時代の変化に伴い、教育・学びの価値観も変化している昨今。これからの時代は、こうした時代の変化に対応し、新たなものを創造していくチカラが求められています。そんな人材を育てるためには、どのような教育が必要なのでしょうか?世界ではどのような教育がなされているのでしょうか?
そのヒントを得るために、世界トップのハーバード大学に留学・勤務された経験を持つ、林氏に電話インタビューを実施しました。
林 一広氏プロフィール
1982年山口県生まれ。Xeno-Interface株式会社 代表取締役。京都大学薬学部総合薬学科卒業後、京都大学大学院薬学研究科で博士(薬学)取得。2011年からハーバード大学Chemistry and Chemical Biology研究科とStem Cell and Regenerative Biology研究科に日本学術振興会海外特別研究員として留学。ハーバード大学Research Associateに就任した後に、京都大学医学研究科/生命科学研究科/化学研究所所属にて自身のプロジェクトを開始し、2019年から現職。ペプチド医薬品と遺伝子医薬品を専門とし、治療困難な病気の原因に有効な、分子デザインを鍵とする新規創薬技術の開発を行っている。
まずハーバード大学と一概には言えず、ハーバード大学には学部と大学院があり、大学院の中でも学生主体のところとロースクール、ビジネススクールなど社会人経験がある人が通うようなプロフェッショナル系の大学院があります。僕は理系出身なので、理系寄りの話になりますが…。 学部への入学の際には願書や推薦状の他に、SATと呼ばれるセンター試験のような筆記試験、TOEFL iBT、エッセイがあります。筆記試験の成績以外で、1つ以上の際立った賞があるとプラスになります。スポーツや音楽で全国大会や大きなコンクールに出場しているなど全国レベルのものがあると1つで良いかもですが、そうでない場合2つ以上の成績を受験生は集めたりしていました。学部の面接ではハーバード大学の卒業生が面接を行うようです。
国が違うので当たり前のことかもですが、日本の大学との違いは結構感じました。以下、大きな違いを感じたことを5つ述べさせていただきます。
まず1つ目は、学部生でも大学院の授業を履修できることです。学部生が大学院の授業を履修し、良い成績を修めると非常に評価されていました。
2つ目は、文理を超えた複数の専攻が可能なことです。ハーバード大学では2年の1学期が終わったタイミングで専攻を選びます。日本のように文系・理系で完全に区切られている訳ではなく、文系・理系を問わず複数の専攻を選ぶことができます。この制度は「ダブルメジャー」と呼ばれていました。この制度を知った後は、今まで以上に日本では学問を学ぶことが制限されていると感じました。
ダブルメジャーとは別の例では、僕の知り合いは経済学を主専攻としながら、ケミカルバイオロジーのラボに所属していました。日本でいうと経済学部の学生が理系の研究室に来て実験をしているイメージです。
3つ目はハーバード大学に限らない話になりますが、インターンシップ制度です。日本でもインターンシップ制度はあると思いますが、アメリカの制度ではインターンシップである程度の額の給与がでることは一般的であるため、学費を払うためにアルバイトされている学生にも優しい制度になっています。大学によっては在学中に積極的に社会経験を学生にもたせるプログラムが用意されていました。