世界で進むシュタイナー教育とSTEAM教育の共通点とは?

シュタイナー教育の理念と考え方

世界中の子どもたち一人ひとりに、それぞれ豊かな個性があります。その個性をさらに伸ばすために、世界中から注目される教育モデルの一つが「シュタイナー教育」です。

シュタイナー教育のはじまり

「シュタイナー教育」は、オーストリアのルドルフ・シュタイナー(1861-1925)によって提唱されました。ルドルフ・シュタイナーは、オーストリアの科学者・思想家でありながら、教育や農業・芸術・医学・建築など多くのジャンルに渡って才能を発揮し、各方面に影響を及ぼしました。

彼は第一次世界大戦を経験し、健康的な社会を再び作るためには、自分の意思で行動できる自由な人間を育てなければならないと痛感しました。終戦後、1919年にタバコ工場主のエミール・モルトの要望に応え、工場労働者の子どものための学校をドイツに設立しました。

後に、この学校は「自由ヴァルドルフ学園」と名付けられ、ドイツではシュタイナー教育をヴァルドルフ教育と呼ぶそうです

当時では珍しい共学制の「自由ヴァルドルフ学園」

長い歴史を経てなお広がり続けているシュタイナー教育ですが、最初に作られた自由ヴァルドルフ学園は、当時としては革新的でした。その理由は、この学園が労働者階級の子どものための施設であり、男女共学かつ12年通しての一貫教育を採用していたからです。

ルドルフ・シュタイナーは、この学校の指導者役を引き受けましたが「あらゆる子どもの入学を認める学校にするべき」と提案しました。また、彼は現場で働く教師の自由も尊び、あえて学校のトップに校長を置かないシステムを作り出したのです。

シュタイナー教育は欧米で広がりを見せましたが、アジアで最も早くシュタイナー教育が取り入れたのは日本だったそうです。1970-1980年代には、当時の日本の教育方法に疑問を抱いた教育者たちが全国で熱心に勉強会を行い、1987年には日本初のシュタイナー学校「東京シュタイナーシューレ」が開校されました。

7年のサイクルと成長

シュタイナー教育の特徴は、一人ひとりの個性を尊重し、それぞれの能力をできる限り引き出すことに重きを置くことです。

ルドルフ・シュタイナーは、人間の成長過程を7年のサイクルで捉えました。生まれてから大人になるまでの間、子どもたちにはそれぞれの年齢サイクルにあった教育方法が必要だと説いたのです。

例えば、0~7歳は、体を活発に動かし、遊びの中から自分の意志通りの行動ができるように導き、大人の模倣をしながら学んでいく時期で、7~14歳は、感受性を豊かにする時期と定義され、詩歌や音楽・美術など芸術的なものに多く触れることで、記憶を定着する学びができる時期と説明しました。また、14~21歳は、考える力を養う時期であり、ただ知識を得るだけでなく、論理的に考えて自我を作り上げるタイミングと話しました。

ルドルフ・シュタイナーは、それぞれの年齢にあった「学び」を提供することで、一人ひとりの個性を徐々に育むことを目標としたのです。

シュタイナー教育の特徴

シュタイナー教育で特筆するべきは「エポック授業」と呼ばれるものです。学校によって細かい内容は異なりますが、朝1時間目にあたる100分前後の時間を国語・算数・理科・社会等からひとつの科目に特化して3~4週間かけて重点的に学んでいきます。

脳が活発に動く時間帯に、集中的に1科目を学ぶことで、子どもたちの頭の中に深くその内容が浸透していき、学習効果が高まります。

また「オイリュトミー」というルドルフ・シュタイナーが編み出した動きの芸術も、授業で取り入れられます。音楽や詩の朗読に合わせて体を動かすもので、音楽や言葉の響きを全身を使って表現するのです。そして「フォルメン」では、さまざまな幾何学模様を描き、それに色を付けることで、フォルムの規則性を感じ、バランス感覚を磨きます。ひいては数学的なセンスも身に着けることができます。

STEAM教育との共通点

STEAM教育の「A」の部分、Art(芸術)は創造性教育を意味しますが、シュタイナー教育においても芸術に関する教育は重視されています。

シュタイナー教育では、絵画・スケッチ・朗読・音楽を授業で導入し、芸術によって子どもたちの創造力やオリジナリティー、自立する力を育てます。

一方、STEAM教育は、最初はSTEM教育(科学・技術・工学・数学)に、A(リベラルアーツ・芸術)を付け加えることで、より感性を磨き、自立性や創造力・表現力を持った子どもを育成することを目指しています。

シュタイナー教育もSTEAM教育も、子どもたちの個性を伸ばし、新たな可能性を広げるという意味において、共通しているといえるでしょう。世界にはさまざまな教育モデルがありますが、子どもたちの個性によって選択したり、それらを組み合わせることによって、クリエイティブ・コンフィデンス(自分は“クリエイティブである”という自信)を持った子どもたちが育てることができます。

現在、シュタイナー教育は、世界でも60以上もの国で1000校を超える学校が設立され、まさにワールドワイドな教育運動として広がっていきました。アメリカ・オセアニア・ヨーロッパで普及されているシュタイナー教育ですが、現在アジアにおいて急速に広がりつつあります。

子どもたち一人ひとりにあった教育モデルを学んだり、子どもたちと密にコミュニケーションをとることによって、輝かしい未来の可能性を広げてみてください。

参考サイト

https://theconversation.com/steam-not-stem-why-scientists-need-arts-training-89788https://waldorf.jp/education/

https://studystudio.jp/contents/archives/39309

日本シュタイナー学校協会

http://www.koshigaya.bunkyo.ac.jp/shiraish/sansuu00/10/shiryou10.pdf

東京賢治シュタイナー学校

子育研究

愛知シュタイナー学園

アイリュトミーって何でしょう

Education Careerマガジン

カテゴリ:世界のSTEAM教育
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