STEAM JAPAN AWARD2023→2024 日産財団賞受賞者インタビュー

今年度も日本各地から多くのご応募をいただいたSTEAM JAPAN AWARD 2023-2024。数々の独創的な発想で課題解決に取り組むプロジェクトの中から、日産財団 様のご協賛により、「日産財団賞」に選ばれたのは、追手門学院大手前高等学校の安井昌望さんによる「盲導犬ロボット『あいドッグ』の研究と開発」です。 このプロジェクトは、盲導犬不足や盲導犬が信号機の色を識別できないといった課題を解決するために、盲導犬ロボット「あいドッグ」を開発しました。技術開発を続けている安井さんと、STEM/STEAMで課題解決を行う若者たちを支援する日産財団の坂元さんにインタビューを行いました。

STEAM JAPAN AWARD「日産財団賞」を受賞された時のお気持ちと、この課題を設定したきっかけを教えてください。

安井さん:
受賞した時はとても驚いたし嬉しかったです。叫びたくなるような気持ちでした。自分の努力だけでなく、周りからのサポートやアドバイスがとても大事だったと改めて感じました。今回の受賞に満足せず、これからの実装に向けて開発、研究を進め、これからの社会に「あいドッグ」が普及するようにしたいです。

また、このプロジェクトを始めたのは中学校2年生の時、駅のホームで盲導犬を連れている人を見かけたのがきっかけです。困っているように見えたのに、どうすれば良いか分からず何もできませんでした。そのことが心残りとなり調べたところ、盲導犬の不足や盲導犬が信号の色の識別ができないことを知りました。プログラミングやロボットについて少し勉強をしていたので、その知識を活かしてロボットの研究と開発を始めました。

安井さんの作品を選定されたポイントはどういう点でしょうか?

日産財団・坂元さん:
技術開発において重要な3つの要素をカバーしている点が選定のポイントです。

まず、課題を正確に捉えていること。社会問題がしっかりと定義されていました。次に、課題解決のための機能を細かく分解して設計していること。そして、実際にやってみたこと。行動ですね。この3点がしっかりと抑えられていました。

研究開発を進めてきた中で、苦労した点や難しかった点を教えてください。どのように解決されていましたか。

安井さん:
研究開発では、コードのミスや、自分の頭で描いている設計と全く異なるものができてしまうことがありました。落ち込むこともありますが、細かな点を分析して問題を特定し、他の方法を試します。成功した時の喜びをモチベーションにして、次の挑戦を続けています。失敗することもありますが、ロボットが動いた時や信号認識が上手くいった時はテンションが上がりました。多くの時間や工程を注いでいたので、苦労が報われた気分でした。

研究は盲導犬ロボットの開発から始まりましたが、途中で自動車の自動運転にも関心を持ち、その分野にも取り組みました。その過程で、自動運転技術が盲導犬ロボットにも応用できる可能性を見つけました。そのため、再び「あいドッグ」の開発に挑戦しています。

日産財団・坂元さん:
ロボットの開発を進める一方で自動運転にも取り組み、異なる目的や製品でも共通の機能を見つけ出した点が素晴らしいです。こうした視点を持つことは非常に重要です。工業製品としては全く異なるものでも、お互いに使える技術があることがあります。盲導犬ロボットだけでなく、他の分野にも応用していくことも面白いかもしれません。

学校の先生や専門の方に聞いてみるような機会はありましたか?

安井さん:
電子部品メーカーのオムロン株式会社の社員さんと話す機会があり、アドバイスなどをもらいました。技術については自分で知識を蓄えてやってきましたが、インターネットで調べた情報だけでは限界があるので、実際に技術開発者をされている方からアドバイスをもらえる機会は嬉しいです。

また、今はアイデアを発信する機会があまりないので、社会課題に対して何かのプロダクトを作る時に企業の方と一緒に話すような機会があると良いと思っています。

日産財団様のお取り組みを教えていただけますでしょうか。

日産財団・坂元さん:
日産財団は50年前に設立されました。その主な目標は、安井さんのような視点を持った若者を増やすことにあります。

50年前の日本は高度経済成長の最中で、資源の乏しい国として優れた製品を作り輸出することで経済を発展させてきました。それを支えてきたのは人であり、そのような能力を持つ人々がいなければ、国は立ち行かなくなってしまいます。

日産財団は理科教育を中心に学校への助成などを通じて、若い世代が工業や技術開発を支える人材が途切れることのないよう様々な活動を行っています。

■今後の取り組みについて

安井さん:
これからも人や社会に役立つロボットを作り続けていきます。今少し考えているのは、ゴミ分別ロボットを作りたいです。ありそうでないロボットを作りたいと考えています。

「あいドッグ」とは別のものでも、誰も取り残すことのない、社会をより良くするために取り組んでいきたいです。

中高生への応援メッセージをお願いします。

日産財団・坂元さん:

伝えたいことは2点あります。
まずは、いろいろなことに関心を持ってください。ときどきふと顔を上げて、世の中の様々なものに目を向けることが大切です。どっぷりと熱中する時間と第三者視点を持つ自分がいることで人生が豊かになると思います。

次に、アイコン(デザイン)の重要性についてです。エンジニアの中にはデザインに無関心な人もいますが、実際には、良いロボットを作ることも重要ですし、そのロボットが使われる前に役に立つと感じてもらうことも非常に重要です。食べ物も美味しそうに見えないと食べたくないですよね。良いものを素晴らしいものとして見せるための努力を怠ることはできません。

何かを創り出す、生み出す時に失敗は必ずあります。その失敗や反省を活かすことがとても重要です。成功しても失敗しても学ぶことはたくさんありますよね。技術はそうやって進歩していくものだと思います。安井さんや中高生の皆さんの活躍が楽しみです。

公益財団法人日産財団:https://www.nissan-zaidan.or.jp/

STEAM JAPAN AWARD 2023-2024 特設サイト: https://steam-japan.com/award/