STEAM JAPAN AWARD2022-2023 受賞者インタビューVol.1

今年で3年連続の3回目の開催となったSTEAM JAPAN AWARD2022-2023。今回、見事にGOLD賞を受賞されたのは、千葉県立千葉工業高等学校から6人チームで応募してくださった千葉工業高校理数工学研究部です。4月にオンラインインタビューを実施いたしました。
「どのように課題を設定したのか」「作品の製作に取り組む中で工夫した点や苦労した点」「各自の興味関心のある分野」など、現役の高校生にさまざまお話を伺いました。

STEAM JAPAN AWARD2022-2023 公式サイト

SjA2022-2023 GOLD賞概要と審査員長・成田悠輔氏からのコメント

STEAM JAPAN AWARD 2022-2023 GOLD賞

チーム名:千葉工業高校 理数工学研究部
メンバー:菊池武圭さん、揖斐武賢さん、明妻直宙さん、渋沢吉照さん、鈴木悠将さん、阿井暖向さん
作 品 名:生体模倣型ソフトロボットアームの研究開発
~Reserch and development biomimetic soft robot arm B-sola~

オンライン取材に答える千葉工業高校理数工学研究部チームの皆さん

本アワードを知ったきっかけ・応募された経緯を教えていただけますか?

鈴木さん:私達の千葉工業高校は、工業高校では珍しい大学進学クラスがあります。特にSTEAM教育に力を入れ、特定の工業の分野にとらわれない様々なものづくりの体験授業をおこなっています。

また、一昨年のSTEAM JAPAN AWARD2020で、私達の先輩が建築土木分野の課題を設定した取り組みで応募し、見事にBronze賞を獲得しました。このことは、この賞を獲得した先輩方が進学した大学から大きく評価されたと聞いています。“社会の課題をものづくりのアイディアで解決したい”という、ものづくりに対する向き合い方は私達へも受け継がれていて、私達もSTEAM JAPAN AWARDにチャレンジしたいという気持ちが生まれました。

“産業用ロボットの普及と労働災害”を課題設定に取り上げたきっかけを教えてください。

揖斐さん:私達の学科の先生に、メーカーのエンジニアを経験されていた先生がいます。実際にあった労働災害の事例をもとに、事故の危険予知・改善方法を普段の授業から多く教えられていました。

また、従来の産業用ロボットだと生産性の向上や重労働の代替などのメリットがある反面、適切な安全対策が行われていないと、産業用ロボットによる労働災害が増加するという報告もあります。これらのことを踏まえ、私達は『産業ロボットの普及と労働災害』を課題に設定しました。

最新型金属3Dプリンター(=同校より写真提供)
部品開発例:極小真空圧スピコン(=同校提供)

作品を製作していくにあたって、工夫を凝らした点はどのような所ですか?

揖斐さん:BioMimicry(バイオミミクリー)・生物模倣の提唱者であるJanine Benyus(ジャニン ベニス)氏*は、“生物の美的性質は持続可能なまちづくりやものづくりの重要なモデルになる”と論じています。そのような観点から私たちがこだわった点は、いかにして本物のタコの挙動や形態に近づけるかという点です。資金が底をつくまで試行錯誤や失敗を重ねてきました。

工夫した点は様々ありますが、特に挙動に関して言うと、コンピュータで設計したタコを模倣した3Dモデルを使い、高度な解析技術を活用することで、計算した動きと実際の動きというのを再現することに成功しました。これによって、大幅に開発時間とコストをカットすることもできました。

生体模倣工学に着目した理由は何ですか?”事故やロボットとタコを結びつけた経緯”はどのような所からでしょうか?

揖斐さん:私達、理数工学科の生徒全員が月に1回、土曜日に大学の先生の講義が受けられる授業があります。その中で、ものつくり大学の松本宏行先生*によるロボティクスと人工筋肉の研究に関する講義があり、興味を持ったのがきっかけです。

事故とロボットとタコを結びつけたのは、偶然生まれたアイデアでした。私達部員でディスカッションをしていた時に、クラーケンのモデルが話題に出ました。

これが大きなきっかけで、何か別々のものを組み合わせることによって新たなものが出来上がるという視点で「くっつけてみよう」という話になりました。蛸足型のロボットは面白いかもしれない!と言うところからアプローチをして、生物が持つ温かさや柔らかさといったものが、機械的な冷たさや硬さと相反する部分に着目するようになり、温かな機械や柔らかい機械が作れるのではないかと考え、今回のロボット製作につながりました。

把持実験の様子 (=同校提供)

このメンバーはどのようにしてチームになりましたか?また、チームで大変だったことや良かった点はどのようなことか教えてもらえますか?

