通知表って必要? 評価のこれから

「図工は1だったけど、体育は5だった」「大変、アヒルが並んでる」。小学校の頃、通知表に一喜一憂した人もいるのではないでしょうか。日本の義務教育過程ににおいて、通知表の評価は受験や進学に重要視されてきましたが、さまざまな学校で通知表を撤廃する動きが出始めています。

通知表の始まり

通知表の起源は、明治時代に遡るとされています。古い資料によると、小学校の各科目の定期試験の成績(点数)や授業態度の様子が記載されていたそうです。昭和には10点法や優良可が採用されました。第二次対戦後、アメリカの教育制度が反映され、現在の通知表の原型となる相対評価による5段階評価が導入されました。相対評価から絶対評価に変わったのは、2002年のことです。

通知表は保護者に生徒の学習状況を伝えるものであり、法令上の規定や、所定の様式があるわけではありません。各学校長の最良で内容を決めることができますし、廃止することも可能です。

通知表がない小学校

通知表のある学校がほとんどだと思いますが、あえて通知表を取り入れていない学校もあります。

例えば長野県の伊那市立伊那小学校は、およそ60年前から通知表を撤廃しています。固定の時間割やチャイムがないというのも驚きです。豊かな自然に囲まれた同校は、総合学習・総合活動に力を入れていて、3年間づつ、子どもたち自身が決めたさまざまなテーマに従って、探究活動に取り組みます。

教員は、生徒たちが挑戦したいテーマについて深掘り、手厚く支援します。通知表の代わりに、保護者との個別面談で、子どもたちが探究活動を通じて作った作品や振り返りカードなどを用いて、子どもたちの学習成果を説明するそうです。同校は、子どもたちの成長を数字で判断するのではなく、どのような成長を遂げたかという視点でサポートしているのです。

撤廃に向けた挑戦


通知表撤廃に向けて、まさに挑戦をしている学校もあります。神奈川県茅ケ崎市立香川小学校は、2年間の議論を経て、2020年に通知表を廃止しました。子どもたちを数字や「できる」「できない」で優越をつけないためにはどうしたらよいか。現場教員たちは何度も話し合ったり、保護者にアンケート実施したりして、試行錯誤を重ねたそうです。

現在では、子どもたちの様子を細かにメッセージにして寄せたり、保護者との面談もたくさんすることで、丁寧なコミュニーションを図っているそう。学内には、テストの目的は数字を取ることだけではなく、何ができなかったを把握するためとして、テストの点数をつけなくなったという教員もいるそうです。

できる/できないで評価しない社会へ

まだまだ通知表の配布は一般的ですが、少しづつ数字だけにとらわれず、子どもたちそれぞれの資質や能力を評価するような仕組みが広がっています。子どもたちが選ぶ未来は無限大です。一人一人の個性を伸ばしてあげられるような学校生活にしてあげたいですね。

●参考文献

「比べない」公立小の挑戦 通知表廃止、問い直す評価
みんながテストで100点を取り続けたらどうなる?
「通知表」の起源について ―明治前期の日常的成績評価及び行状 。品行評価と家庭通信一
60年以上"通知表がない"公立小の仕掛け

60年通知表がない公立小の凄い「探究型総合学習」

学習評価に関する法令等の規定 - 文部科学省