2021.04.01│STEAMレポート

本気で挑戦する人の母校とは? 〜「複業する校長」とSTEAM教育〜

新陽高校のあり方・目指す学校とは

荒井氏:

新陽高校は、赤司さん主導で、さらに本気で挑戦していってほしいです。 また学校は、子どもたちが毎日がワクワクする場所であってほしいと思っています。一人ひとりの存在そのものを認める場所が学校でありたいとも思います。そのような学校が日本中に世界中に広がっていくと良いなと思っています。

赤司氏:

荒井さんが掲げたビジョンがこの5年でカルチャーとして根付いてきています。

そのカルチャーを引き継ぎ、「本気で挑戦する人の母校」というスローガンと、校訓の「自主創造」という63年の歴史がある新陽高校。この方向性を軸に、どうやったらできるのか精神を大切にやっていきたいです。

また校長を引き受けた一番大きな理由は、新陽高校の先生です。この先生方となら一緒にやっていきたいという思いがありました。

先生方が持っている熱い思いに共感し感銘を受け、そんな先生方がいるから、校長就任を決意しました。

本気で挑戦したら、失敗もあると思います。その失敗を学びに変えて、いつでも新陽高校がファーストペンギンの存在でありたい。また“複業する校長”として、今までの社会や企業での経験を学校運営に生かしていきたいです。今から楽しみなことばかりです。

これからの学校のあり方とは?

赤司氏:

一人ひとりに得意なこと、苦手なこと、好きな分野があるので、それぞれに合った学び方があって良いと思っています。学び方は多様であるべきです。

STEAMのような分野横断的な学びですと、自分の好きなアプローチで、好きなものや得意な分野を見つけることができるのが良いと思っています。子どもたちが自分自身で、学びを選び取っていくことができるように、環境を整えていくことが大人の役割と考えています。

荒井氏:

教育の中でも特に「学校教育」は変わる必要性が大いにあると考えています。学校がワクワクする場所になるためには、学校の文化・カルチャーが変わる必要があると思います。学校には教室にも職員室にも「言われたことを、きちんとやる」という上意下達の文化が根強いと思います。「先生から言われたことをやる」「校長から言われたことをやる」ということは、逆に「言われたことしかやらない=言われなかったことはやらない」という当事者意識の低い組織文化になりやすい土壌があります。それを変えるのが「本気で挑戦する」カルチャーだと思っています。それは「自ら機会を創り出す」ことだと思います。そのためにも失敗を許容することが組織に求められます。そうしたカルチャーが浸透していくと学校とは「ワクワクする」ところになっていくと思います。

新陽高校とSTEAM教育について

赤司氏:

新陽高校では、STEAMという言葉は使っていなくても、とても実践的で教科横断的な授業を様々取り組んでいます。今後課題となるのは、カリキュラムの中にどのように位置付けていくかだと考えています。自分の学びたいことを自分の好きな方法で学べるようなシステムに変えていけたら理想的だと思っています。(2022年4月より単位制導入予定)

北海道、また札幌は、自然と都市が共存する地域で正にSTEAMの要素がたくさんあります。第1次・第2次産業を営む方、最新のテクノロジーを開発・運営する方など、多様な人々が暮らす地域であることから、STEAM教育を取り入れやすい環境で溢れていると思います。

荒井氏:

北海道ならではのコンテンツがたくさんあります。STEAM教育という名前を付けて実施をしてはきませんでしたが、スノーピークのキャンプ場で授業をするなかで北極星までの距離を計測してみたり、全教科横断型のPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)でアイヌ文化について学び、家庭科ではジビエ料理を調理したり、生物では染料を分析するなどしてきました。そして、こういった取り組みを先生たちが率先して本気で挑戦していくことが、その失敗を重ねながらも前進する姿を生徒にも自信をもって見せることが重要だと思います。そのためにもこれからもSTEAM教育をどんどん行ってほしいと思います。

全国の先生方へのメッセージ

赤司氏:

学校改革は全国で常になされていることだと思います。新しいものを持続的に定着させることは、とても難しいですが必要なことです。私自身は開いた学校運営をして、多くの学校と情報共有しながら、全体でボトムアップしていきたいです。

双葉郡の教育復興で多くの先生たちに出会い、日本の先生たちの質は高く、熱心であることを知りました。その先生の熱意を生徒達にもっと注げたらと思います。業務効率を進めた上で、ぜひとも、新しい学びにチャレンジしてほしいです。

荒井氏:

学校教育の中に、地域の方と関わったり、外部の方を学校に招き教えてもらったり、いろいろな立場の方と学び会うことで、社会教育をもっと組み込んでいくべきだと思います。

教育に関わるということは、人が成長しているところに立ち会うこと。伴走していくことだと思います。それぞれの領域でお互いに助け合い、認め合い、そんな関係性を築いていきたいです。

~編集部より~

“複業する校長”・・・滅多に聞いたことない言葉ですが、これからの時代、様々な外の観点を大事にしながら学校運営していくことも、新たな形であると、お話をお伺いしていて感じました。STEAM教育に取り組まれている学校は、とにかく推進している先生や学校運営サイドの方のマインドが、とても柔軟でオープンであることが多いと感じています。

これからどんな学校をつくられていくのか、それが先生や運営者側だけで決めるのではなく、生徒も共につくっていく、その「本気で挑戦する」マインドは伝播していくものなのだなと、肌で感じました。

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