エストニア 小国の教育とデジタル活用 

バルト三国の一つであるエストニアは、人口はわずか132万人。青森県をわずかに上回る程度の小国です。しかし、2018年のPISAでは、OECD加盟国の中で読解力と科学的リテラシーで1位、数学的リテラシーで1位を記録しました。そのエストニアの教育を支える重要な要素が、デジタルの活用です。

デジタル国家 エストニア

エストニアは、世界でもっともデジタル活用が進む国の一つです。99%の公共サービスがオンラインで提供され、国民の44%がインターネット投票をしています。その背景にあるのは、天然資源などを持たない小国としての立場です。限られた資源で安定した国を築くため、1990年代後半からインターネットの活用が進められてきました。さらに2001年には、インターネットアクセスを人権の一部としても認めています。ビデオ通話に世界中で使われるSkypeも、エストニアで生まれました。

教育とデジタル

教育でデジタル活用が進むきっかけとなったのは、1997年に始動したTiger Leapというプロジェクトです。教育に重点を置いてインターネットの拡大を目指したこのプロジェクトでは、学校へのコンピュータの支給とインターネットアクセスの提供、教師へのデジタルトレーニングが進められました。

教育現場でのデジタル活用の方法は、データベース、教科書、教材、クラス日誌、テストなど多岐に渡ります。学校で使われているツールのうちメジャーなものの一つが、eKoolというサービスです。成績や課題、時間割、教材などを一括で管理できるツールで、生徒・保護者・教員全てに向けてサービスを提供しています。

デジタル移行の成功の裏には、教員らの育成があります。2014年から行われているデジタルトランスフォーメーションプログラムでは、教員に対しITトレーニングが行われ、デジタル技術学習プロセスに取り入れるための教材が作られます。また、教育テクノロジーの効果を最大化するためのサポートも提供されます。

教育現場におけるデジタル活用は、様々な利点があります。一つは、生徒の荷物の軽量化です。紙の教材を持ち運ぶ必要がなくなることで、学習のスマート化や姿勢の改善につながります。さらに、家庭と学校が連携し、学習状況を管理することができます。教材などをオンライン上で管理し、保護者も学習の進捗を容易に確認できるようにすることで、学校を欠席した生徒のフォローも容易になります。

このようにデジタル活用が進んでいたことで、新型コロナウイルスにより学校が閉鎖された際も、スムーズにオンライン授業への移行が行われました。

デジタルツールの活用だけでなく、教育カリキュラムそのものにも先進的な方法が取り入れられています。現在は7歳からプログラミングの授業が行われています。これについて、自身も13歳でプログラミングを学んだイルヴェス前大統領は、「エストニアでは1年生か2年生から外国語を学ぶ。7、8歳から文法を学ぶなら、それはプログラミングのルールを学ぶのとどこが違うのか?」と話しています

参照サイト

e-Estonia "Digitalisation in service of education nation"

The Guardian "Lessons from Estonia: why it excels at digital learning during Covid"

eKool 公式HP

(文:佐藤琴音)