STEAMは人によって色々な解釈があると思うのですが、赤司さんにとってのSTEAMを教えていただけますか?」

赤司さん「一番は学問的に分野横断・融合であることです。つまり、多様であることですね。なぜかというと、子供の興味関心はどこにあるのかわからないので、みんながそれぞれワクワクして学べることが大事だと思っています。また、リアルであることや創造的であることもSTEAM教育の要素だと思います。STEAM人材とは、デジタルテクノロジーが進展しグローバル化が進んで社会課題が複雑になっている時代に、自ら問いを立てて新しい価値を生み出せる人のことだと思うので、そういう人材が育つのための学びが広がるといいですね。」

町田「ひとりひとり得意不得意があるのと同様に、興味関心も違いますもんね。これからの学校ではみんながワクワクできる授業になっていくのが楽しみですね。STEAMに関するマインドセットがとても分かりやすかったです。今回はお忙しい中ありがとうございました!」

赤司さん「こちらこそありがとうございました!」

(学生ライター:町田)

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