日本のおとなり中国・韓国は、教育面でも日本と共通する点がたくさんあります。そこではSTEAM教育がどのように取り入れられているのか、見ていきましょう。今回は、韓国についてご紹介します!
韓国の教育制度は日本と同じように6-3-3制です。教員は中高では教科ごとに専任ですが、小学校ではそれぞれの教師が全ての教科を教えます。
この十二年間のカリキュラムは、国によって定められ、日本での学習指導要領のような役割を「教育課程」というものが果たしています。STEAM教育が取り入れられるようになったのは2009年に「教育課程」が改定されてからで、さらに2015年の教育課程家庭では文理融合が柱となっています。
カリキュラムの中で特徴的なものの一つが、必修である「創意的体験活動」です。これは自律活動、クラブ活動、ボランティア、進路活動から構成されており、小学校と中学校の授業時間の9〜13%がこれに当てられます。授業内容は教員によってデザインされ、STEAM教育に使っている教員もいます。もう一つの特徴は、教科群制度を導入していることです。これにより社会と道徳のように関連する複数の教科をまとめ、統合的な授業を行うことができます。
韓国でSTEAM教育が進んだ要因は、STEM分野への関心の低下です。90年代後半より若者のSTEMキャリアへの関心が低下し、高校での理系選択者数が文系選択者数を大きく下回るようになりました。結果的に大学のSTEM分野専攻のレベルが低下し、経済競争力の低下が懸念されるようになりました。
これを受けて韓国政府はSTEAM教育プログラムの作成や教員育成に予算を投じており、韓国科学創意財団(KOFAC)という団体が実際のプログラムを行なっています。
KOFACによる教員育成は二つのプロジェクトから成り立っています。一つ目は、レベル別の専門性養成プログラムです。このプログラムでは、15時間の入門コース、45時間のベーシックコース、52時間のアドバンスコースで構成されています。入門コースはオンラインでSTEAM教育の理念や授業例などを学ぶもので、好きな時に受講することができます。ベーシックコースでは夏のワークショップで研究所を訪れたり専門家から話を聞いたりして最新の技術について学び、さらにオンラインでの支援を受けながら実際に15回のSTEAM授業を行います。アドバンスコースでは学校や地域のSTEAM教育リーダーになれるレベルを目指します。こちらも夏のワークショップとSTEAM授業の実践という構成ですが、ベーシックでは既存のSTEAMプログラムを利用するのに対し、アドバンスでは一から教材を作り上げます。
もう一つは、教員グループ支援プログラムです。こちらのプログラムは教員の自主的成長を支援することを目的としており、選ばれた教員グループに対して会議出席や授業用マテリアル、授業実施の金銭的サポートを行います。教員グループに対しては、授業立案や実施、教育効果のレポートが求められています。開始当時の2011年に参加したのは27グループでしたが2018年には、230のグループが支援を受けました。
カリキュラム開発支援としては、2012年より教材開発プロジェクトへの資金提供が行われています。ここでは、教育カリキュラムは4つに分けられています。自動運転、人工知能などの分野、スマホやドローンなどのテクノロジーを活用する分野、音楽や芸術を中心とする分野、ブロックチェーンなどの先端技術と仕事について考える分野です。毎年各分野で10〜20個のプロジェクトが支援を受けています。プロジェクトには24コマ分以上のカリキュラムを作ることが期待され、カリキュラムは実際に学校で実行、検証されることが求められています。作成されたプログラムは、KOFACのページで見ることができます。
このように、韓国では政府主導で積極的な学校教育の転換が行われていることがわかります。次回は、中国でのSTEAM教育事情を見ていきます!
安東、金「科学と芸術の融合による教育の可能性と課題 : 韓国STEAM教育の原理と実践場面の検討」(2014)
(文:佐藤琴音)