2022.01.06│STEAMレポート

【新春特別取材】元文部科学副大臣・鈴木寛氏インタビュー(前編)

STEAM教育のその先へ。STEAMは「A」が要である。(前編)

STEAM教育を以前より提唱されており、2020年度から始まりつつある新学習指導要領の改訂や40年ぶりの大学入学制度改革に尽力された、
元文部科学副大臣・現在は東京大学大学院教授、慶應義塾大学教授を務められる鈴木 寛(すずき・かん)氏​​に特別取材を行いました。

鈴木氏が、どのような経緯でSTEAM教育に早くから着目されていたのか?
鈴木氏の考える「A」の要素とはどのようなことなのか、お話を伺いました。

(聞き手:STEAM JAPAN編集部)


鈴木寛氏 プロフィール  

1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。山口県庁出向中に吉田松陰の松下村塾に何度も通い、若者の無限の可能性を実感し、人材育成の大切さに目覚める。1995年夏から、通産省勤務の傍ら、大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰し、今なお、25年間続いている。この塾から、日本を代表する多数のベンチャー起業家、社会起業家、アーティストを数多く輩出。慶應義塾大学SFC助教授を経て2001年参議院議員初当選(東京都)。12年間の国会議員在任中、文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化、科学技術イノベーション、IT政策を中心に活動。2014年10月より文部科学省参与、2015年2月より2018年10月まで、文部科学大臣補佐官を四期務め、日本でいち早く、アクティブ・ラーニングの導入を推進。2020年度から始まる次期学習指導要領の改訂、40年ぶりの大学入学制度改革に尽力した。現在は、東京大学教授、慶應義塾大学教授、社会創発塾塾長、OECD教育2030理事、Teach for All Global Board Member、日本サッカー協会理事などを兼務。

※プロフィール抜粋記事はコチラ

Q:早い段階でSTEAM教育に着目をされた経緯はどこにあるのでしょうか? ご自身の経験など様々なルーツがあられたのかと思います。まずは、ご自身のバックグラウンドについて教えてください。



元々私は、幼少期より、ピアノやバンド、声楽など、音楽を通して生涯の仲間を得ました。
 公立の小学校に通っていたのですが、様々なイベントや交流があり、私立中高生になってからも、文化祭といった学校行事で演奏する機会がありました。常に音楽や芸術に触れられるような環境で育ちました。


大学は東京大学に進学しました。進学と同時に「一通り、学業は修めた」という強い思いがあり、自分の将来には”感性”が大事だと決心し、以来、幼い頃から好きだった音楽を中心に、アート三昧の学生生活を過ごしました。
また、学生時代に「ネバーランドミュージカルコミュニティ」と言う演劇グループに参加して、音楽監督を担当し、駒場小劇場(現:駒場小空間)で活動していました。ありがたいことに、スズナリ劇場や紀伊國屋劇場など、さまざまな劇場で、私の作った楽曲や音楽指導した作品が上映されました。

当時は、劇団の活動と東京大学音楽部コールアカデミーにも所属し、東京六大学合唱連盟の学生理事もしていました。現在も、東京大学音楽部副部長をしています。
演劇は、まさにアートの”カタマリ”とも言える、総合芸術です。オペラもミュージカルも、そうですよね、まさに総合芸術です。

学生時代に一緒に演出をしていた人で、今は、明治座の演出家になっている人もいます。劇団には、東京大学だけでなく、さまざまな大学から集まっていたメンバーがいました。当時の仲間たちは、不思議なことに、現在、社会で大活躍している人ばかりです。気がつけば、予想外の出世率を誇る集団になっていました。産業界、メディア界、建築業界など、各界で大活躍しています。



Q. 学生時代の仲間が各界で活躍されているとは驚きですね!

全員に共通していることがあるんです、それが、「アート」です。芝居や合唱をしていた劇団の仲間。入学時の18歳の時点で、私は人間には「アート」が重要な要素になってくるという仮説を抱いていました。「感性&アート」を通じて、人間が「コラボレーションしていくこと」が重要ポイントだと感じています。まさに、コミュニケーション、コラボレーション、クリエーション、これらが重要、と。その時からずっと考えてきました。

医師、教師、社長など、対人的なコミュニケーションを必要とする仕事には、アート的なコミュニケーションが必要です。

アートを通じて繋がる人間関係やコミュニケーション(=Co-creation)によって培われる絆や仲間との絆を創るプロセスが非常に大切です。特に、アート活動に”創造的””独創性””協働的芸術ワーク”の重要性を感じました。

一人一人の個性を活かして、認め合い尊重しあえる場が、劇団や楽団という場にはある。マニュアル重視の社会ではなく、お互いをリスペクトしあえる場所が、アートにはある。例えば、劇団には、照明や衣装、舞台など、それぞれ必要な役割や居場所があります。一人ひとりの能力を比べるのではありません。比べようがないのがアートです。

私はアートの可能性を、学生時代の体験を通じて満喫していました。

大学卒業後、アートに関係した仕事をしたいという思いもあり、当時、東京国際映画祭の立ち上げなどを携わっていた通商産業省(現:経済産業省)に入省しました。その後、Jリーグの立ち上げに携わり、2002年の日韓W杯の招致に繋がりました。私自身がアート、STEAMのような教科を越えた学び中で、さまざまな経験をして、成長してこれました。人生の軸を作ってもらえたと感じています。だからこそ、アートは教育には欠かせないものだと確信しています。

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