【STEAM JAPAN AWARD 2020】トークタイム「自分たちの未来は、自分たちでつくる!」

2020.12.29│STEAMレポート

授賞式の終了後は、審査員メンバーによるトークが行われました。STEAM JAPAN編集長・井上による進行で、「自分たちの未来は、自分たちでつくる!〜自分で未来を切り拓くためのこれからの教育とは?〜」というテーマで皆さんにお話を伺いました。

未来を切り拓くための、次世代の教育とは?

井上「コロナの流行もあり、誰かが何かをしてくれるという時代は終焉にきたと思います。自分で未来を切り拓くためのこれからの教育、いわば次世代の教育として、どのようなものがあるのでしょうか?」

浅野さん「すごく難しい問いですよね。私たち経産省も『未来の教室』というプロジェクトをやっているのですが、『未来』って大人が言いがちなんですよね(笑)。僕も昔『未来』と言われて、『はぁ、俺には関係ないな』と思っていたこともあります。だけど、例えば僕はラグビーで、少しでも良いパフォーマンスができるようにがむしゃらにやっていたのですが、あの時もっといろんな知恵が働いたら、もっと良いパフォーマンスができたかもしれない。

普段やることだって本当は科学的な根拠があるべきだし、自分でどうやって強くなるか、上達するか、コミュニケーションをよくするか考えることも、立派なSTEAMだと思っています。今日の受賞作品の中にはスポーツやアートはまだそんなにたくさん入ってはいないけれど、自分の身近な話題で自己ベストを更新していくことも、これからの学びなのではないかと思います。」

大杉さん「コロナ禍で、今までスローガンのようなものだった『グローカル』ということが、本当に進みました。教室でいうグローカルは教室と世界がつながるということだと思います。最近ご招待いただく高校生のイベントでも、世界と教室が直結してきたと思います。『教室から世界一周しよう』という形で、先生はサポートする形で生徒自身が世界の教室と繋いだり、世界中で文化祭やろう、と言ったり。

また、文科省もコロナを受けて国際会議がすごく増えました。今までは一人の人が専門外のことまで背負って出席していたのが、オンラインだとそのことを一番よく分かっている人が繋がれる。そうすると本当の議論ができる。教室でも、今まで大人に頼らないと繋がれなかったものが、子ども同士で繋がって本当の議論ができる。これは未来というよりも、それが現実になりつつあると感じます」

スプツニ子!さん「義務教育だと個人の評価が多いと思うんですけど、やはりチームワークはとても大事だと思っています。今回のアワードもチームでコラボレーションしているところがかなりありましたが、私自身が作品を作るときも、ソーシャルメディアで一緒に動いてくれる人を募集しています。今は繋がったり、チームを作ったり、クラウドファンディングしたりしやすい。教育も、人とどうつながって動くかをもっと考えた方がいいと思います。

それから、試験ベースだと悪い点=失敗した、100点=成功したという考えが根付いてしまいますが、私の周りで一番切れている人、すごいことをやっている人は、失敗を失敗と思わず、どうしたら成功できるのか考え続けるんです。すると失敗を何度も重ねるとその先に成功がある、というマインドセットになります。できないことを、『いや、できるはずだからどうしよう』と考え続けることがすごく大事なことだと思うので、教育でもなかなか答えが見つからないものこそ深掘りするということをやった方がいいと思います」


井上「ありがとうございます。では次に、それぞれのお立場でのご意見もいただきたいと思います。大杉さんと浅野さんは、公的なお立場で日本の教育に日々向き合っていらっしゃいますね。大杉さんは以前、日本ユネスコ国内委員会事務局次長もなさっていましたが、SDGsとSTEAM教育の親和性についてどうお考えですか?」

SDGsとSTEAM

大杉さん「SDGs教育というと『SDGsのゴールをいくつ言えるか』というような知識面だと誤解されることもあるのですが、必要なのは持続可能な社会の創り手としての力をどう育むか、ということです。持続可能な社会を創るという社会的なゴールであるSDGsと、一人一人が学ぶ楽しさの中で色々な力を身に付けていくSTEAM、これらを一緒にやることで社会課題と自分の学びが繋がりやすくなると思います。

今回のアワードで出てきたアイディアは、私が多くを語るまでもなくSETAMでありSDGsだったと思うので、いま学んでいる子どもたち自身が両方の重要性を感じているのではないかと思います」

学びのSTEAM化とは?

