STEAM教育シンポジウム 中間発表レポート

STEAM教育シンポジウム 〜日本の学校でSTEAM教育をどう展開するか〜

2020年4月からMakeblock の支援を受けて、東京大学大学院 情報学環 山内研究室が行ってきた研究の中間成果を発表するとともに、「日本の学校でSTEAM教育を今どう切り開くか」というテーマのもとシンポジウムが行われました。

GIGAスクール構想が進み、ICTが普及していく中で、どのようにSTEAM教育を展開していくかという関心がある方が多いと思います。プログラミング教育もSTEAM教育と関連していると教育に含まれると言われる中で、STEAM教育の今後の展開について様々な分野からの意見が交わされました。その内容を紹介します。

プログラム内容

●「STEAM教育とは何か」 

杉山昂平氏(東京大学大学院情報学環特任研究員)、山内祐平氏(東京大学大学院情報学環教授)

●「新学習指導要領とSTEAM教育」

 板倉寛氏(文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室長)

●「情報教育とSTEAM教育」

 堀田龍也氏(東北大学大学院情報科学研究科教授)

●パネルディスカッション「日本の学校でSTEAM教育をどう展開するか」
司会:山内氏 パネラー:板倉氏、堀田氏、杉山氏

主催

東京大学大学院情報学環山内研究室

後援

Makeblock

内容① 研究内容報告会:STEAM教育とは何か、山内氏の研究内容について 東京大学大学院情報学環特任研究員 杉山昂平氏

まず、杉山昂平氏より、STEAM教育の系譜や歴史など、STEMの概念と、STEAM教育が出てきた起源に関しての説明がありました。
またSTEAM と STEM の差。A が含まれている教育とは何か?明確にする必要があると考えます。STEM と芸術教育を強化するのではなくて、あえて、STEAM教育に統合する必要があるのかという点は、研究してきた中で、見えてきた課題であると指摘されました。

「これから重要視されるのは解決すべき部分を探究することであり、解かなければいけない部分、やらなければいけない課題は何か?を考えることに重点を置くということ。つまり今までと視点が異なることが、研究を進めていく中で徐々に見えてきました。問題発見能力がポイントだと強調されました。

問題発見能力や探究との連携が、STEAM教育が今後、日本の教育の中で展開する際のポイントになると語りました。

内容②  新学習指導要領とSTEAM教育の関連 文部科学省 初等中等教育局 教育課程課 教育課程企画室長 板倉寛氏

現状の学力の課題に関して考察し、そこから見える現在の教育の課題と、新学習指導要領とSTEAM教育がこれからどのように関連づけられていくかを考えていきたいと説明したのは、板倉寛氏です。

PISA(OECDが行なっている世界的な学力調査)の読解力ランキング低下の結果の詳細を説明した上で、「問題意識をどこに持てるか。読解力の低下なのか、根拠を示して他者に自分の考えを伝えることができるかという問題なのか、情報活用能力が鍵になる」と指摘しました。

また、「新学習指導要領がこの度改訂しました。子どもたちは社会の変化を前向きに受け止めて、より豊かなものにしていくために行動するということが重要な要素だと捉えています。何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶかという考え方が明記され、重要なポイントです。自らで学習を主体的に考えていく自己調整の学びと、異なる考え方が組み合わさるという学校ならではの協働の学びも同時並行で重要だ」と熱く語りました。

STEAM教育を各世代(小中高)で取り入れていく中で、各教科の学びがまず基礎であること。習得・活用・探究を忘れてはいけないこと。STEAM教育は、ただの体験ではなくて、STEAM教育を学んだ後、各教科の学びを深めていくこと。各教科との連携が非常に重要なポイントだと考えさせられました。

内容③  情報教育とSTEAM教育  東北大学大学院情報科学研究科教授  堀田龍也氏

情報教育について堀田氏が以下のように説明しました。

「GIGAスクール構想と、学習指導要領の切り替えが合わさった時期がここ2〜3年である。そこがこれからの教育において重要なポイントでもある。また、情報教育とは、情報活用能力を育成する教育のこと。また情報活用能力は、情報活用の実践力、(ICTで得た情報をうまく活用する力)、情報の科学的な理解(情報科学や情報技術の理解)、情報社会に参画する態度(情報社会を形成する人材の育成)という3つの観点で構成されています」。 

「世界的には人口爆発・増加傾向が続いていますが、日本では15年ぐらい前から人口減少社会にあります。これからの社会では、テクノロジーと人間の共存が不可欠になります。人間は人間でしかできない人間らしい仕事をし、うまくAIをコントロールできるようにならなければいけない。そのためにも、どのようにICTを使い、どのようにテクノロジーと共存していくかは、必要不可欠なことだと考えます。

 無自覚でテクノロジーが生活の中に入り込んでいる現代。気づいたら身の回りにはテクノロジーがあり、またそれらに助けられていることに気づきます。そしてこのテクノロジーは誰かが作ったものだと知り、自分たちでも作れないのかと考え、作り直したらもっとより良いものができるのではないかと考えることができます。こういう流れは、身近なものから、自然と子どもたちに考えさせる良い材料になります。STEAM教育との関わり方に大きく影響するものだ」と力強く語りました。

内容④ パネルディスカッション

STEAM教育をどのように実際の授業に取り組んでいくかというのは学校全体で、教育のどこに力を注ぐのか、見直す機会にもなります。
また、視点を変えて先生主導でなく、子ども主体で取り組めたら、STEAMの要素を今の授業に組み込むことができます。

STEAM教育の中の“A”の果たす役割について、学習指導要領に沿った中でSTEAM教育を考えた時、子どもの主体性をどのようにどこまで確保できるのか、教員は今後どのような存在になる必要があるのか等、多くの先生方からの質問に対して活発な意見が交わされました。

終わりに

東京大学大学院 情報学環 山内研究室において、STEAM教育に関する研究プロジェクトが始まって、早1年。トータル2年の研究プロジェクトでの発表が来年に行われるとのこと。とても楽しみですし、引き続きSTEAM JAPANではMakeblockさんと山内研究室のご活動に着目して参ります!(STEAM JAPAN編集部)