2024.06.19│STEAMレポート

STEAM JAPAN AWARD2023→2024各賞受賞インタビュー

STEAM JAPAN AWARD 2023→2024の受賞者インタビュー第3弾。中高生たちが自ら課題を設定し、解決に向けて取り組むこのアワードには、今年度も多くのご応募をいただきました。数多くの応募の中から選ばれた受賞者のインタビューをお届けするシリーズの最終回は、SILVER賞、BRONZE賞、IDEA賞を受賞した3チームへのメールインタビューをご紹介します!

SILVER賞

チーム名:今田ひなの
作品名:小児入院患者向け自律移動型点滴スタンドの開発

BRONZE賞

チーム名:コフレ
作品名:エシカルコスメ研究所

IDEA賞

チーム名:60C60
作品名:AIを使って高齢者見守りサービスを作る

本アワードに応募されたきっかけを教えてください。

今田ひなの
審査員長の山崎直子さんから、コメントを頂くことができればとても光栄だと思い、応募しました。
また、多くの人にこの研究を知ってもらえれば、つらい治療を頑張っている小児患者のための研究や製品開発が別の視点からも広がっていくことを期待して、応募しました。

コフレ:
きっかけは県主催のSteam課題研究特別講座に参加し、同じグループとして4人で約半年間取り組んだことがきっかけです。
最終発表の時にこのアワードの募集をしていることを知り最後に挑戦してみようと話し合い応募しました。

60C60
学校の先生から提案があり、応募しました。

この課題を設定した理由や経緯はどのような点からでしょうか。

今田ひなの
小児がんなどの入院患者の多くが点滴を長期間行う.点滴スタンドと常に行動を共にし、点滴のラインでつながっているため自由に動くことができない。さらに、点滴スタンドを小児患者一人では自由に動かせないため、付き添う人と一緒に動かなければならない。看護師や保護者は常に安全確認とスタンドの移動補助という大きなストレスを抱えている。

コフ
私たちは現状のコスメがなぜ環境に良くないのかを調べた結果、スキンケアなどの化粧品にはなめらかさなどを与えるために、マイクロプラスチックビーズが使用されているものがあるということがわかりました。これらの小さな粒子が下水処理施設のフィルターを取り付け海へ流れてしまい、環境汚染へとつながります。また、現在米余りにより米の価格が下がり、米油の値段も下がっていることや、大分県のカボスの生産量が全国一なのにそのほとんどが大分県で消費されているということが課題なのではと思いました。

60C60
現在、日本では高齢化が進んでいます。それと同時に、AIの技術も進化しています。 生活を便利・豊かにし、人間を助けてくれるAIは高齢化社会が抱える課題を解決に導くのではないかと考えました。

課題設定から解決までの間で、大変だったことや苦労した点はありますか?

今田ひなの
遠い距離にあるマーカをカメラで検出させることが大変でした。カメラとマーカの距離が遠く離れると検出されなくなってしまうので、色抽出のプログラムを追加し、パラメータの調整を行うことで問題解決することができました。

コフ
大変だったことはなんの油を使うか、香りは何の匂いにするのかを決めることです。メンバーみんなで色んな案を出したところ様々なものから油が取れることが分かり化粧品に使うにはどれが合っているのか、決定するのにとても苦労しました。
また、環境によく価格の抑えたものを作りたかったので、どんな工夫をしたら良いのか調べたり実際に作ってみたりして改良を重ねていきました。

60C60
教師データの収集には、多種大量の画像データが必要だったため、鹿児島中央高校内の生徒・先生方に協力していただきながら、自分達で全て撮影することが大変でした。また、プログラミングの知識がほぼない状態からのスタートだったため、AIの仕組みやプログラミングの勉強と並行しながら行ったことが大変でした。

作品を製作するにあたって、工夫を凝らしたり特に重点を置いた点はどのようなところですか?

今田ひなの
点滴スタンドは、小児患者だけでなく点滴スタンドを操作する付添者にも大きな負担が強いられます。この両者の負担を軽減することに重点を置いて研究を進めてきました。「追従」を取り入れることと、病院内の使用を想定してレーザーなどの使用を避けるため、小型全方位カメラによるマーカ認識を行った点です。

コフ
作品を作るにあたって工夫を凝らしたことは材料と価格です。環境に良い化粧品は価格が高いものが多く私たち学生の身近にはありません。そういったことを解決するために環境に配慮した油や安全性の高いものを使いました。

60C60
高精度の見守りサービスを目指しています。これを実現するため、どんな方向から倒れても認識できるよう、様々な方向から撮影した画像を教師データとして学習させました。

実験の様子(=60C60さんより提供)
実験の様子(=60C60さんより提供)

取り組んでいるときに、楽しかったことや盛り上がった、テンションが上がったことがあれば教えてください。

今田ひなの:
プロトタイプ(試作品)が完成できたときが一番盛り上がりました。ターゲットの台車を走行させると実際にマーカを追従して台車を走らせることができました。アイデアが形になって目の前に実現できた時は大きな達成感がありました。

完成した⾃律移動型点滴スタンド(プロトタイプ)(=今田ひなのさんより提供)