井上「浅野さんは経産省による『未来の教室』の中で、『学びのSTEAM化』というキーワードを宣言されていますね」

浅野さん「私は経産省の国家公務員として二十数年、世の中の社会課題を解決するということをやってきたのですが、この仕事をして始めて、学ぶということが何なのかわかりました。正直な話、学校で勉強している間はつまんなかったですね。私は学生時代、今回の受賞者の皆さんみたいに面白いことはやっていませんでした。面白いことは部活くらい。でも、きっと社会に出て問題に直面した時には、学ぶ。答えを作るために自分の頭で考えて、人の話を聞いて、人と話しながら分からないことを分かろうと努力することの楽しさを、中高、大学のどこかで経験してほしいと思います。

それを今の学校教育はなかなか提供してくれないかもしれない。だけど僕らはそれができる学校教育を作ろうと、大杉さんを始め文科省のみなさんとともにやっています。今はみんなインターネットにつなげるし端末もあるから、分からないことがあったら調べてみたらいいと思います。自分の意見を持ったらいいし、クラスメイトや先生に限らず話したい人と話せばいい。そういう自分の学びのスタイルを作ってほしいです。それから、なんでもいいから自分なりに興味を持つ社会課題に夢中になってみてください。夢中になれるものに出会うには運も必要ですが、何かに興味を持とうと思っているとどこかで出会えると思います」

「はみだす力」を伸ばすために

井上「スプツニ子!さんは著書でも『はみだす力』を出されています。今回の作品からは、はみだす力や個性を感じることができましたが、みなさんがはみだす力を伸ばしていき、周りもそれを応援していける環境にするためにはどのようにしたらいいでしょうか」

スプツニ子!さん「イノベーションの歴史を辿ると、ニュートンがりんごが落ちるのを見て重力を発見した逸話にあるように、今の当たり前は違った見方ができるのではないか、という気づきから始まっています。自分の今いる社会の仕組みやあり方を疑ったり、クエスチョンマークを持って新たな姿勢で見ることが常に必要だと思っています。例えば私自身も女性でエンジニアリングに関わっていますが、こんなにテクノロジーが進んでいるのに、どうしてほとんどの女性は毎月生理があってお腹が痛くなるのかということを、女性だから当たり前、で済ませず、なんでなのか、それを解決する方法はあるんだろうか、と考えています。『はみだす力』というのは、与えられたものをそのまま受け取るのではなく、他にいい方法があるか、と考える姿勢のことだと思います。

さっきSDGs教育の話がありましたが、今の社会って、世界中の問題が山積みになっていて、それがすごく見えている。すぐ何とかしないと地球全体が危ない、というような地球温暖化の問題もあるし、アメリカのBlack Lives Matter運動にみられる分断の問題やアジアに残るジェンダーギャップのような問題もある。ですから、常識をはみ出るという視線を持って、こういった様々な問題に取り組んでいってほしいと思っています。これまで私たちがやってきた資本主義のやり方、民主主義のやり方でさえも揺れている。様々なシステムは、これまで機能してきたからといって上手くいくわけではないので、これからどう機能していくのか、未来に向けてどうアップデートできるのかというはみだす視点を大事にしてほしいです」

井上「ありがとうございます。今回の作品もはみだす視点を持ったものがあり、それを私たち大人世代がどうバックアップしていくのか考える必要があると思いました。もっとお話ししたいところでしたが、時間も短くなってきましたので感想をお願いします」

浅野さん「スプツニ子!さんがおっしゃった通り、何でかな、ほんとかな、と思う心を持ち続けることが大人になってからいい仕事をするためにも必要なことだと思うので、そういう目を子どもの時から生かして、絶対遠慮しないでください」

大杉さん「今回残念ながら受賞できなかった方もいらっしゃいますが、みなさんが『モヤモヤ』に気づいたということは、一生の原動力になるんじゃないかと思います。モヤモヤに出会えたことを、大事にしてほしいです」

スプツニ子!さん「いい意味でパンクに生きてほしい。自分の好奇心に忠実になって問いを持ち続けて、イノベーションを起こしてほしいと思います」


STEAM JAPAN AWARD 2020のHPは下のリンクから!概要、受賞作品情報、一次選考通過者などをご紹介しています。

STEAM JAPAN AWARD 2020 公式サイト