日本の多くの学校に設定されている『清掃の時間』ですが、生徒が学校を掃除する国は実は少ないのだそう。しかし、近年こうした日本の取り組みを見て、海外の学校で掃除の時間が導入される例が増えています。この記事では、そもそも日本で生徒が掃除をする理由やその効果と、海外で掃除の時間が導入された例を具体的に見ていきます。
国立教育政策研究所が2017年に行った『学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書』によると、日本、アメリカ、イギリス、中国、シンガポール、フランス、ドイツ、韓国といった8カ国のなかで、清掃を生徒たちが教員に指導されて行っている国は日本、中国、韓国の3カ国。清掃を行う国は少数派です。(後述の通り、2017年発表時にカウントされていなかった国々の中で近年清掃に取り組んでいる国もあります。)
一説によると、日本の学校で掃除の時間が設けられるきっかけになったのは、仏教や神道の修行に関係しているそうです。禅教では実際に掃除が修行の一環に位置付けられています。つまり日本には昔から掃除による人格形成が根付いていたということです。
その後も、日本に”学校”ができる前に子どもたちが通っていた寺子屋にも、掃除の習慣がありましたし、寺子屋の習慣が学校制度にも次第に溶け込んでいき、現在の私たちまで掃除の時間が続いています。
ここまで聞くとなんとなく続いてきただけのようにも思われますが、掃除には子どもたちの社会性を育むことができる点や、清掃員の人件費削減など、大きな効果があります。
特に、日本人が自分たちの使った場所を当たり前のように自分たちで綺麗にする心がけは、これまでもスポーツのイベントを中心に数々のシーンで世界中から称賛されてきました。また、掃除をする上で役割分担をして責任を持って役割を全うすることも大切な学びになります。
最近では、日本の学校で行われている清掃の時間が海外でも導入されています。ここでは2つ、例を紹介します。
まずはシンガポール。シンガポールでは2016年ごろから国内の全ての小中高校で掃除の時間が導入されました。シンガポールの教育省によると、日本や台湾の学校に倣い掃除の時間を導入することで、子どもたちが学校を管理し、若者の責任感を育むことを目標としているといいます。
続いてイングランド南西部のデヴォン。ここでは州を挙げての取組みではありませんが、ある学校が2018年ごろに10台の掃除機を購入し、子どもたちに交代で掃除をさせるようになりました。これは、日本の学校に掃除の時間があることを知ったこの学校の校長が独自に始めた取組みですが、子どもたちやその保護者からも好意的に受け入れられたそうです。
私たちが当たり前に行ってきた学校掃除も、近いうちに世界中に広まっていくかもしれませんね。
文責 赤井里佳子(STEAM JAPAN 編集部 大学生インターン生)
・https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/kyosyoku-1-8_a.pdf (最終閲覧日2022年3月31日)
・https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/300/455789.html (最終閲覧日2022年3月31日)
・https://www.bbc.com/news/uk-england-devon-45905944 (最終閲覧日2022年3月31日)
・https://www.bbc.com/news/blogs-news-from-elsewhere-35661412#:~:text=Pupils%20will%20be%20required%20to,Singapore’s%20The%20Independent%20newspaper%20reports. (最終閲覧日2022年3月31日)