2023.11.08│ニュース

STEAM課題研究特別講座から生まれた海洋ゴミ対策 〜Project Ocean の活動〜

大分県では、産学連携で幅広く活躍できる次世代人材の育成を目指そうと、2021年度から「大分STEAM教育(次世代人材育成)推進」が本格的に始まりました。
宇宙科学技術や先端技術をメインテーマとし、県内学生向けの各種イベントや科学技術の先駆者たちの講演会、課題研究講座など、さまざまな探究型の学習機会を提供します。
公式サイト:( https://oitasteam.jp/

その一環である「課題研究講座」に2022年度に参加した生徒たちの取り組みと、その成果をご紹介します。この取り組みにより、生徒たちの活動が事業展開につながり、バッジが商品化され販売されることとなりました。

海岸で拾ったシーグラスでバッジを作成した岡部朱里さん(中央)ら 会見を行った大分県庁にて

同じ意識をもつ仲間と集まり、考え取り組んだプロジェクト

県内の高校生50名を対象に、学校や学年の枠を超えたグループで課題研究を行う「STEAM課題研究特別講座」です。最先端の技術/テクノロジーを通じて、大分の今とこれからを考えていきます。

昨年、このSTEAM課題研究特別講座に参加した岡部朱里さん(大分南高校 当時2年生)が中心となり、大分工業、竹田、三重総合の1、2年生(当時)の4人と、学生メンターとして協力してくれた横峯有紀さん(大分大学大学院 当時1年)でつくるチーム「 Project Ocean 」が考案したのが海岸で拾ったガラス片「シーグラス」でバッジを制作し、そしてバッジを中心として、大分の海の関係人口を増やすエコシステムになります。

ガラス片『シーグラス』で完成した実際のバッジ

この課題を設定した背景と今後の展望や今後に関しての具体的な内容

大分県内の海岸に流れ着く海洋ゴミの多さを地域課題にあげました。今後は、多くの人に海洋ゴミの削減に関心を持ってもらい、ゴミ問題の解決を目指します。

このエコバッジは、「Project Ocean」のメンバーが、大分県佐賀関付近の海ゴミ問題を解決したい想いから生まれました。メンバーの課外活動の中で「大分の海が汚い」という問題にたいして原因を探究。その中で、佐賀関付近は、潮の流れからゴミが溜まりやすい地形になっていることを特定。また、コロナ前に比べて海ゴミを片付けるボランティアの減少も原因の一つになっていることに注目しました。

きれいな海を取り戻し、未来につなげるために、継続的なビーチクリーン活動と、これまで海ゴミに関心を示していない人の意識変化を促す方法を模索するなかで、実際にビーチクリーンの時に拾った海ゴミの中から「シーグラス」に注目。この「シーグラス」を活用し、これまで海ゴミに興味関心がなかった人に大分の海の現状を知ってもらうきっかけがつくれたら、問題解決につながるのではと考えました。シーグラスの活用について、地元のデザイナーさんを巻き込んで商品のプロトタイプづくりを行いました。最終的に、ライフスタイルショップやモノづくりをしている佐藤防水店(大分市)と連携し、シーグラスバッジ『Ocean Drops』を開発し、2023年10月に店頭販売を開始しました。

このOcean Dropsをハブとし、海ゴミ削減の活動につながる新たなエコシステムの構築を進めたいと考えています。Ocean Dropsの売り上げの一部は、高校生のボランティア活動資金として活用されます。

海洋ゴミが流れ着く大分県佐賀関の様子
佐賀関付近でのゴミ拾いをするメンバーたち

*生徒たちが本プログラムの成果発表で制作したスライド(一部掲載)と、高校生100名以上の前で制作発表するチームメンバーの様子

STEAM課題研究特別講座

学生たちは自分たちの選んだ身近な社会課題に焦点を当て、その課題に対する探究を進める中で、さまざまなことを調べ、知り、学び、考える過程の中で、具体的な解決策の構築までを進めます。また、課題に関連するアイデアやアプローチについてのヒントを得るために、大学の教授や民間企業の専門家などからの講座も受講しました。
学生たちは実社会の課題に対する実践的な洞察を得ることで、理論と実務を結びつけます。

大分県の海岸の現状から、ありたい姿の実現のために、ゴミ拾い活動など、地域社会への貢献活動を行います。これにより、調べ学習で終わるのではなく、実社会での実践的なスキルを養う重要なプログラムとなります。この学びの機会は、学習をより意義深いものにし、将来のリーダーシップと問題解決能力を育むサポートだと考えます。

大分県STEAM教育(次世代人材育成)推進事業とは

大分県教育委員会では、STEAM 教育やSDGsなどを通じて、先端科学技術分野等で幅広く活躍できる次世代人材の育成を推進しています。本事業は、STEAM JAPANが中心となり、産官学連携による「人的ネットワークの形成」や「学び(STEAM教育)の場の提供」を行うことで、県内高校生の思考力・創造力を育みます。

また県内教員向けの「STEAM教員研修(教員向け探究的な学び実践講座)」を通じて、教員一人ひとりがSTEAM教育を実践できるよう、サポートをする研修を実施します。

OITA STEAM PLATFORMとは

「OITA STEAM PLATFORM」とは、2021年度から始まった、大分県のSTEAM教育推進を目的とした産官学連携のプラットフォームです。自治体、教育委員会、民間企業、学校機関それぞれが密接に連携することで、包括的なSTEAM教育が学べる機会を提供します。 

宇宙科学技術や先端技術をメインテーマとし、県内学生向けの各種イベントや科学技術の先駆者たちの講演会、課題研究講座など、さまざまな探究型の学習機会を提供します。
主催:大分県教育委員会
企画運営:(株)Barbara Pool
協力:一般社団法人STEAM JAPAN

STEAM JAPANでは、各地域の課題に焦点をあて、日本におけるSTEAM教育の推進に活動を続けていきます。
自治体や教育関係者様でご興味のあられる方はこちらよりご連絡をお願いいたします。

参考記事


https://steam-japan.com/news/7870/
https://steam-japan.com/news/5994/
https://steam-japan.com/news/8111/