コフレ:
楽しかったことはコスメを実際に作ったことです。
今回はメンバー4人とメンター2人でリップとヘアオイルを作りました。色や香り、油の種類など色んな種類のものを作りました。
盛り上がったことは、パッケージの作成です。パッケージにはそれぞれメンバーの頭文字を入れ唯一無二のデザインが出来ました。テンションが上がったことは商品と比較するためにみんなでJILLSTUARTのリップを買ったことです。どれがいいかみんなで選ぶ時もワクワクしました。

パッケージのデザインまでこだわったコスメ(=コフレさんより提供)

60C60
プログラムが思った通りに動いたとき、特に、メールへ通知がいくプログラムが完成し、実際に通知がきたときは本当に感動しました。
また今回の受賞は、自分達のこれまでやってきたことが認めてもらえたような気がしてとてもうれしかったです。

活動を進めていく中で、周りを巻き込むためにどのように進めていましたか?周りを巻き込む事や協力得るときのコツがあれば教えてください。

今田ひなの:
神戸大学 ROOT プログラムに参加して、この研究を取り組んでいました。今回の研究のきっかけとなった小児入院患者のかかりつけの病院へ、事前に主治医に話をした後、ROOT プログラムの事務局からもサポートしてもらい、病院の総務課へ正式な予備実験の申し込みをしてもらいました。病院側は、全力的にサポートする体制で支えてもらえました。また、積極的に研究発表をすることで意見交換をしてネットワークを広げています。

コフレ:
活動を進めていく中で先生方に協力して頂きたいことがある際には必ず自分たちの考えを伝えていました。その際になぜその取り組みを行いたいのか、自分たちの考えや意見を明確にして言葉にしていました。先生方はとても積極的に協力して下さりそのサポートのおかげで実際に私たちは化粧品を作ることが出来ました。様々な意見を頂きながら私たちはSteam活動をより良いものに成長させていくことができました。

60C60
研究内容を理解してもらった上で、自分達の「好き」を強く伝え、相手の興味を引くことが周囲を巻き込んだり協力を得たりするコツだと思います。そのためにも、私達は研究内容や研究の最終目標を班の全員で共有し、班の全員が研究内容を簡単に説明できるようにしていました。

アワードに応募するまで「STEAM 教育」という言葉を聞いたことはありましたか?どのようなイメージを持っていましたか?

今田ひなの:
聞いたことがありました。高校の校長先生が今後、自分の高校で STEAM 教育に力を入れたいという話を伺っていました。自分のしている研究の話を聞いてもらうと目指している STEAM 教育の内容と一致すると言われていたので、私の課題解決の方法は STEAM の手法を取り入れているのだと思いました。

コフレ:
「Steam教育」という言葉は学校の先生に教えていただいたことにより知っていました。
当時の私はSteam教育に対して、理系の生徒のみに関係する教育内容で自分には難しいというイメージを持っていました。しかし実際はSteam教育は理系と文系の枠を横断して学び、課題解決の力を養うことが出来る新しい教育の場であり今まで行ったことない研究の仕方を身につけることができ、自身の成長に繋げることができました。

これから生み出していきたいものや、課題と捉えている事はありますか?

今田ひなの:
小児がんの生存率は、医療の発達により大きく向上していますが、残念ながら 100%ではありません。薬の治療に加えて、入院生活で精神的なサポートをすることで小児入院患者の治療成績を向上できるのではないかと考えています。小さな子供たちが持っている奇跡を起こすためには笑顔が必要でそれを実
現できる仕組みづくりを入れた製品開発をしたいです。それはきっと成人や高齢者にとっても応用できる研究であると考えています。

60C60
まずは「高齢者見守りサービス」をきちんとした形で実現させたいです。STEAM JAPAN AWARD応募後も、周りの家具によって精度が変化しないよう撮影画像の背景透過を行い人間のみを認識するようにしたり、ラズベリーパイ(小型コンピュータ)を使用することで小型化を図るなどの実用化に向けて更に工夫を行っています。セキュリティ面や小型コンピュータの耐久性など課題はまだまだ山積みですが、乗り越えて行きたいです。

今後、チャレンジしてみたいことがあれば教えてください。

今田ひなの:
今回、受賞した研究内容を実現するため、大学の授業をうまく自分の研究と結びつけてアウトプットしていき形にしていくこと、学会等への研究発表、研究スピードを上げるために積極的に助成金の申請、他大学の先生との共同研究、起業に向けた準備を進めていきたいと考えています。

コフレ:
メンバー4人の中の2人が今年度大学受験なので自分達の進路実現のために今年一年は勉強を頑張ります。またSteam教育で学んだことを活かし、自分たち自らで課題解決をこれからもしていきたいです。

60C60
人工知能の分野に興味があるため、AIを上手く活用することで今起きている社会問題を解決していきたいです。

次回に向けた意気込み、もしくはこれからAWARDに応募する学生の皆さんに一言お願いします。

コフレ:
自ら課題解決をする力はこれからの社会に求められているものだとおもいます。Steam教育では自分達に興味のある分野で楽しくまた、自分自身も成長できる研究ができます。
興味のある人はぜひ参加してみてください。

60C60
自分の「好き」を徹底的に追及してください。その「好き」はきっと、自分自身を成長させ、絶対にしたことのない貴重な経験をさせてくれるはず。
学校では学べないこともたくさん学べます。世界を変える力さえも持っています。未来を担う私達だからこそ、今、自分達の「好き」を皆に伝えてください!

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