鈴木さん:私達6名は、それぞれ目標とする大学や興味のある学問領域が異なっています。考え方も違い、より多くの意見を幅広く出し合って、良いものを作っていくことを目指し、あえて興味関心・得意分野の違うメンバーに声をかけてチームを結成しました。得意分野やスキルに磨きをかけ、学問領域を超えて探究することができるように話し合いをしていきました。

製作している中でチームの中で大変だった点は、考え方が違うので「こうした方がいいんじゃないか」と意見のぶつかり合いはよくありました。そんな時は、全員が納得するまで何度もディスカッションを繰り返して意見をまとめていきました。その結果、全員が意見を言い合って、今回のロボットアームの製作ができたと思っています。

また良かった点としては、やはり様々な意見が出たことです。その一つに、チームの話し合いの中で出てきたクラーケンと言うキーワードがあります。自分だけでは出せなかったアイデアだと思っているので、このメンバーがチームで良かったと思っています。

チームとしてこれから生み出していきたいものや、皆さん一人一人の関心のある分野や課題として捉えていることを教えてください。

チームとしては、今回のこのロボットアームは生体模倣技術を発展させていくことが一つの目標でもありました。今後はこのロボットアームを実際の現場で活用するために、安全性の検証とコストを見直して改善し、ロボットと人間の関係に新たな関係とイノベーションを提案していきたいと思っています。

菊池さん:僕は入学した頃は、ロボットを作成することに関心を持っていたので、今回の蛸足ロボットを作成する分野では、非常に意欲的にやってきました。しかし、今は投資や資産運用の意思決定に関する金融工学やデータ科学に興味を持っています。

渋沢さん:私は生体模倣工学を発展させて、脳から手に流れる微弱な電気を読み取って機能する筋電義手や筋電義足などを製作したいです。現在はコストがとてもかかるので、今より安く簡単に作れるものを開発し、多くの人に手にとってもらえるようにしたいです。

揖斐さん:私は特に情報技術に関して興味があります。今後は、廃棄コンピュータを使ったスーパーコンピューターを完成させた後、ソフトウェア面での開発を行っていきたいです。

鈴木さん:私は、二足歩行ロボットなどヒューマノイドの分野に興味関心があります。私は、人間の構造に近い2足歩行ロボットを製作し、人手不足の未来で活用していきたいと思っています。

阿井さん:僕は土木や建築に興味があります。将来は、新しいエネルギーやまだ利用されていないエネルギーを活用した新しい構造物や建築を建てたいです。

明妻さん:僕は建設や機械に関する機械工学に興味があります。今回作成したロボットアームは空気圧による駆動で動いていますが、宇宙空間などの無重力状態では空気圧による駆動は容易ではありません。今後は、過酷な宇宙環境でも動作するロボットアームを作っていきたいです。

同世代の学生へのメッセージをお願いします。

揖斐さん:私達が今生きる世界は、当然のようにさまざまな科学技術に支えられています。一方、災害や環境問題、資源の問題など、科学技術を自然に取り入れる危険やもろさを乗り越えていかなければならない課題が山積しているのも事実だと思います。

自分たちがこれから一体どう生きていくのか、そういったことを自問し、議論し、自分が得意とする分野やスキルでお互いに協力してアイディアを出し合い、よりよい世界を築いていきましょう。

関連サイト

☆STEAM JAPAN AWARD 2022-2023 公式サイト:https://steam-japan.com/award/

☆2020年の千葉工業高校のBronze賞受賞作品:https://steam-japan.com/pastaward2020/#award_q1

☆千葉県立千葉工業高等学校サイト:https://cms1.chiba-c.ed.jp/chiba-th/

▶︎次回以降は、SILVER賞、IDEA賞を受賞された皆様へのお話を紹介していきます!お楽しみに♫