世界中で採用されている「レッジョ・エミリア・アプローチ」とは?

1950年代前半にイタリア北部のレッジョ・エミリアという街で生まれた幼児教育であるレッジョ・エミリア・アプローチ。第二次世界大戦後の余波が続く中、教育学者ローリス・マラグッツィや行政機関、地域住民が作り出した幼児教育の場で、先進的かつ民主的な教育理念として発展しました。

ローリス・マラグッツィが表した

“子どもには100通りある 子どもたちは100の言葉、100の手、100の考え方、遊び方、話し方がある“

という考えを基本理念とし、子ども一人一人の感性を大切にし、個性を伸ばしていくことに焦点を当てています。1991年に米誌のニューズウィークで世界で最も優れた幼児教育として取り上げられ、世界的に注目を集めるようになりました。

固定のメソッドとして確立されたものではないため、国や学校によってレッジョ・エミリア・アプローチの取り入れ方はさまざまですが、根底にあるのは子どもたちとの対話を重視し創造性を伸ばしていく教育であるということ。

具体的な特徴を探っていきましょう。

協同者としての保育者、保護者

レッジョ・エミリア・アプローチでは、保育者は先生という立場ではなく共同学習者としてみなされ、用意されている教材やカリキュラムに則って指導を行うことはしません。また、保護者も協力者として積極的な参画が求められます。子どもたちと保育者、保護者との自発的なコミュニケーションの中で新たなプログラムを協同して創造していくことが推奨されます。さらには「ペダゴジスタ」と呼ばれる教育専門家、「アトリエスタ」と呼ばれる美術専が配置され、専門家によるサポートが機能しています。

プロジェクト活動とドキュメンテーション

子どもたちは、自身やアイデアや保育者の体験などを基にあるトピックを追求していく長期的なグループ学習への参画が促されます。ゴールを設定されたものではなく、子どもたちの好奇心や関心に沿った予定不調和の柔軟な学びを体験します。

また、保育者は文書化したり、パネル展示したりするなどして学習プロセスを目に見える形で記録することが重視されています。子どもたちの考えや表現を研究し、カリキュラムを洗練させると同時に、保育者の振り返りや評価、保護者との連携に役立たせることができます。

「第3の教師」である学習空間

マラグッツィは教育を実践する空間を「第3の教師」と捉え、非常に重視していました。空間は心理的な幸福感や親近感、帰属意識、センスといったものを生み出す教育に作用する要素の一つとされます。園内には子どもたちの自由に表現できるようアトリエやピアッツァ(共同広場)が設けられ、子どもたちの感性を刺激し、対話や交流を生み出すような空間にデザインされます。

子どもの自主性を伸ばすレッジョ・エミリア・アプローチ。世界各国で子どもたち一人ひとりに寄り添った学習体験が生み出され、進化し続けています。

参考文献

Reggio Emilia Approach | Reggio Children

https://www.scholastic.com/teachers/articles/teaching-content/reggio-emilia-approach/

レッジョエミリア・アプローチの特徴10選 | レッジョエミリア教育 (reggio-emilia.jp)MISAWA_study4.pdf (u-tokyo.ac.jp)

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